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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1095/1101

学園改造大作戦⑥

「――やだ! 絶ッ対、嫌!」


 突如として乱入してきたレインが、そう主張する。

 ルリアの国――シェイタンガンナの学園で、寮の管理人をする。

 別にすぐに帰ってこられるし、もしトラブルがあって戦いになったとしても、そう簡単にはやられないくらいには実力もある。

 精霊であるレイシェは普通の仕事には馴染めない可能性もあるので、レイシェにとって、そう悪い話ではなかった。

 少なくとも、レイシェはそう感じている。


『……お兄様。わたくしは……』

「わかってるよ、やりたいんでしょ。新しい環境に身に置くことを躊躇うような性格じゃないし、異国が気になるって話してたもんね。でも嫌」

『……どうして……?』

「だって悪魔の国なんでしょ。精霊のレイシェは嫌われたりするかもしれないし……傷付いて帰ってこられでもしたら、僕……」

「その場合は私も許さない。……じゃなくて……レイン、少し落ち着きなさいな。ほら、座って。一応、あなたはレイシェの兄で、契約者。異国へ行くというのだから、話し合いはあって然るべきでしょう」


 レインがリウの言葉に小さく頷き、椅子に腰掛けた。

 するとリウは魔法で紅茶を淹れると、全員に紅茶を振る舞う。

 全部で、四つ。

 ルリアとしてはレインとは話したくないのだが、リウは解放してくれそうにないな、と諦めた顔をする。


「……えっと。確かにあの子たちは悪魔だけど……ちゃんと、人格とか厳しく確認してる、よ? もちろん、多種族だからって酷いことを言ったりする人は雇わないし、そんなことをしたら即刻解雇。だから……」

「感情まではどうにもならない。悪魔と精霊は……仲の良い種族とは言えない。そうでしょ? 悪魔に受け入れられるの? 大きな力を持つ精霊であるレイシェを」

「……だ、大丈夫だと思うけどなぁ」

「根拠は」

「だって、僕……元大精霊だし……国王やってて、それで反感を買ったことは無いかな……」

「……」


 ルリアの言葉に、レインがきょとんとした表情をした。

 そして、軽く目を伏せてから、じっとリウを見つめる。


「……あ〜……忘れてた。リウ以外に興味とか無かったから。あ、家族は別だよ。リウのことに必死にはなってたけど、全く気にしてなかったわけじゃないから!」

『そんな必死に弁明しなくても大丈夫ですわ。それで、ルリア様が受け入れられてるのなら――』

「あ、それとこれとは別。そもそもレイシェが遠くに行くのが嫌」

「確かに異国には行くけれど……そもそもね、こっちに転移の魔法陣を設置するからこういう提案をしたの。でなければ、ルリアの庇護下とはいえ私も安易にこんな提案はしない」

「でも遠くに行くんでしょ!」


 とても不満そうにレインが言うと、リウが面倒そうに息を吐き出した。

 からかってくるとはいえ、レインがここまで我儘を言うのは珍しい。

 やはり、レイシェのことは大切で大切で仕方がないのだろう。

 ――とはいえ、レインの身分が奴隷に過ぎないことに変わりはない。


「お前の感情はどうだっていいの。レイシェが行くというのなら私は全力でそれを支えるし、ルリアにも支えさせる。なのにこうして話し合いをさせているのは、あなたがレイシェの家族だから、一応筋は通した方がいいと思っただけ。もちろん、私がこうしなくとも、レイシェはちゃんと真摯にあなたが納得するまで話し合っていたでしょうけれど。それに……レイン、あなたがレイシェの行動を縛っていいとでも? お灸を据える必要があるかしら。レイシェの、〝レイシェ〟としての第二の生を、あなたが狭めないで。……もしもあなたが不安定であるが故のことなら、対処するけれど?」

「……そういうのじゃ、ない、けど」


 歯切れ悪くレインが言うと、リウが肩を竦めた。

 そして、優しく微笑むと、その表情をキープして話を続ける。


「私がこうして今ここで話をしようと思ったのは、あなたとレイシェ、二人きりで話をさせたら、きっとレイシェは折れるだろうと思ったから。レイシェは、あなたのことが大好きだもの。そんなにもあなたが寂しがるならって、やりたくても諦めてしまう」

「……うぅ……」

「わかっているでしょう。レイシェが、自分の意思よりあなたことを優先してしまうことは」

「……ち、ちなみに、だけど。一応、確認しておきたいんだけど」


 レインが申し訳なさそうに身体を小さくしながらそう言うと、リウら口を閉ざして話を聞く姿勢に入った。

 それにほっとした顔をしつつ、レインは遠慮がちに尋ねる。


「僕が、一緒にその寮の管理人をするっていうのは……」

「ダメ」

「……だよねぇー……」

「というかそれ、こっちからもお断りだよ。リウとやり合える実力者なんて、国にも入れたくないよ。怖いし」

「ルリアったら……ふふ。大丈夫よ、レインは絶対に国外……どころか、この街からも出さないから」

「はぁ……まぁ、そうだよね。……わかった。レイシェ、好きに決めていいけど、何かあったらすぐに言うんだよ。あと仕事内容はしっかり確認して、わからないことがあったら絶対にちゃんと――」

『わかっておりますから、そんなに心配そうにしないでくださいまし……』


 困り顔でレイシェに言われてしまい、レインは肩を落とすのだった。

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