学園改造大作戦⑬
それから、数ヶ月が経ち。
リウとレイシェ、それからレインがシェイタンガンナの学園を見学していた。
レインはレイシェの付き添い兼安全確認のために来ている。
レイシェとリウ、二人がかりでレインのことは追い出そうとしたが、この目で安全を確認できるまで寝食を疎かにする、という自分を犠牲にする形で脅されたので、仕方なく入り口辺りまでの同行は許可することとなった。
「……んっ?」
『リウ? どうしましたの?』
「…………あそこ……確か、資料室だったところ……?」
「リウ?」
レイシェとレインが首を傾げるが、リウは何も言わずにただ首を横に振った。
少しすると、慌てた様子でルリアが迎えに来る。
「ごめん、待たせちゃった! ちょっと最終確認してて!」
「あ……ええ、それはいいのだけれど」
「じゃ、行こっか! 楽しみにしてて、すっごく改造したんだー!」
「……満足したようで何より。じゃあ、行きましょうか。レインは安全確認だけしたらすぐに帰ってね」
「言い方冷たいなぁ。まぁ、そうするけど……そういう約束で無理矢理付いてきたんだし……」
レインがそう言って肩を竦め、静かにリウの隣を歩――こうとして、頭を叩かれてそっとレイシェの隣に移動した。
それに満足しながら、リウはルリアの後ろを歩く。
学園の入り口、少しだけ進んだところでレインが足を止め、そっと壁に触れた。
「……なんとなく魔力は感じるんだけどなぁ。なんか刻んであるよね……?」
「あー、えっと、諸々の魔法陣? 具体的なのは、えっと、なんだっけ……結界関連と……敵意に反応するやつとか……?」
「ルリア、具現化させてもいい? 私も興味があるの。少し手伝ったけれど、全部じゃないし……」
「あ、いいよ! 僕もちゃんと把握しておかないと……秘書ちゃんに任せちゃったから……」
ルリアがそう言うと、リウがそっと壁に触れた。
そして、一部分だけ魔法陣を具現化させると、興味深そうに目を細めて笑う。
「……対魔法結界。それとは別に物理に対応した結界もあって……ふむふむ、これは反撃用ね。無属性の……純粋な魔力の放出による攻撃。効かなければ他の属性に転化できるようにかしら。後は……? ……登録された学園全体の生命を全員転移させる魔法……避難用ね。ええと、到着先は……」
「流石に、読み取る速度はリウには敵わないなぁ……これ、寮にもあるの?」
「あ……うん。転移はレイシェのことも今日登録するし、結界の範囲はもちろん寮を含むよ。攻撃もちゃんと寮まで届くから」
「ふぅん……確かに厳重だね。だからリウは僕の同行を許可したの? 納得するってわかってたから」
レインがそう尋ねると、リウがきょとんとした。
そして、数秒経ってから苦笑いすると、ふるふると首を横に振る。
「納得するってわかっていたことは否定しないけれど……私、学園の防衛はそこまで関わってないもの。効率化の手伝いとアドバイスをしただけで、内容についてはほとんど口出ししていないわ。ただ……私は、ルリアや大悪魔たちのことを信用しているだけ。あ、傲慢は嫌い。あと強欲もあんまり好きじゃない。他のみんなは、大体好きだけれど……」
「嫌い……? ……殺す?」
『お兄様! 不穏なことを口にしないでくださいまし! 冗談、冗談ですわよね!』
「だってあのリウが嫌いって。滅多に人を嫌うことがないリウが……」
「ああ……全く面倒ね。わかったわかった、嫌いじゃないわ。これでいいでしょう。じゃ、レイン。もう納得したのね? それじゃあ、ノルティアナに送っていい?」
リウが面倒そうにそう返して確認すると、レインが少し嫌そうな顔をした。
そして、チラリと再度魔法陣を確認してから頷き、ルリアに軽く頭を下げる。
「僕のこと嫌いなのに、ありがとう。気が気じゃないだろうし、さっさと戻るよ。レイシェのことお願い」
「あ、うん……いや、その……嫌いじゃ……ない、ことはないけど。そんなに気を使わなくても平気だから……納得してくれたなら良かった」
『お兄様、見学が終わり次第会いに行きますわね! どちらまで送ってもらうんですの?』
「あ、そうだった。リウ、お城までお願いできる? 精霊薬作りはもうやってあるから、ある程度処理しておくよ」
「ん、ありがと。じゃあ送るわね」
リウがそう言い、レインを城へと送り届けた。
ちゃんとレインの気配がノルティアナの城にあることを確認して、リウがルリアを振り向く。
「それじゃあルリア、行きましょうか。たっぷりと時間を作ったから、丁寧に説明したいだけ説明してくれて構わないから」
「本当!? じゃあねぇ、どこから行こうかな〜……じゃあ、グラウンド行こうか! 僕もまだちゃんと設置されてるところは見たことないんだけど、試してもらった感じ、だいぶいいみたいなんだ!」
「筋力を鍛える道具……レインに具体的なものを書かせたあれね」
『まぁ! 楽しみですわ! 早く行きましょう!』
レイシェが無邪気に笑い、早く早くとルリアを急かしながらグラウンドへと向かった。
 




