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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ifストーリー 楽しい学園生活㉕

 お土産や駄菓子などの荷物を車に詰め、四人は帰るため、車で移動をしていた。

 それなりに移動には時間が掛かるので、帰りの時間も早めに設定されていた。

 自然と、遊ぶ時間だって少なめにはなるわけだが――


「……気持ち良さそうに寝てるなぁ」

「そうですね」


 リウとレイシェは、すやすやと眠っていた。

 体力はそれなりにあるはずだが、なんてことを思いながら、レインは肩に頭を預けて眠っている愛しい妹を見て目を細め、そっとその身体をずらして膝枕の状態へと変える。

 そして、その髪を撫でてやりながら、次に視線を送るのはリウの方である。

 彼女だって、体力はかなりあるはずだ。

 なのにどうしてこんなにも疲れて、やはり自分がいるから負担を掛けてしまっただろうか、なんてことを思って目を伏せる。


「……。……でも、隣か正面に座りたかったな」

「それは許しません」


 負担を掛けるとわかっていてなお小さくぼやくレインに、リアが冷めた声で言った。

 行きでは上手く騙して、レイシェにも協力してもらってリウの隣に座ろうと画策していたレインだが、それはレイシェの裏切りによって失敗に終わった。

 ならばと帰りは強行しようとしたのだが、三人がかりで取り押さえられてしまったのである。

 単純な性別の違いによる力の差でふりほどけなくもなさそうだったが、怪我をさせそうだったので仕方なく諦めた。

 軽いストーカー行為はするレインだが、怪我をさせる可能性があるならやめるという理性くらいはある。


「はぁ〜……リアは寝なくていいの? 疲れてない? リウよりは体力少ないはずなのに」

「楽しかったのは事実ですが、お姉さまほどはしゃがなかったので。あと、レインさんはお姉さまに嫌われることはあまりしないので、お姉さまほど警戒もしていなかったのもありますね。その点、お姉さまは警戒し過ぎではあります」

「……ストーカー、ちょっとしてるけどな」

「本当にしてるんですか? その……護衛さん達にバレないとは思えなくて」

「あー……うん、本当にやったのは一回だけになるのかな。バレて怒られたよ。それでリウはそれを知って、警戒するようになった。……ん、だけど……それ以降のストーカー行為は……してないわけじゃないけど、護衛にもほぼ見守られてる感じというか。嫌われたいわけじゃないから僕はリウに手を出せないし、監視はしつつ黙認されてるんだよ。距離はあるけど、堂々とリウの後ろ歩いてるし。暗い時とかに一人だと危ないから隣歩くしね」


 レインがそう言って肩を竦めた。

 本当にレインがストーカー行為をしたのは事実だが、それ以降に関しては警戒しているリウが大げさに騒ぎ立てているだけである。

 リアともレイシェとも、同級生とも帰らない時に限り、レインは距離を取ってその後ろを付いて歩く。

 リウが怖がらないようわかりやすくやっているので、コソコソもしていない。

 ストーカー行為? と首を傾げたくなるくらいである。


「ダメなものはダメですけどね。それって、おじさまとおばさまに報告したら、レインさんは怒られるんですか? 最初のストーカー行為は報告されているでしょうけど……」

「え〜……どうだろう。……あの時、説教が終わってから血を感じるって言われたし。父上か母上かわからないけど、たぶんどっちかはこういうことしてるんだよね。……こういうことしそうなのは母上だけど……どうなんだろうな……」

「えぇ……」

「怒られるか怒られないかは置いておいて、共感はされそう。あれ以降は後ろ歩いてるだけだし、話しかけもするし」


 あんまり怒られなさそう、とリアが少し苦い顔をした。

 レインはリウの悩みの種なので、ストーカー行為についてはともかく、お灸を据えたい気持ちはある。

 なのに怒られないのか、とリアが息を吐き出した。


「……まぁ。勘違い野郎ではないところは、救いでしょうか。レインさんは、お姉さまが自分のことを好いているだなんて自惚れたことは考えないでしょう?」

「リウに予想外のことされてパニックになってる時は過ぎるけど。冷静なままそういうのは……無いかも?」

「でしょうね。……引き剥がしたい気持ちもありますが、そんなことをしたら、お姉さまの唯一の同級生の友達がいなくなってしまいますからね。レインさんのこと、ちゃんと見てますから。一線を越えたら容赦しませんからね!」

「わかってるよ。……あ〜……可愛い……むにゃむにゃしてる。夢でも見てるのかな? 甘い物食べてる? ふふ、どんな夢かなぁ」


 レインの言葉に反応して、リアがリウの顔を覗き込んだ。

 すると、リウは小さく口を動かす。


「…………海……おいし……えへへぇ……」

「リウ!? 海食べてる!?」

「えぇ……」

「……甘い……ぇへ……」

「しかも甘いんですか……」

「ものすっごいベタベタしそうで嫌だな……」


 レインが顔を顰めて呟き、しかしすぐに優しい表情になると、くすりと笑ってリウの顔を眺めた。

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