表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1099/1101

学園改造大作戦⑩

 それから三十分ほどして。

 魔法の調整を済ませたリウがパッと顔を上げると、ルリアとレイシェがリウの方を見た。

 なお、レアはすやすやと眠っている。


「リウ、もしかしてもう終わったの?」

「ええ。案出しの方はどうかしら?」

『流石はリウですわ。お兄様が天才天才とうるさいくらいに仰るのも理解できますわね。……こほん、案出しの方は……ええ、注目度を上げて、もっと学園に入学する人を増やしたいとのことでしたので、とびっきり斬新な案を考えさせていただきましたわ』

「そうなんだよ! それでね、いくつか案を絞ってみたんだけど……」


 ルリアがそう言いながら差し出してきた紙を見ると、一番上には学園遊園地化計画、と書いてあった。

 第一候補らしく、具体的な構想まで練られている。


「……んん……? ……私が少し集中している間に、こんなことを……?」

『ええ! 素敵でしょう?』

「……素敵……ええ、素敵ね。とても楽しそう。……ただ……学園は学ぶための場所。こんなものを作ったら、一部生徒は授業が頭に入ってこなくなるんじゃ……抜け出す生徒まで出てくる可能性も……」

「あ、大丈夫。授業中は無いから」

「無い? それってどういう……あ、書いてある。……授業中は地下にしまっておく?」


 きょとんとしながらリウがそれを読み上げると、レイシェが楽しそうに頷いた。

 そしてルリアと顔を見合わせると、頬を緩めながら説明する。


『既存の魔法でも可能だと思うのですわ。何せ悪魔は大きな魔力を持つ種族ですもの! それを用いて魔法を発動し、全ての勉強が終わった後にだけ遊園地を解放するのです! これなら、抜け出したくても抜け出しても意味はなく、親睦を深める場にもなると思うのです!』

「……そ……そう……? でも、大した規模にはできないのだし……」

「……それは考えてなかった。え〜、こんなに必死に考えたのに、ダメー……?」


 ルリアが机の上に崩れ落ちながらそう言うと、リウが苦笑いした。

 レイシェは目を逸らし、しょんぼりと肩を落としている。

 リウはそれに申し訳なさそうに目を伏せると、少し考え込む素振りを見せるとこくりと頷く。


「でも。軽い運動場というのは、いいかもしれないわね。勉強だけでは身体が弛んでしまうわ」

「えー、運動場あるよ?」

「遊具が無いでしょう。筋力を鍛える道具とか、色々と……うん、発想は使えるわね。内容は改造することになるけれど、この案を利用することはできると思う」

『本当ですの!?』

「ええ。ただ楽しいだけではなくなるかもしれないけれど。ふふっ……」

「あ、でも……悪魔以外も来るようになるから、あった方がいいとは思うけど……筋力を鍛えるため、だよね? それなら、悪魔には意味が無いよね。うーん……」


 ルリアの発言に、リウが楽しそうに笑みを深めた。

 そして、その楽しそうな表情のままに口を開く。


「確かに、悪魔とは魔力に近い肉体を持つ種族であり、〝肉体〟を持っているとは言いづらい面もある。受肉も可能だけれど、学生の身でそれを為すのは厳しいでしょう。さて、魔法というものは、凄く簡単に説明すれば魔力をこねくり回して具現化させるもの。想像の中にあるものを魔力によって実現させている。魔力の塊にも近しい悪魔でも、同じ事ができるわ。つまりは、筋力を鍛えるという行動をすることで、人間の同じ効果が得られる。もちろん、自分の意思で肉体という名の魔力を弄るわけだから、この知識を得ていることは前提になるけれど。あるいは、筋力を付けようという意思さえあれば知識が無くても可能かもしれないわね。……とにかく! 学園でこの知識を教えてあげれば、悪魔だろうとそれらの道具を使う理由が生まれるわ。決して無駄にはならないの」


 リウがそう言って話を終えると、満足気ににっこりと笑顔を浮かべた。

 始まった、とでも言いたげな呆れ顔をしていたルリアは、話が終わるなり苦笑いしながらリウの頭に手を伸ばす。


「ええっと……要約すると……魔法と悪魔は似てるから、想像次第で筋力もつくってこと?」

「ええ、そうなるわね。どう、レイシェも理解できた?」

『ええ。それなら……お兄様にアドバイスを頂くのはいかがでしょう? わたくしが聞いておきますわよ?』

「レインに? どうして……あっ」

『ふふ、そうですわ。お兄様は一応、生身の人間。新しい人生を歩むたびに、リウを手に入れるために鍛錬を繰り返していたのですわ。効率のいい方法や道具などはよくご存知なんじゃないかと思って! 丁度来ておりますわよ。わたくしと一緒に来ましたの』

「……え、……あ、本当ね。執務室に気配がある……お父様が見ていてくださったのね。……レアったら、知ってのいたのでしょうに……ふふ、そんなに甘えたかったのね。よしよし……」


 リウが目を細めてレアの頭を撫で、ルリアとレイシェを見た。

 そして、少し考えてからレイシェに紙を預ける。


「はい。会いたくはないからレイシェにお願いするわね。……たぶん、そういう道具を用意する暇は無かったでしょうし。レインも、今存在する道具自体には、そこまで詳しくないと思うの。だから、どんなものがあったら嬉しいか聞いてきて。それで、レインには説明か、もしくは絵でもいいわね。とにかく、わかりやすくどんなものが欲しいか書いてもらって。お願いね?」

『ええ、お任せくださいまし。それでは、行ってまいりますわ』


 レイシェが綺麗なカーテシーをして、部屋から去っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ