土地の完成
タイトル思い付かなかったです
自らの国に帰ってきたリウ、レア、セラフィア、フローガの四人。
大喝采に包まれる四人に静かに近付いてくる女性が居た。
緩く下の方でお団子に結われた紫色の髪と同色の瞳が特徴である。
「リウ様、セラフィア様。皆様がご挨拶に出向いている間に、住宅について意見を纏めさせて頂きました。結果、出来るなら改装という形でという風に纏まりましたのですが、出来ますでしょうか。……それと、勝手に会議室を使ってしまって申し訳ありませんでした」
「えっと、会議室はいいけれど。改装……となると、出来るところもあるけど国ってなると道は整ってないとごちゃごちゃしてる印象になっちゃうし……私の構想的には、お城から四方に大通りがあって、住宅区とか商業区とかに細かく分けるつもりなのだけど……」
「難しいのなら、それでも構いません。皆も納得しております」
「……いえ。移動させてもいいのなら、出来なくはないわね。えっと、あなた名前は?」
「申し遅れました。わたくしはリエラと申します」
リエラと名乗った女性はリウを見据えて話し始めた。
なんでも、四人がいない間に決められることは決めておこうということになったらしい。
やることが減ったので他に手を回すことも出来るとリウが嬉しそうに笑みを浮かべた。
「そう、リエラ。色々としておいてくれてありがとうね。えーっと……移動させるのはいいのかしら」
「そういうことも出来るかもしれないと思い、決めておきました。いいそうです」
「なら、いけそうね。先ずは地面を完全な平地にして……家は全て空間に収納すれば……うん、大丈夫そう。改装は……素材を変えて、もっと大きくして、でも原型はある程度残す感じかしら。となると……」
リウがぶつぶつと独り言を呟き始めた。
思考が全て口から漏れてしまっている。
しばらくしてリウが微笑みを浮かべながら頷くと、じっとリウを見つめていた国民たちが何故か姿勢を正した。
それを見たリウは首を傾げたが、丁度いいかと思い直して口を開いた。
「今から、全ての家を私の作り出した空間に収納して、地面を平らにするわ。あなたたちの家も改装する。今回はこのお城よりも遥かに集中する必要がある。ちょっと危ないから、離れていてくれる? そうね……大体、あそこらへんまで」
リウがだいぶ離れた場所にある大きめの木を指差した。
危険と聞いて若干戸惑いつつも、国民たちがリウが指し示した場所へと向かう。
全員が移動したのを確認すると、リウがゆっくりと息を吐いて一言呟いた。
「〝黒翼〟」
リウの背中に小さな黒い魔方陣が出現し、そこから二枚一対の漆黒の翼が現れる。
そして、一回だけ翼をはためかせ、一気に国の中心であるお城、更にその上空にまで向かった。
リウが空を飛びながら眼下を見やり、手を翳す。
「〝空間創造〟〝消失〟〝物質創造〟」
先ず、辺りにあった家が全て消え失せる。
そして、地面も一瞬で数センチほど消え失せ、刹那地面が無くなった場所に煉瓦が敷き詰められた。
リウが一旦息を吐き、手を真っ直ぐに伸ばす。
すると、道や城に合う素材、そしてデザインに変えられた住宅が綺麗に並べられた。
その内の一つだけが、貴族の屋敷が如く豪奢な造りになっている。
リウが脱力したように手を下げて、ふわりと地面に降り立った。
その瞬間、黒い翼は黒い粒子となって消え失せる。
「もう来て大丈夫よ。まだ色々とすることがあるんだから、呆然としてないでこっちに来なさいな」
リウの言う通り、国民たちは一瞬で煉瓦の道となった地面と前の何倍も広く、頑丈そうな家を見て呆然とし固まっていた。
呆けている理由はもう一つ。
それは――
「リウ様! なんですかさっきの翼! リウ様は堕天使様なんですか!?」
レアの言う通り、舞い降りてくるリウの姿が堕天使に酷似していたからだ。
実際に見たことがあるわけではないのだろうが、絵本などでは堕天使という存在は時々出てくる。
禍々しくも神々しい。
光から闇へと堕ちた者。
絵本でよく使われる言葉である。
他にも、満月の夜に降臨し、一夜で国を滅ぼした――なんて言い伝えもあるくらいだ。
「堕天使、ね……はぁ。レア、私はあまり好きじゃないから、次からはあまり堕天使とは言わないでね。私は堕天使じゃないわ。魔王だもの」
「でも、綺麗でした! 嫌なら、次は気を付けますね!」
「ええ、それでいいわ」
リウが複雑そうな表情で頷いた。
苦笑い気味にレアの頭を撫でると、ぞろぞろと近付いてくる国民たちを横目に確認して口を開く。
「あの大きな屋敷はフローガたちが住む場所よ。他は分かりやすいように色々と細工しておいたから各自で確認をお願い。それじゃ、一先ず家を確認なさい。不満とか要望があれば言って。改善するわ」
リウはそう告げると、興奮気味に自らの家を探す国民たちを見て嬉しそうに笑みを浮かべるのだった。




