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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1092/1101

学園改造大作戦③

 それから、リウは学園の案内をしてもらい、ノルティアナの城へと戻ってきていた。

 戻ってきたリウは軽くルリアに聞いたことをメモすると、転移で洞窟へと向かう。

 そこは、レインが仕事をしている洞窟である。

 一先ずレインとレイシェが暮らしている位置まで転移して、リウはきょろきょろと周囲を見回す。


「家の中には……いないのね。じゃあ、ええと……あ」

「リウ? どうしたの、洞窟に来るなんて珍しい……レイシェに用事でもある? 今は研究員たちと話してるけど」

「ああ、今日はあなたに用事があるの。今、大丈夫?」

「僕に? なんかやらかしたっけ……?」


 怒られる前提のレインにリウが溜息を吐いた。

 自分への用事となると怒りに来たに違いという発想になられるのは、流石に少し不満がある。

 まぁ、そうでもないと行きたくないという気持ちがあるのは事実だが。


「別に怒りに来たわけじゃないわよ。仕事をあげに来たの」

「仕事? ……僕が魔力を使い尽くす勢いで薬を作ると、ここの魔力が尽きて薬を作れなくなるから?」

「それも少しあるけれど。私はしばらく手を付けたくな……こほん、手を付けられない仕事があるから、任せようと思って」

「ふーん……全然ごまかせてないけど。何? 喜んでやるよ」

「ルリアの国の学園に、少し私が持っている資料を提供することになったのだけれど。資料をそのまま渡して紛失されても困るし、内容を書き写してほしくて。……いい子が多くても、一人や二人くらい問題児はいるでしょうし……」

「……学生はダメなのに、僕はいいんだ」

「はぁ……面倒なところに触れるわね。この前、本を貸したでしょう。私としては、渋々だったけれど……私の管理不足も、無いわけではなかったし……」


 レインが体調不良になった際、リウはさっと本を貸してくれていたはずだが、実は渋々だったらしい。

 知らなかった事実にレインはそれもそうかと納得気味に苦笑いしつつ、続く言葉を待つ。


「とにかく! あの本、傷はもちろん無かったし、手汗とかも無かったし……丁寧に扱ってくれたのは感じたから。それが例え私の物だからというのが理由だとしても、今回のだって私の物。丁寧に扱ってくれるでしょう? ね、レイン」

「……読書、嫌いじゃないからね。まぁ、前はちょっと嫌いになってたけど……」

「あら? ……前に貸した時、嫌だった?」

「嬉しいのが大半、微妙な気持ちが少し……かな。リウに勝つために嫌になるくらい読んでた時期があって……そのまま、ちょっと嫌いになってたんだよ。今は好き。娯楽として本を読むのって楽しいね。貴重な資料読ませてくれるんだし、喜んでやるよ」

「ん、じゃあ任せるわ。ペンは用意するから……」


 リウがそこで一度言葉を区切り、瞬きをした。

 そして、万年筆を創り出し、レインに渡す。


「はい。少し、使いやすいように調整しておいたから。何かあれば適当なタイミングで教えて頂戴な」

「あ、うん……くれるの?」

「……ペン如きをあげるのに何か躊躇う理由が……?」

「……ありがとうリウ! ありがたく使わせてもらうね!」

「なんか嫌! 怖い! なんなの!?」


 大切層に万年筆を握り締めてレインが言うので、リウがぷるぷると震えながら叫んだ。

 そして、下心でも感知したら雷撃が放たれるような仕組みでも仕掛けようとレインから万年筆を奪おうとする。


「一旦返して――あっこら、逃げるな!」

「逃げてないよ? 躱しただけ」

「屁理屈! ……というより、しょうもない言い訳!! いいから渡しなさいっ、後でまたあげるから!」


 ひょいっとリウの手を躱し、そのまま万年筆を持ち上げてレインがリウの手が届かないようにする。

 全く返してくれる様子のないレインにリウは目元を引き攣らせ、ぴょんぴょんと飛び跳ねながら万年筆を取り返そうとする。


「むぐぐぐぐ……! なんで背高いの! 今の年齢、私の成長が止まった時とそんなに変わらないでしょう!? このっ、ううぅ……!」

「性別の差と、リウが特別小さいだけ。満足に食事が摂れてなかった……あるいは摂ってなかったから。だよね?」

「むむむ……あーもう! もういい、魔法でやる!」

「最初からそうすれば良かったのに……なんて、僕に付き合おうってつもりで使わなかったんだろうけど。にしても小さくて可愛いね。こんなに小さいのに女王様をちゃんとやってるなんて、なんか信じられないなぁ……」


 転移でペンを手元に移動させ、ようやくペンを取り返したリウがほっと息を吐き出した。

 しかし、レインが好き勝手に可愛いだの小さいだのと言ってくるので、眉を寄せながらペンに細工を施す。

 ぱぱっとリウがレインの下心を感知して雷撃を放つようにして、レインにペンを返した。

 しかし、レインはペンを受け取らないまま言う。


「本当に小さい……頭一つ分、いやもうちょっと? それくらい違うよね。可愛い」

「……」

「他の国の王とかに舐められたりしない? 大丈夫? それくらい小さくてかわっ」

「――調子に乗るな、ヴィレイン・アージェストリ」

「……ごめん。最近本当良くないね……こうやってからかうの……」


 軽蔑するような瞳をしながらリウが低い声で言い、レインに聖剣を突きつけると、レインはぷるぷると震える声で謝罪をした。

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