レアの勇者
久々の遅刻!
すみませんでした。
プリンを食べ終えたあと、リウがルリアに尋ねた。
「……で、ルリア。プリン食べさせたらレアの勇者を教えてくれるのよね?」
『えっ、そうなの!? ルリちゃんそれって本当!?』
「うん。ええとね、学園見学の時に会ったフォースって覚えてるかな?」
「あぁ、確か……11歳くらいの子よね? 確か公爵子息で……あなたの元帥の息子だったかしら。次期公爵の……レア、覚えてる?」
「ほっぺがぷにぷにだった人ですよね? 覚えてます!」
確かに頬を突いていたなと思いながらリウが頷いた。
そして、視線をルリアに向ける。
「でも、その子になんの関係があるの? レアは竜だからなんとも言えないけど、外見的には勇者じゃないわよね?」
勇者と聖女は基本同い年なのだ。
差があるとしても精々が一年。
リウがレアを見る。
外見年齢は五歳くらい。
フォースが勇者というわけではなさそうだ。
「うん。フォースは勇者じゃない。勇者はフォースの臣下だから」
「面倒なことになってるわねぇ。御愁傷様」
「本当にね。その臣下、かなり優秀でね。6つも離れてるのにフォースの補佐を完璧に務めてたんだよ。でも、その臣下が勇者ってことが明らかになったお陰で立場がややこしくなっちゃって。その勇者が威張り散らかしたりするような性格じゃなくて、勇者でもフォースの臣下としての態度を徹底してるのが救いかな」
ルリアが溜め息を吐いた。
勇者は善良な人物のようだが、それでも騒ぐところは騒ぐのだろう。
かなり疲労しているようだ。
「やっぱり、貴族は騒ぐ?」
「うん、騒ぐよ。公爵子息如きに勇者様を仕えさせるなんて、とか。公爵子息のところに置くくらいなら自分のところにとか。あんな役目も果たさない腐った貴族共より国に尽くそうと努力してくれてるフォースの方がよっぽど優秀なのに、馬鹿な連中だよね」
「ルリア、そういうのはなるべく早く処理なさいね。肥大化すると対処できなくなるわよ」
「それはやるつもりだけど、魔海による被害と勇者発覚が重なったお陰でそれどころじゃなくってね。余裕ができ次第すぐに処分するつもりだよ。大抵、跡継ぎはもう居るし」
ルリアが笑った。
リウも同じように笑い、意識を切り替えて勇者問題について頭を悩ませる。
「でも、そう……聖女に興味は見せてるの?」
「特に無さそうかな。恋愛にも無関心だし。まぁ、興味を持ち始めたら言うよ。それでいいよね? 僕から言えるのは、レアが聖女ってことをできるだけ言い触らさない、露呈させないようにってことだけかな」
「そうね……レアは体力も落ちててたくさんは歩けなそうだし、しばらくは大丈夫でしょうけど。他国の諜報も監視してるのよね? セラフィア」
「はい。怪しい行動をしていないか監視しています」
見られたら困るものがあると判断されかねないので攻撃などはしていないものの、監視はしているのだ。
レアを見て、リウが溜め息を吐く。
面倒なことになったものだと。
「はぁ……忙しくなりそうね。レア、ごめんね。聖女だということがバレないようにだけ、出歩けるようになっても気を付けてもらわないといけないわ。本当にごめんね……」
「大丈夫ですよ、リウ様。なにか変わったところがあるわけじゃないですから。聖の力さえ見せなければいい、ということですよね?」
「ええ。でも、身構えちゃったりするでしょう? 気軽には出歩けなくなったわけだから、申し訳なくて……」
「大丈夫です! 散歩に気合いを入れるだけですから!」
リウがレアを窺うと、本当に本心からそう思っているようでにこにこと笑っていた。
リウが笑顔になってレアを抱き締める。
「そうね。少し気合いを入れてもらうことになったけど、よろしくね」
「もちろんです!」
そんな二人のやり取りを、羨望の眼差しで見る者が一人。
「いいなぁ。僕のところにもあんな健気な子欲しいなぁ……」
『ルリちゃん、少なからず健気な子は居るでしょ!?』
「いや、居ない。というか、すぐ居なくなっちゃう」
『……辞めちゃうの?』
ディーネが首を傾げて尋ねるが、ルリアはそれを否定して答えた。
「変わっちゃうんだよ。どれだけ純粋で健気でも、いつの間にか腹黒になっちゃうの」
『れーちゃんも腹黒なところあるよ? 実際、りーちゃんのファンクラブ……なのかな? とりあえず、組織大量に作り出してるし。変態の集まりみたいなのもあるけど』
「レアが? ……ディーネでもその嘘はちょっと」
『そこら辺がもう腹黒いよね。自分を疑わせないっていうか。たぶんれーちゃん自分がかわいいの完璧に理解してそれを生かしてるし』
ディーネが少し遠い目になった。
ディーネ自身はあまり被害に遭ったことはないが、リウは腹黒の被害に遭っているので。
「そうは見えないけど……」
ディーネの様子に不思議そうな表情を見せるルリアであった。




