学園改造大作戦⑦
とりあえず、レインの理解も得られたので、リウとルリアはリウの部屋に帰ってきていた。
しかし、自分の国に帰らないルリアに、リウは首を傾げて言う。
「ルリア? ……まだ、何かあるの? 聞かせて頂戴な」
「あ、うん。……なんか、なんていうか、ね……もっと学園を大幅に改造したいっていうか……でも、そのための案が浮かばなくって」
「……改造?」
「そう、改造。もっとなんかなあ〜〜……派手にやりたい! ……感じ?」
「派手に……うーん。そうね……やれるのかどうかを考慮せずに案を出すなら、いくつかは出せるかしら」
「いいよいいよ! 現実的じゃなくて全然いい!」
ルリアが頷いてそう言うので、リウはこほんと咳払いをすると少し考える素振りを見せた。
そして、ソファーに腰掛けるとリウがぽつぽつと案を出し始める。
「派手に改造、というのなら……学園そのものを変形できるようにしたら面白いと思うの。それで戦ったりとか……」
「わ、すっごい派手。後は後は?」
「内側――つまりは、勉学の内容に手を加えるのは? 例えば、そうね……実践式の授業を追加するの。模擬戦に、魔法研究に、ああ、魔法工学なんていいわね。魔法を動力に、機械なんかを動かさせるの。楽器を用意して、魔法陣を学生に自分で考えて刻ませて、自動で演奏が始まるようにする。原理自体は魔法工学と変わりないし、安全だし、いいんじゃないかしら」
「凄い……見事に魔法のことばっかり」
「えっ……あ、あ! ……悪魔が相手だから、魔法関連がいいかと思って!」
「ふふっ、冗談。リウらしくていいと思うよ。むしろ、僕がリウに求めてるのはそっち方面かもだし!」
にへ、と笑うルリアにリウが目を逸らし、息を吐き出した。
結局、魔法のことばかり考えているという認識は覆らないらしい。
実際それも全く間違っていないので、そこについて言っても仕方が無い、とリウが改めて案出しを続ける。
「後は……そう、ねぇ。……変形、してほしいけれど……そういうのじゃなくて現実的な案の方がありがたいわよね……学園に魔法陣を忍ばせて忍ばせて、学生の安全確保、防衛機能の強化。それから、ノルティアナだけでなく、他の国にも協力を呼びかけて、学生を呼び込むのがいいでしょうね。この世界で唯一と言っていい学園の存在、それを羨む国は決して少なくない。なら、それを活用し、人を呼び込むのがいいと思うわ。魔王の国ならその辺り提案しやすいし、大抵は魔法陣も確保できるわ」
「ああ……そっか、確かに……でも、えぇ〜……他の子たちに声掛けるの?」
「……? 別に仲が悪いわけじゃないでしょう? 何をそんなに躊躇っているの……?」
嫌そうにするルリアにリウが不思議そうにしていると、ルリアがちらりとリウを見た。
そして、話そうかどうか迷うように視線を彷徨わせ、溜息を吐く。
「仲は、うん、悪くないんだけど……僕、リウとリアの国くらいしか基本行かないから……国に行くのは、ちょっと心の準備がいるっていうか……たまにレティのところにも行かなくはない、かなぁ」
「……ふぅん、レティの……」
魔国アマディアーナを治める、魔王の一人。
第二世代の魔王レティの元に時々行くと聞いて、リウは少し興味深そうに目を細めた。
ルリアが少し、目を泳がせている。
「……何かあるのね。悪巧みか、それとも……ふふ。服でも作ってもらってる?」
「うぅ!? な、なんでわかったの!?」
「目が泳いでいたから。隠さなくてもいいのに……でも、珍しいわね。ルリアは服とか、そんなに興味ないでしょう?」
「それは……そう、なんだけど。……服変えると、抜け出したことがバレても見つかりづらくなるから……すれ違ったくらいじゃわからなくなるみたいでね。……ただ……ばつが悪くて……ほら、折角作ってもらったのに、悪いことにばっかり使っちゃってて……それで、ちょっと相談に乗ったり、手伝いとかしてるんだ。……あと、レティって静かで落ち着くから! たまーにちょっと休憩させてもらってる!」
ルリアが目を逸らしながらそんな風に説明すると、リウが目を細めた。
服を作ってもらって、それを着て城から抜け出し、サボっているらしい。
学園の改築の件は自分自身で動いているようなので、嫌いな仕事から逃げているのだろう。
「……支障が無いなら、口出しはしないのだけれど。サボりすぎていないわよね?」
「だ、大丈夫! ただ、僕は自分で休憩時間を作ってるだけだから……そんなに長くないよ! 大丈夫!」
「勝手に作っているんでしょう……はぁ、まぁ支障が無いならいいわ。他国のことだし。本当に困ったら、ルリアを捕まえてほしいって私に言ってくるでしょうし」
「うぅ!? そ、そうだよね……絶対リウに頼るよね……」
「ふふっ。私、それを断ったりしないから。嫌なら、本格的に怒られる前にちゃんとやりなさいね」
「わかったよぉ。もう、国王になる前のリウだったら、絶対ある程度匿ってくれたのに……気分が落ち込んでなければ」
ルリアの軽いぼやきにリウは苦笑いし、仕事をしてくると言うルリアを見送った。




