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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
絶望は音を殺して

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灯台下暗し

レインがどこかに去っていったあと、リウが襲われそうになっていたリアとディーネに視線を向けた。

そして、少し申し訳なさそうな表情で微笑む。


「二人共。心配かけて、ごめんね」

『……本当に、りーちゃんなの……?』

「ええ。本当にごめんね」


リウがゆっくりとディーネの頭を撫でていると、呆然と立ち尽くしていたリアが急にリウに抱きついた。

リウが少し驚きながらも小さく微笑み、片手でディーネを撫で、もう片方の手でリアの頭を撫でる。

リアはリウの胸に顔を(うず)めて泣いていた。

嗚咽混じりの声でリアが小さく言う。


「また心配かけてっ……お姉さまの馬鹿……!」

「ごめんね、リア。ごめんね」


リウが泣きじゃくるリアに対して謝罪を繰り返す。

そんなリウにリアは小さく首を振り、リウにしがみついた。

リウに抱きついているリアを見て、ディーネが負けじとリウに抱きつく。

心配をかけたせいとはいえ、二人に抱きつかれてしまったリウは少しだけ困ったように、それでいてどこか嬉しそうに微笑んだ。


「二人共、ごめんね。でも、そろそろ離れてくれると嬉しいのだけど……」

「いやです」

『やだ』


二人の返答にリウが困ったような表情をし、チラリと並べられた死体を見た。

そして、小さく溜め息を吐いて告げる。


「またレアたちとも話したいでしょう? だから、今は少しだけ離れていてくれないかしら?」

『う……分かった』

「……はい」


二人がリウの言葉を聞いて頷いた。

リウが優しく微笑み、二人の頭を撫でる。

そして、死体の方に足を進めた。

死体の列の目の前でリウが立ち止まり、深く息を吐く。

目を閉じたリウの脳裏に過るのは死んだ者たちの笑顔とリルの言葉だ。

リルは全てを受け入れれば()()()を使いこなすことができると言っていた。

何故リルがそんなことを知っていたのかは分からないが、きっとリルが言っていた言葉は本当だ。

リウの予感がそう囁いていた。

だから、リウはその言葉を信じることにした。

自分がリルであることも、両親を殺したことも全て受け入れて――力を解放するための鍵言葉(キーワード)を紡いだ。


「〝我が名はリルシー・ヴェイル・リフィード。魔を穿ち希望を齎す神罰の代行者である〟」


リウの淡い金髪がふわりと広がり、背に二つの小さな魔方陣が浮かんだ。


「〝我が名はリウ・ノーテル。希望を穿ち絶望を齎す邪悪なる殺戮者である〟」


更に二つ魔方陣が増え、全ての魔方陣が光り出す。

四つの内、二つが純白に。

四つの内、二つが漆黒に。

そして――その魔方陣から、巨大な翼が四枚現れた。

二対四枚の翼。

その内二枚は神々しい純白の翼。

その内二枚は禍々しい漆黒の翼。

神々しくも禍々しいその姿は、お伽噺に出てくる堕天使のようだ。


「〝私は命を超越した者。私は人の身で神に至った者。私は聖にして魔――聖魔神である〟」


言葉が終わると同時に、リウが地面に降り立った。

そして、ゆっくりとリアとディーネの方を見る。

リアが息を呑んでリウを見つめた。


「――大丈夫」


リウがそう口にした。

そして、ゆっくりと微笑む。


「今度は、ちゃんと制御できているわ」


リアが肩の荷を下ろした。

ほっと溜め息を吐くリアから視線を外し、リウが死体を見下ろした。


「……ちゃんと、私の過去についても話しておかないとね。そのためにも先ずは、蘇生しないと」


リウが小さく呟き、四枚の翼で浮かび上がった。

そして、深く深く集中し始める。


「――〝輪廻改変〟……」


先ずリウは、聖魔神としての力で輪廻に干渉して死んだ者たちの魂を探し始めた。


「……足りない」


リウが集中してからしばらく経ったあと、リウが呟いた。


「どうして? ……どうして、レアの魂だけ……あと一つだけなのに……! 無い、ここじゃない、ここはさっき見た……! どうしてどこにもないの……?」


そうぶつぶつと呟きながら狼狽えるリウ。

地上からリウを見つめていた二人がそんなリウを見て心配そうな表情をした。

しかし、極度の集中状態にあるリウがそれに気付くことはなく、狼狽えながらレアを探し続けていた。


「なんで、どうして……!」


そこで、淡い光がリウの傍をくるくると回った。

しかしリウがそれに気付くことはない。

――だが、しかし。


『リウ』


ぴたりとリウの動きが止まった。

何故ならば、今聞こえてきたその声は――リルのものだったから。

リウがリルの声に耳を傾ける。


『焦りすぎては見えるものも見えません。慌てるのも分かりますが、冷静になって下さい。……見えないからといって、遠くにあるとは限りません』

「……レアの魂は、しっかりと感じ取れる……だから、消えたわけじゃない……遠くにあるとは限らない……?」


リウが深く考え込み、そして、答えを導き出した。


「……レアの魂は、他の魂よりもずっとずっと近くに感じる……いや、むしろ輪廻を探れば探るほど、遠くなっていく……つまり、レアの魂はこの世界に残っている?」


リウが目を開く。

聖魔神の命を視ることができる眼に、レアの死体の周りをふよふよと漂う光が映った。

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