ウンディーネ
国民を集める章のはずなのに……どうしてこうなった。(プロットが無いからです)
水の大精霊を呼び出したリウと、それを見て呆然とするレア、セラフィア、フローガの三人。
水の大精霊のことをディーネと呼ぶリウと、リウのことをりーちゃんと呼ぶディーネは昔からの知り合いらしく非常に仲睦まじい様子だった。
幼女の頃から変わっていないと言われた鬱憤を晴らすために先程から三人を放置してディーネを捕縛し罵倒していたリウだが、やっと気が収まったようでディーネの首根っこを掴んで引き摺りながらリウが笑顔で三人に話しかけた。
「ってことで、ディーネに特産物作らせる係やらせるわ」
「り、リウ様、それは、なんというか……罰当たりなのではないでしょうか」
「心配無いわよ。……ねぇ、ディーネ?」
『ちょ、りーちゃん私の扱い雑だよ……えーと、別にいいけど説明はしてもらっていい?』
セラフィアの危惧をリウが一蹴し、ディーネに尋ねるとむくりと立ち上がりながら呆気なく許可を出し、説明を求めた。
リウは頷いて国を創り始めたことなどを説明し出す。
『へー、りーちゃんが国をねぇ……女王陛下か。うん、いいんじゃない? で、私には特産物の製造を任せたいんだよね? 精霊竜くんの肉体が眠る場所っていうのには驚いたけど……ねぇねぇ、私も国見てみたい。私の眷属ちゃんたちを召喚すればいいでしょ? んーと、薄めるから……三人も居れば充分だよね。だから、私も住ませて? メイドさんでもなんでもするよ?』
「……保留!」
『えー……りーちゃんのばかぁ! やりたいやりたい! りーちゃんのとこで働きたい!』
リウが保留と口にした瞬間、ディーネが地面に寝転がりジタバタと四肢を暴れさせて駄々を捏ね始めた。
リウが呆れたような眼差しを送りつつ保留と言った理由を口にする。
「ディーネ、三人を見てごらんなさい? ちょっと萎縮してるでしょう? 人が使い物にならなくなったら国創りも進められないのよ。だから、せめて説明してから。ね?」
まるで我儘を言う子供を諭すような口調だった。
リウはディーネを見た目通りの子供として認識しているのかもしれない。
『やだやだー! 私危なくないからいいでしょりーちゃん!』
「そういう問題じゃないの。まぁ、先ずは眷属召喚してくれないかしら? 資金源は大事でしょう?」
『……〝眷属召喚〟』
不貞腐れたような表情をしながらディーネがそう呟いた。
すると急に水が現れて三人の人の姿を形作り、綺麗な礼を披露した。
『アクア、ユーラ、ナハル。お願いね』
『はーい』『あいあいさー!』『ねむい……』
『私はりーちゃんのところで働くから』
「ちょっ、ディーネ!」
発せられたディーネの言葉を聞くと、リウが慌てて声をかけた。
ディーネはリウを見ると、にんまりとした笑みを浮かべる。
『別にいいでしょ? りーちゃんは失いたくないだけなんだから』
「あ、あぅ、ちょっと黙って! 今更大精霊の顔見せないで!」
なにやらリウが動揺していた。
顔を赤くしてディーネを止めようとしている。
『りーちゃん、あの日からずっと孤独だったもんね』
「う、うるさいうるさい! 私の過去は関係ないでしょ! 分かったから、働かせてあげるから!」
『それは嬉しいけど……いつかは話した方がいいと思うよ? りーちゃんは色々と抱え込んでるし』
「ううぅ……」
何故か立場が逆転していた。
ディーネはふわりと青い光を纏いながら宙に浮くと、未だに呆然としている三人に近付いていった。
『りーちゃんのこと、お願いね? あの子、全部一人で抱え込んじゃうから。私も側に居たいから、説得してくれないかな。ほら、今までも全部りーちゃんがやっちゃってたんじゃない?』
心当たりのあった三人が一斉に不満げな表情をして俯いているリウを見る。
レアには甘い傾向があるので、二人がレアに説得をしてみるように言って送り出した。
レアが張り切ってリウの元へ向かう。
「リウ様! ウンディーネ様は、リウ様を心配して言ってるみたいですよ? 最初は緊張してましたけど、今はもう私も大丈夫ですし。だから、いいんじゃないですか?」
「……分かってるわよ、心配してくれてるのは。だけど、働く必要はないでしょう? ディーネは、私の忘れたい過去を知っているの。だから、あまり……ね。戦争とかに巻き込みたくもないし」
「リウ様の抑止力にはなりますよね。お仕事をしすぎないための。それに、大精霊様です。簡単には負けませんよね?」
「そうだけど……」
そう言いながら、リウが反論しようとする。
だが、それを口にする前にレアがリウの手を握った。
「ウンディーネ様が言っていましたけど……失うのって、辛いですよね。だから、リウ様は失いたくないんですよね。過去は詮索しません。辛いことがあったのかもしれないですけど……忘れることは出来なくても、今を幸せに生きることは出来ますよね? ウンディーネ様が側に居ることは、きっと、リウ様の幸せに繋がるんだと思います。だって、リウ様、楽しそうでした。ディーネ様と話してる時、ずっと頬が緩んでましたから」
「……レア……うん、そうね。忘れることは出来ないけど……引き摺りすぎないことにするわ。ディーネ、働くのはいいけどみんなの邪魔はしちゃ駄目よ?」
『しないよ!? 流石にそれくらい弁えてるよ!』
「……なら、一瞬に国を発展させましょうね」
『うん、りーちゃん!』
微笑みながら告げられたリウの言葉に、ディーネが笑顔で頷いた。




