リウの自室
ディーネが作った部隊の加入希望者の対応に追われるディーネを雑に応援したリウは城にある空き部屋の中に居た。
無言で手を平行に薙ぎ払うと、部屋の中に幾つもの家具が設置される。
リウのギフト〝物質創造〟である。
設置された家具はどれも白色を基調とし、模様は薄桃色などの淡色で揃えられていた。
ふぅ、と息を吐いてリウが天蓋付きベッドに寝転がった。
満足そうにリウが頬を綻ばす。
「あと作っておきたい部屋は、ディーネの部隊のための訓練所と、武器庫……ついでに宝物庫。あとは念のために応接室……それと召使いの子とかのためにお城で寝泊まりも出来るようにしないと」
リウが確認するように呟いた。
一人頷くと、リウが立ち上がろうとし、
『りーちゃーん!!』
「ひゃあっ!?」
『りーちゃん自分の部屋作ったの? このベッドふかふかだね。昨日はこのお城の屋根の上で寝てた癖に』
「え……な、なんで知ってるの!?」
『空の散歩してたら見つけた~』
「う……だ、だって、寝る場所が無かったのよ! 夜風が気持ちよかったんだから仕方無いでしょ!」
突如現れたディーネに悲鳴を上げ、昨日お城の屋根で眠ったいたことを言及されて夜風が気持ちよかったんだと告げた。
若干不機嫌そうな表情でベッドの隅に移動したリウがディーネに向かって口を開く。
「それで? 用件はなに?」
『えっとねぇ~……訓練所作って?』
「ん。それは今からやろうと思ってたからいいわよ。場所はどうしましょう」
『場所は……一通り歩いてからでもいい? あと、軍事会議室もお願い。あそこの会議室じゃ広すぎるから。それと後回しでいいけど私の部屋もお願い』
「了解。訓練所と軍事用の会議室、後回しであなたの部屋ね」
頷くと、リウとディーネはお城を歩き回り始めた。
訓練所の場所を検討するためだ。
『りーちゃん、あそこはどう?』
「んー……却下。客人の目に触れるわ。出来れば奥の方がいいわね。ディーネ、ちょっと待ってて。今応接室を……完成」
『りーちゃんのギフト、いつ見ても凄いよねぇ。魔力がある限りなんでも無限に創造出来るもんね』
「なんでもじゃないわ。物質……というか、触れられる物だけね。魔力とかは出来ない。あと、魂とかの概念的なものも創れないわ」
『へー……そうなんだ』
まぁ、触れられるものしか創れないといってもそれで充分ではあるし、概念的な物や触れられない物まで創れたらチート過ぎるので仕方無い。
これ以上チートになっても困るというものだ。
「ディーネ、あそこは?」
『え? あー、うん、いいかも』
「そうするなら……隣の部屋を軍事用会議室にしましょうか」
『……うん、ここにする!』
「じゃあ、ちょっと改造するから離れていてね」
ディーネにそう告げると、リウが片手を前に突き出した。
魔方陣が広がり、それが収まるとリウが手を下ろした。
『りーちゃん、前から思ってたんだけどギフト名とか魔法名を言う時と言わない時の違いはなに?』
「威厳を見せたい時と別に見せなくてもいい時。あと面倒な時」
『私には威厳見せなくていいんだ?』
「ずっと会っていなかったとはいえ昔からの仲だし、何度も醜態見られてるから関係ないわよ」
『まぁ昨日もリウの寝顔六時間くらい見てたけど……』
「はぁ!? 六時間!?」
六時間もリウの寝顔を眺めていたらしい。
至って真面目な表情で言っているので真実である。
『うん、そうだよ? 可愛いしたまに寝言言ってたりするから飽きないもん。まぁ、流石に起きちゃうかと思ってそこでやめたけど……』
リウが顔を真っ赤にして手で顔を覆い隠した。
ディーネが首を傾げている。
「な、何の寝言なのよぉ……それに、六時間も寝顔を見られてたなんて……」
『なんかね、にゃんにゃん言ってた。猫の鳴き真似でもしてた?』
「うにゃああああッ!? う、嘘っ、あれを寝言で……」
『悲鳴もちょっと猫っぽい……』
ディーネの呟きも聞こえぬままにリウがぶつぶつと言い始めた。
瞳からハイライトが消えている。
「別に猫の真似とかしてないし猫と会話してたわけでもそれを見られてたわけでもないんだから……うん、そうよね全ては夢、ディーネが言ってたのもただの幻聴。だから平気よねだってなにもなかったんだから。というかそもそもディーネが私の寝顔を見てたのもディーネの夢なのよね。そうに決まってるわ全部現実じゃないの。私は夢なんて見てなかったの。ディーネは私の寝顔を眺めている夢を見ただけ。だから平気で現実ではなにも起こってなくてディーネは夢と現実の区別がついていないだけ。きっと夢っぽくない夢だったのね。あぁ照れなくてもいいんじゃないだって夢なんだから……ふふふふふふっ」
『り、りーちゃん?』
「ふふっ、ふふふふふふっ」
『りーちゃんごめんなさい話には出さないから戻ってきてぇ!!』
ディーネは悲鳴をあげてリウの肩を揺さぶり、正気に戻らないリウを見て半泣きになるのだった。
リウちゃんはどこでも寝れます




