ifストーリー 楽しい学園生活㉚
それから数時間後、お家デートを堪能し、リアは自宅へと戻っていた。
家に到着し、車を降りると、そこにはリウが立っており、リアはぱあっと目を輝かせて駆け寄る。
普段なら抱き着くところだが、それをぐっと堪えてリアはリウに声をかけた。
「お姉さま! もしかして、お出迎えに来てくださったんですか!?」
「ええ。ついでに、庭師さんの様子を確認しながらね。ヴェルジアから貰った種があるでしょう? 蕾が出来たのだけれど、少し元気が無くて……見て学ばせてもらっていたの」
「ああ、そうなんですね! お花が……相談してくれたら、ヴェルジアさんに確認したのに……」
「いいのよ、なるべく頼らずに育てたいと思って。それで……リア、何を持っているの? 抱き着いてこないから、珍しいと思ったら……」
リウがそう言って、リアが大切そうに抱き締めているものを見た。
それは、可愛らしいラッピングが施された小包だった。
先ほどまでヴェルジアの家にいたことを考えると、彼からの贈り物だろうか、とリウが首を傾げる。
「あっ……こ、これは、その……お土産のお礼にって、ヴェルジアさんからもらったんです。中身は、私もまだ知らなくて。お部屋で開けようと思って……」
「ああ、それでそんなにも大切そうに抱えていたのね? ふふ……じゃあ、中に入りましょう。早くお部屋に戻って開けたいんでしょう。プレゼントなら、リアは独占したいかしら……まぁいいわ。話したいなら聞くから、その時は私のお部屋に来なさい。もちろん、一人でプレゼントを堪能しても大丈夫よ」
「お姉さま……いつもありがとうございます。嬉しくて、話したくて堪らなくなることもありますから……もしそうなったら、行きますね!」
リアが笑顔でそう言い、リウと手を繋いで家の中に入った。
どうやら両親は家にいたらしく、リアは元気よくただいまと告げて、そのまま部屋へと向かう。
「では、開けてきます!! お出迎えありがとうございましたっ、お姉さま!」
「あ、リア! 走っちゃダメ――……聞こえてなさそう……」
上機嫌に部屋へと駆けていくリアを呼び止めようとしたものの、それは叶わずリウが肩を落とした。
そしてリウは両親の方を見ると、溜息混じりに説明する。
「お父様、お母様。リアは、ヴェルジアからプレゼントを貰ったらしく……部屋で開けてくるそうです。誰かに話したくなかったら私の部屋に来るよう言ってあるので、私も行きますね」
「ああ、それであんなにもはしゃいでいたのか……はしゃぎすぎて転んだり、どこかにぶつけたりしていないといいけど……」
「そうね……あんなに楽しそうにはしゃいで……私達は戻ってきたばかりだし、あの調子で話されたら、ちゃんと聞けるかどうか……自信は無いわね。リウちゃん、リアちゃんに付き合ってあげてね」
「はい、お母様。それでは行ってきますね」
リウがそう言って軽く礼をし、ゆったりとした足取りで部屋に向かった。
そうして自分の部屋に入ると、隣――リアの部屋から、ガタガタバタバタと、騒がしい物音が聞こえてくる。
嬉しいのかそれとも恥ずかしいのか、とにかく暴れているらしい。
バフバフと枕か何かに八つ当たりをしているような音も聞こえてくる。
「あらあら……妙なものをプレゼントしていたりとか、しないわよね……?」
若干心配になりつつ、リウがこれは話をしに来そうだな、と話をするのにちょうど良さそうな駄菓子を探し、お皿に盛っておく。
そんな準備をしていると、突然隣からガチャリと音がして、続けてバタンと勢いよく扉を閉める音がする。
そして、すぐに部屋の扉が開いた。
「お姉さま!! 聞いてくださいっ、もう、もうっ!!」
「どうしたの、リア。そんなに顔を真っ赤にして……ほら、こっちにいらっしゃい。あ……扉はゆっくり閉めないとダメよ」
「あ……ご、ごめんなさい。そうですよね」
「ふふ、いい子ね。さ、こっちにいらっしゃい。一体どうしたの?」
リウがリアを呼び寄せると、リアは頷いてリウの隣に腰掛けた。
そして、リウに抱きつきながら言う。
「ヴェルジアさんが……素敵な栞をくださったんです。これ……」
「押し花……綺麗ね。何のお花なの?」
「添えられていた、メッセージカードに書いてあったのですが……千日紅というお花だそうです。それで……花言葉が、素敵だと……書いてあって。調べてみたら……花言葉は……い、色褪せぬ恋に、永遠の恋……変わらぬ愛。……こ、こんな、……うぅ〜……」
「照れて暴れていたのね? ふふ、でも嬉しいんでしょう?」
「嬉しいですよ? もちろん、嬉しいです。嬉しいのですが……こ、こんなの、プロポーズそのものじゃないですか! た、ただのお土産のお礼に、こんな物をもらってしまって……いいんでしょうか」
「気にしなくていいでしょう。ヴェルジアは、自分の気持ちを伝えたくて贈ったのでしょうから。リアは、ただそれに応えればいい」
リウがそう言うと、リアが頬を赤らめた。
そして、きょろきょろと視線を彷徨わせると、立ち上がる。
「あ……ありがとうございました、お姉さま。私……ヴェルジアさんに電話してきます。それで――ひゃぁ!?」
突然着信音が鳴り出したので、リアが肩を跳ねさせて驚いた。
恐る恐るスマホを見ると、そこにはヴェルジアの名前がある。
ぽん、と顔を赤くするリアに電話の相手を察して、リウがそっとリアの背中を押して部屋に戻らせた。
部屋に置いてけぼりにされたリアは、未だ鳴り続けるスマホに視線を落とし、恐る恐る電話に出る。
「は……はい。リアです……」
『……あ。その様子だと……プレゼント、もう開けてくれたんだね。どうだった?』
「う、嬉しいです。とっても」
『それは良かった』
ヴェルジアがそれだけ言って、口を閉ざす。
電話を切るわけでもなく、かといって他に話があるわけでもなさそうなヴェルジアに、リアは答えを求められていることを理解する。
「……わ、私……私も……っ」
『うん、リアも?』
「わ、私も同じ気持ちです!! ヴェルジアさんのバカぁっ!」
最後に力いっぱい叫んで、リアは顔を真っ赤にしながら電話を切るのだった。
次からはまた違うお話を書きます。
折角だからヴェルジアにお土産を渡すお話を書こうくらいにしか思ってなかったのに、当初の想定よりだいぶいちゃつきました。
まぁ可愛いので良しとしましょう。
次は本編軸、ルミアとリウがメインのお話。
今回も学園なので紛らわしいですが、ルミアの国の学園に関するお話です。




