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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1102/1103

学園改造大作戦⑬

 それから、数ヶ月が経ち。

 リウとレイシェ、それからレインがシェイタンガンナの学園を見学していた。

 レインはレイシェの付き添い兼安全確認のために来ている。

 レイシェとリウ、二人がかりでレインのことは追い出そうとしたが、この目で安全を確認できるまで寝食を疎かにする、という自分を犠牲にする形で脅されたので、仕方なく入り口辺りまでの同行は許可することとなった。


「……んっ?」

『リウ? どうしましたの?』

「…………あそこ……確か、資料室だったところ……?」

「リウ?」


 レイシェとレインが首を傾げるが、リウは何も言わずにただ首を横に振った。

 少しすると、慌てた様子でルリアが迎えに来る。


「ごめん、待たせちゃった! ちょっと最終確認してて!」

「あ……ええ、それはいいのだけれど」

「じゃ、行こっか! 楽しみにしてて、すっごく改造したんだー!」

「……満足したようで何より。じゃあ、行きましょうか。レインは安全確認だけしたらすぐに帰ってね」

「言い方冷たいなぁ。まぁ、そうするけど……そういう約束で無理矢理付いてきたんだし……」


 レインがそう言って肩を竦め、静かにリウの隣を歩――こうとして、頭を叩かれてそっとレイシェの隣に移動した。

 それに満足しながら、リウはルリアの後ろを歩く。

 学園の入り口、少しだけ進んだところでレインが足を止め、そっと壁に触れた。


「……なんとなく魔力は感じるんだけどなぁ。なんか刻んであるよね……?」

「あー、えっと、諸々の魔法陣? 具体的なのは、えっと、なんだっけ……結界関連と……敵意に反応するやつとか……?」

「ルリア、具現化させてもいい? 私も興味があるの。少し手伝ったけれど、全部じゃないし……」

「あ、いいよ! 僕もちゃんと把握しておかないと……秘書ちゃんに任せちゃったから……」


 ルリアがそう言うと、リウがそっと壁に触れた。

 そして、一部分だけ魔法陣を具現化させると、興味深そうに目を細めて笑う。


「……対魔法結界。それとは別に物理に対応した結界もあって……ふむふむ、これは反撃用ね。無属性の……純粋な魔力の放出による攻撃。効かなければ他の属性に転化できるようにかしら。後は……? ……登録された学園全体の生命を全員転移させる魔法……避難用ね。ええと、到着先は……」

「流石に、読み取る速度はリウには敵わないなぁ……これ、寮にもあるの?」

「あ……うん。転移はレイシェのことも今日登録するし、結界の範囲はもちろん寮を含むよ。攻撃もちゃんと寮まで届くから」

「ふぅん……確かに厳重だね。だからリウは僕の同行を許可したの? 納得するってわかってたから」


 レインがそう尋ねると、リウがきょとんとした。

 そして、数秒経ってから苦笑いすると、ふるふると首を横に振る。


「納得するってわかっていたことは否定しないけれど……私、学園の防衛はそこまで関わってないもの。効率化の手伝いとアドバイスをしただけで、内容についてはほとんど口出ししていないわ。ただ……私は、ルリアや大悪魔たちのことを信用しているだけ。あ、傲慢は嫌い。あと強欲もあんまり好きじゃない。他のみんなは、大体好きだけれど……」

「嫌い……? ……殺す?」

『お兄様! 不穏なことを口にしないでくださいまし! 冗談、冗談ですわよね!』

「だってあのリウが嫌いって。滅多に人を嫌うことがないリウが……」

「ああ……全く面倒ね。わかったわかった、嫌いじゃないわ。これでいいでしょう。じゃ、レイン。もう納得したのね? それじゃあ、ノルティアナに送っていい?」


 リウが面倒そうにそう返して確認すると、レインが少し嫌そうな顔をした。

 そして、チラリと再度魔法陣を確認してから頷き、ルリアに軽く頭を下げる。


「僕のこと嫌いなのに、ありがとう。気が気じゃないだろうし、さっさと戻るよ。レイシェのことお願い」

「あ、うん……いや、その……嫌いじゃ……ない、ことはないけど。そんなに気を使わなくても平気だから……納得してくれたなら良かった」

『お兄様、見学が終わり次第会いに行きますわね! どちらまで送ってもらうんですの?』

「あ、そうだった。リウ、お城までお願いできる? 精霊薬作りはもうやってあるから、ある程度処理しておくよ」

「ん、ありがと。じゃあ送るわね」


 リウがそう言い、レインを城へと送り届けた。

 ちゃんとレインの気配がノルティアナの城にあることを確認して、リウがルリアを振り向く。


「それじゃあルリア、行きましょうか。たっぷりと時間を作ったから、丁寧に説明したいだけ説明してくれて構わないから」

「本当!? じゃあねぇ、どこから行こうかな〜……じゃあ、グラウンド行こうか! 僕もまだちゃんと設置されてるところは見たことないんだけど、試してもらった感じ、だいぶいいみたいなんだ!」

「筋力を鍛える道具……レインに具体的なものを書かせたあれね」

『まぁ! 楽しみですわ! 早く行きましょう!』


 レイシェが無邪気に笑い、早く早くとルリアを急かしながらグラウンドへと向かった。

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