学園改造大作戦⑨
「ぅあ〜……つっかれたぁ〜……」
「お疲れ様、ルリア」
リウの部屋にて、ルリアがリウに膝枕をしてもらっていた。
数日間ほぼ監禁状態で溜まっていた仕事をさせられ、とても疲れているのである。
二人が適当な話をしながらのんびりと過ごしていると、コンコンと扉がノックされた。
扉の奥の気配は二つ。
レアと、そしてレイシェである。
「リウ様、レイシェ様がいらっしゃいました。入りますね」
『もう、レアちゃんったら……わたくしたち、お友達でしょう。どうして様付けなんて……』
「今のレイシェ様はお友達じゃなくてお客様なので。私はリウ様の筆頭補佐官ですから、お客様に馴れ馴れしくするわけにはいきません」
『……リウはきっと気にしませんのに』
そんなことを話しながら二人がリウの部屋に入ってきて、お辞儀をした。
そして、レイシェはリウに駆け寄り、そして膝枕をされているルリアに目を丸くする。
『まぁ! ルリア様……お疲れですの? 確か先日、お仕事が忙しくて来られなかったと……』
「そーそー、そうなんだよ。それで疲れちゃって、リウに癒してもらってたところなんだー。リウ、僕が甘えに来ると嬉しそうにするし」
「……私が嬉しそうにするから、甘えに来るの?」
「それもあるよ! リウの嬉しそうな顔好きだから! 恥ずかしいから、凄く疲れてる時くらいしかやれないけど……」
普段は隠しているのだろうに、疲れて頭が回っていないのか赤裸々にルリアがそう語った。
リウはそれに頬を緩めると、優しくその頭を撫でてやる。
と、そこで強烈な視線を感じて、リウがふと顔を上げた。
見れば、レアがむくれながらじっとルリアのことを見つめている。
じっと、じぃぃ……っと、嫉妬の籠もった瞳で。
「……あら、レア……ふふ、レアも甘えたいの? じゃあ……ルリア、真面目な話もしないといけないし、そろそろ終わりにしましょう。身体起こして」
「あ、そうだね。んしょ……はい。レア、どうぞ」
「えっ!? あっ……いや、私は……」
『わたくしのことなら、気にしなくて大丈夫ですわ。さ、レア、リウに膝枕をしてもらうのですわ』
「だ、大丈夫です。私、仕事があるのでこの辺りで失礼します!」
逃走しようとするレアを捕獲し、レイシェがレアをリウの膝の上に乗せた。
すると、リウはそっとレアの頭を撫で、レアを寝転させる。
うぅ、とレアが小さく唸って、しかしすぐに嬉しそうにしながらリウのお腹に顔を埋めた。
「レアって可愛いよね。……こほん、それじゃあ始めよっか。学園改造大作戦の作戦会議!」
『それはルリア様の国で行うべきものなのでは?』
「絶対堅苦しい会議になるからやだ。今日の議題はあーでこーで、みたいなこと言わされる。僕も頭に入らないし……良いことなんて一つもないよ!」
「シーアは苦労しているでしょうね。……ええ、と。それで……今日はどんな会議? 具体的によろしくね」
リウがそう言うと、こくりと頷いたルリアが立ち上がり、書類を取り出して机に並べた。
そこには、以前ルリアが学園をもっと改造したいと言った時にリウが出した案などが書かれている。
いくつかの見覚えのない案は、ルリアのものだろうか。
「画期的で斬新なアイデアを出してほしいんだ! 現実的なやつ! とりあえず、前にリウが言ってた実践授業と他国から呼び込むのは採用したんだけど……他は検討中って感じかな」
「書類を見る限り……防衛強化も検討中なのね? ……というか、変形……却下されてはいないのね」
「あ、そうだね。されてないよ。大悪魔は全員僕の配下だもん、みんなですっごく頑張れば、不可能ってこともないなーって! やるかどうかは置いておいて、だけど」
『変形……? もしかして、この学園を変形させる、という案ですの? しかも、リウが考えて……?』
「冗談半分に、ね。私ならできるけれど……やる意味もなければ、難易度も高すぎるもの」
「だって面白そうだからやりたいんだもん。そう言ったら、秘書ちゃんも検討するって言ってくれたよ!」
苦笑いしながらリウがルリアの頭を撫でた。
一応、検討するとは言ったものの、本当にやるとは思えない。
あまりにもルリアがやりたそうにしていたからそう言っただけだろう。
「じゃ、案出しお願い! あ、でも今日はレイシェが考えてほしいかも……防衛強化なんだけど、僕たちじゃ中々難しい、というか……その、ね?」
「……? ……ああ、確かに……従来の魔法じゃ、魔力消費とか……ふむ、その辺りは考えていなかったわね。なら、とりあえず仮で組んでみましょうか。すぐ終わるし」
『……ルリア様。改造というのは……具体的に、どういった方面の案を求めていらっしゃいますの? 建物の改造か、それとも授業内容などでしょうか』
「え? うーん……どっちも求めてるけど、一旦こっちで選んだ方がやりやすいよね? えーと……僕が望んでるのは、建物の方になるかな! 注目されやすそう!」
『わかりましたわ。では、それを踏まえて考えてみます』
「……レイシェ……なんだか変なスイッチが……いえ、なんでもないわ」
真剣な顔で言うレイシェに、リウが一度そう言いかけ、ゆっくりと首を横に振った。




