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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
対策しましょう

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リハビリ

ディーネの〝もう一度契約しよう〟という言葉を聞いて、リウはとても困惑していた。

ディーネはイルム王国に向かった時からずっとリエラと契約しているはずで、精霊は同時に二つの契約をすることができない。

つまりは、新しく契約を結ぶためには今している契約を破棄しなければならないのだ。

それなのに契約しようと言われて、リウは困惑しているのだった。


「契約しようって、あなたリエラと契約しているわよね?」

『あぁ、リエラは……ちょっと、毒の大精霊(ディリティリオ)に気に入られちゃって半強制的に契約結ばされてたから……私も破棄させられちゃって。だから、それに関しては問題無いよ』

「……その精霊、リエラに契約を強制したの?」


リウが少しだけ怒りをあらわにする。

ディーネがそれを感じ取り、慌てて首を振って詳しく説明し始めた。


『あぁいや、そうじゃなくて! その精霊、かなり口が回るみたいで言いくるめられてただけだから! ちゃんとリエラも納得した上での契約だから! リエラはかなり遊ばれてるみたいだけど、ちゃんと仲良くやってるみたいだし』

「……そう、ならいいわ。でも、後でちゃんとご挨拶しないと……ふふっ」

『うぅ、りーちゃんがちょっと怖いよぉ……そ、それで、りーちゃん。私ともう一度契約してくれる?』

「ええ。……あなたが心からそれを望むのなら、契約しましょう」

『やったぁ!』


ディーネがぱあっと笑みを浮かべ、リウの手を取った。

そして、契約を完了させると思い切りリウに抱きつく。


『改めてよろしくね、りーちゃん!』

「ええ、ディーネ。よろしくね」


リウがくすりと笑ってディーネの頭を撫でた。

その時、すぐ傍で小さな声が発せられる。


「……リウ様……?」

「あっ、レア! 体調は大丈夫? ごめんね、私がすぐ原因に気付けていればこんなに苦しまなくて済んだかもしれないのに……」


レアに駆け寄るなり、リウがそう謝罪をした。

しゅんとするリウにレアが微笑むと、小さな手でリウの頭を撫でる。


「実際に気付けたとしても、対処できたかは分からないんですからそんなことで後悔しなくてもいいんですよ。それよりも、リウ様。私を助けて下さってありがとうございます。お陰で体調もだいぶ良くなりました」

「……そう、良かった。確かに顔色もだいぶ良くなっているわ。でも、もう少し休んでいなさいね」

「そうですね……数日間動いていなかったからか、全然身体に力が入りませんし……リウ様、このお部屋の中だけでいいので歩いてもいいですか?」

「いいけど、一人の時は駄目よ? 絶対に、誰かが一緒に居る時だけにすること。いいわね?」

「はい、分かりました。ちょっとだけ歩いてみますね」


リウがレアを支えてベッドから降ろした。

レアがゆっくりと歩き出す。

リウは慌ててレアと手を繋いで転ばないように支えた。


「……う~、やっぱりちょっと怠いです。早急にリハビリをすべきです……!」

「だーめ。体力も落ちてるんだから、やるにしても少しずつね。ほら、そろそろベッドに戻りましょう」

「う~……帰りは支え無しで戻ります!」

「駄目」


頑として一人で歩かせてくれないリウをレアがむすっとした表情で睨む。

迫力は無く、むしろ可愛らしいまであるのだが口には出さずにリウがやり返すように睨み付ける。

もちろん、本気ではないが。


「むー……」

「ほら、一緒に行きましょう?」

「や~っ!」


レアが駄々を捏ね始めてしまった。

それを見てリウが困ったように目尻を下げるが、レアは構わず一人で歩き出そうとする。

が、それを許すリウではなく呆気なく捕まってしまった。


「……じゃあ、私じゃなくてディーネと一緒。幼女だし、私より支える力は無いはずよ。それじゃ駄目?」

「……ディーネ様は精霊なので力も持ってるはずです」

「じゃあ、本当にディーネと手を繋ぐだけ。それなら、少しふらつく程度なら支えられるでしょうけど転んでも支えられないはずよ」

「……じゃあ、それで」


リウが妥協案を出せばレアが渋々という風に頷いた。

ディーネがレアに駆け寄り、手を繋いでベッドに向かって歩き出す。

リウは少し離れたところで待機だ。

無論、なにかあればすぐ動けるように気を抜くことはないが。

ゆっくりと歩き、何事も無く二人がベッドに辿り着いた。

レアが振り返り、ドヤ顔になってリウに指を突き付ける。


「ふふんっ、見ましたかリウ様! 私は一人でも大丈夫だって証明しました……よ?」


言っている途中で突然身体から力が抜けてしまい、レアがきょとんとした。

状況を理解する間もなくレアの身体が床に近付いていく。

怪我をすることはないだろうが、勢い良く床にぶつかってしまうことになるのでこのまま倒れてしまえばかなりの痛みに悶えることになるだろう。

ディーネは油断していたのか、咄嗟に反応することができなかったようだ。

レアが状況を理解し、きゅっと目を瞑る。

床にぶつかる寸前で、レアのお腹に細い腕が回された。


「あ、れ……?」


そんな声を漏らしながら、レアがおずおずと目を開く。

目の前にリウが居なかった。

次にレアは上を見上げる。

かなり焦った表情をしたリウの姿が映った。


「び、びっくりしたぁ……もう、だから言ったのよ! 危ないから次からはちゃんと誰かに支えてもらいながら歩くように!」

「……リウ様、ごめんなさい」


レアがしゅんとしてリウに謝った。

リウはそれに苦笑いしてレアの頭を撫でると、優しく告げる。


「ちゃんと謝れたから、許してあげるわ。反省したわね?」

「……はい」

「ん。少し休憩してからもうちょっとだけリハビリしましょうか」

「……いいんですか……?」

「ええ。ただし、ちゃんと私が支えるからね」

「……はい!」


レアが満面の笑みでそう返事をした。

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