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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ifストーリー 楽しい学園生活㉓

 突撃してきて、何やら質問をしてきたリウにレインが戸惑った顔をする。

 そんなレインに構うことなく、リウは言葉を続けた。


「あの、あのね! ちっちゃい缶ジュースがあるの!! これ何!? お菓子なの!? ジュース!?」

「こ、声が大きい……はしゃぎすぎだよ、ちょっと落ち着いて……な、何……? ……あ、ああ、それラムネ」

「ラムネ!? お菓子の!?」

「そう、お菓子の」

「だ、駄菓子、もっと買っていってもいい? 時間ある?」

「時間はあるよ、大丈夫。お土産も駄菓子も、ゆっくり選んで。あ、買いすぎないようにね。お土産も買うんでしょ」


 レインがそう言うと、リウがコクコクと頷いて駄菓子を見に行った。

 お土産はもういいらしい。


「僕は何にしようかなー……」

「お兄様! わたくしも一緒に選びたいですわ!」

「ん? いいよ? どんなのが食べたいの?」

「えっと、ええっと〜……甘い物! わたあめとか、前に食べられなかったものを食べたいですわ!」

「わたあめはここだね。後は……一緒に歩こうか」

「はいっ!」


 手を繋いで二人が歩いていると、リウとリアの声が聞こえてきた。

 揃って箱入り娘で、世間知らずな二人である。

 一緒にいなくて大丈夫だろうか、とレインとレイシェが示し合わせたように耳を澄ます。


「お姉さま、お姉さま。このお菓子、凄く酸っぱいみたいですよ。試してみませんか?」

「酸っぱいの……? 大丈夫……?」

「大丈夫ですよ! ……もしダメだったら……みんなに分けましょう。使用人はたくさんいますし、きっと酸っぱいものが好きな人もいますよ」

「……あ、あげられる? 大丈夫?」

「こっそり休憩室に置いちゃいましょう」

「……いいのかしら……お父様とお母様には、許可を得ましょうね……?」


 リウが困った顔をしてそう言い、小さなかごに駄菓子を入れた。

 リウももう落ち着いたようだし、一応大丈夫そうだと二人が安堵の息を吐く。

 物珍しいものばかりで、先ほどまで本当に興奮していたので。


「……大丈夫なんでしょうか」

「よっぽど苦手でなければ食べれると思うよ。酸っぱいけど美味しいから。あと悶絶するほどじゃない」

「それならいいのですけれど。あ、お兄様、わたくしこれが欲しいですわ!」

「……小さいチョコレート? ハート型……たくさん入ってるね、可愛い」

「でしょう! 可愛いですわよね!」

「……うん。本当に可愛い」


 チョイスが可愛かったので、レインがニコニコと微笑みながらレイシェのことを眺めた。

 そのままちょこちょこと駄菓子を選びながらゆっくりゆっくりと歩いていると、リウとリアと合流する。


「あ……って、大丈夫? かごがいっぱいに……重くない?」

「重くないわよ? えへへ……これ買うの。いいでしょう!」

「いいけど……お土産も買うのに、荷物になるくらい買って大丈夫なの?」

「お土産、そんなに買わないから。お忍び……というか、学生としてのちょっとした旅行だもの。親戚とかにはいらないから、お父様とお母様の分だけなの。良いものがあれば、使用人さんたちにも買いたいけれど……ご当地の大袋のお菓子とかじゃないと厳しいから……お土産って大体箱に入っているでしょう」

「ああ……それはそうだね。数が多いから、全員分用意するのは厳しいよね。じゃあ大丈夫、かな……? お土産、リアからの分もあるんだもんね」


 父と母へのお土産は、リウとリアから別々で贈るはずだ。

 となると、リウ個人が買うお土産は少ないのだろう。

 リアはヴェルジアの分があるので、少し大変だろうが。


「止まらなくなってそうだし、そろそろお会計したら? じゃないととんでもない量になっちゃうよ」

「そ、そうね。ええ……お会計してくる。二人も、あんまり買いすぎないようにね!」

「ええ、気を付けますわ。わたくしたちもそろそろ切り上げないといけませんわね……」

「そうだね。とりあえず会計時間掛かりそうだし、それまでは見てようか」

「はい。……ん、これっ……あ……わたくし、チョコレートにばかり視線が……同じものばかりはいけませんわよね。えっと……しょっぱいものも、少し欲しいですわ! 見に行きましょう!」


 レイシェに手を引かれ、レインが微笑みながら付いていった。

 一方その頃、リウとリアは、大量のお菓子のお会計をしている店主を心配そうに見つめていた。

 それなりにお年を召した人物である。

 無理をさせていないだろうか、と二人が眉を寄せて店主のことを心配する。


「ふふっ。そんなに心配しなくても大丈夫だよ、ずっとやってきてるんだからね」

「……集中が乱れるようなら、返事はしなくて構わないのですが……いつからこのお店を営んでおられるのですか? 相当古く見えますが……それとも建物が古いだけ、かしら……」


 リウが尋ねると、店主は顔を上げないまま少し考えるような声を漏らした。

 そして、少ししてから答える。


「大体、五十年くらい前かねぇ。結構昔だねぇ……」

「まぁ! そんなに長く?」

「でも、私も歳だし、経営も厳しくなってきたから……そろそろ畳まないといけないかも、ってところだったんだけどねぇ。ふふ、こんなに買ってくれて助かるよ」

「……そう、ですね。無理はできない年齢でしょうね……」

「機会があれば、いつでも遊びに来なさいね。お店が無くなっても、お二人なら住所を知ってるから。大したものじゃないけど、お菓子でも振る舞ってあげるからね」


 優しく言う店主に、リウとリアが顔を見合わせてから笑って、もちろんと返事をした。

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