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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1101/1103

学園改造大作戦⑫

 それから、リウたちは実践授業の内容を考え、気付けば夕方になっていた。

 そろそろシーアに怒られそうなので、ルリアが国に戻る、と口にした直後、ノックの音がした。

 扉の奥には、レインの気配がある。


「……レイン? 何か用事でもあるの?」

「うん、入っていい? 資料が一つ完成したから、持ってきたんだけど」

「ああ……忘れるところだった。タイミングがいいわね、レイン。ちょうど、自動で資料の内容を書き写す魔法の調整が終わったの。残りも回収させてもらうわね。部屋には入らないで、私がそっちに行くから」


 リウがそう言って立ち上がり、扉を開けた。

 するとレインはちらりと部屋の中を見て、頬を緩める。

 その視線の先には、小さく手を振るレイシェがいた。

 どちらが本題なのかはわからないが、レイシェを様子を見るためにも入りたかったらしい。


「はい、資料」

「ん……確認するわね。えっと……うん、完璧。文字も乱れが無いし……脱字も無くてむしろ怖いくらい」

「リウが真っ先に僕に持ってきてくれた仕事だから、失敗したくなくて」

「……そう。ええと、じゃあ、そうね。報酬……当初の予定より、もう少しだけ色を付けてあげる。はい、どうぞ。大切に使いなさいね」

「あ、やった。何あげようかな……」

「……ん?」


 何に使おう、ではなく、何をあげよう、らしい。

 リウが眉を顰め、そっとレインの視線の先を辿る。

 やはりその視線は、じっとレイシェを見つめていた。


「……あなたもしかして、これまであげたお金も全部レイシェのために……?」

「そんなことないよ。服も少し買ったし、お皿とかも買った。後は……たまに、僕が食べたいものを買ったりとか? ほら、食料はくれるけど、指定は受け付けてないでしょ。もっといいもの食べたいならお金貯めて自分で買えって方針だもんね。まぁ、買うのは高級品とかじゃなくて屋台料理とかなんだけど……」

「……あなたね。そんなんだから不安定になるんじゃないの……? 本当に大丈夫……?」

「レイシェの幸せそうな顔見てる時が、一番そういうモヤモヤを感じずにいられるよ?」

「……それなら、いいのだけれど」


 にっこりと笑顔を浮かべてレインがそう言うと、リウが少し心配そうに呟いた。

 そして溜息を吐くと、レイシェを振り返って手招きする。


「レイシェ、レインと一緒に帰る? ルリアもそろそろ帰らないといけない時間みたいだし……」

『ええ……そうですわね。リウにもお仕事があるでしょうし、今日のところはそうします。今日は楽しかったですわ。また呼んでくださいましね、リウ、ルリア様』

「もちろんだよ! ……じゃあそろそろ帰るねー! ばいばーいまたねー!」


 ルリアがすっと立ち上がり、ニコニコしながら素早く帰っていった。

 どうやら、ルリアはレインが苦手なのでさっさと帰ることにしたらしい。

 リウとレイシェはそれに苦笑いすると、軽くルリアに手を振ってからレインに向き直る。


「さて。レイシェのこと、ちゃんと連れ帰るのよ。……むしろ、別に帰った方が……」

「リウ? それは……酷くない?」

「だってそうでしょう。あなた、しょっちゅう大事件に巻き込まれるんだもの。まぁ、封印があっても一般人には負けることはないから、色々対処しやすかったりはするのだけれど……レイシェが巻き込まれるかもしれないとなると……」

「じ、自覚はしてるけど。でもレイシェは……」

『わたくし、お兄様が思うほど幼くありませんわよ。別に一人でも帰れます。ただ……お兄様が心配だから、一緒に帰れる時は一緒に帰っているだけですわ』

「……しんぱい」


 レインが少し悲しそうに目を逸らしながら呟いた。

 巻き込まれ体質なのは自覚しているが、レイシェに心配はされたくないらしい。

 レイシェが必ず守るという意思を込めて言っているのがわかるから、余計に。


「……立場が立場だから、僕自身は攻撃とかはできないけど。それでも、守ってもらう必要は……」

『もう、お兄様ったら。家族だから守りたいんですのよ。実力とかは関係ありません。……とはいえ、わたくしはこれから学園に通うことになりますし……こういう機会も減りそうですわね。寮の管理人となると、基本的にはずっと寮にいることになるでしょうし』

「……そういえば、泊まり込みってわけじゃないんだよね。夜とか、大丈夫なの? 寮なんだから、生徒はずっといるでしょ?」

『そちらは別で担当者がおりますから。お兄様、適当な話をして時間稼ぎをするのはやめてくださいまし。早く行きましょう』


 話を続けて少しでも長くリウと一緒に居ようとするレインをレイシェが引っ張り、リウに頭を下げた。

 そして、レイシェは強くレインを引っ張り、帰っていく。

 それを見届けてリウが苦笑いすると、そっと扉を閉めてベッドに腰掛けた。


「……学園……ふふ、楽しみ。この国からも、良い才能を持つ人が現れるかしら……」


 リウは窓を見ながらそんなことを呟き、くすりと微笑んだ。

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