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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ifストーリー 楽しい学園生活㉒

 レインとリウによるレイシェへのお叱りなどがあり、少しバタついたものの、四人は無事観光場所に到着していた。

 と言っても、ほとんどお土産を買うための時間しか残されてはいないが。


「効率悪くはなるだろうし、別れるのも手だと思うんだけど……どうする? 各自で行く?」

「お姉さまが怪しい人にふらふら付いていったらどうしてくれるんですか?」

「それもそっか。じゃあ四人で行こう」

「リア! レインもどうして納得するのっ、付いていくわけがないでしょう! 悪い人はなんとなくわかるのに!」

「悪い人だから懲らしめよう、証拠を握って通報しよう、となるのがお姉さまなので。あと甘いものに弱すぎます」


 リアが笑顔でそう言うと、リウが口を閉ざして目を逸らした。

 連絡よりも悪人の逮捕、成敗を優先してしまうのは確かだし、甘いものに釣られやすいのも自覚しているところである。

 よくレインで甘い物に釣られ、いつの間にか一緒にカフェに入っていたりするので。


「リウはリアと手を繋いでおくべきだと思いますわ。ねぇ、お兄様?」

「うん、よろしく。離さないでね、もしはぐれたらすぐに言って」

「はい、お任せください。じゃあ、先ずはどこに行きましょうか」

「……むぅ……リアは、ヴェルジアにお土産のために連絡をしていたのでしょう。何が欲しいって言ってた?」

「御当地の置き物とか、とにかく飾れるものと、良さそうなお菓子とかがあると嬉しいって言ってました」

「置き物……」


 リウが呟くと、レイシェが軽く自分の両手を重ねた。

 そして微笑むと、リウとリアに提案をする。


「わたくし、いいお店を知っておりますの! 幼い頃に家族で行ったことがあるお店で……あっ、今もやっておりますかしら……」

「……なんかあったっけ……?」

「場所なら覚えておりますわ。付いてきてくださいまし!」


 楽しそうにレイシェが先導し、しばらく歩いた。

 すると、そこには駄菓子屋の看板が掛けられた古めのお店があり、レイシェは店長らしきおばあさんに挨拶をする。


「店長さん、ご無沙汰しておりますわ! わたくしのこと、覚えておられますか?」

「こんにちは、レイシェ様。レイン様も、お久しぶりですねぇ。隣のお二人は、お友達ですか?」

「……ああ……! 置き物とか売ってたねぇ、そういえば。駄菓子のイメージしか無かった」

「レイン様は、昔は物珍しそうに駄菓子を眺めていらして……そちらに夢中になっていましたからねぇ」


 恥ずかしそうにレインが目を逸らし、咳払いをしてリウとリアを見た。

 そして、どう紹介するべきか迷うように口籠ると、曖昧な口振りで駄菓子屋の店主について説明する。


「その……この人は……この駄菓子屋の店主で。一応、親戚」

「あら……はじめまして。レインとレイシェの友達のリウと申します」

「同じく友達で、リウお姉さまの妹です。リアと申します。二人にはいつもお世話になっています」

「はじめまして。嫁入りもしたし、私は親戚って呼べるほどでもないんだけどねぇ……」

「親戚は親戚ですわっ。それより店主さん、わたくしたち、ちょっとした置き物を見に来ましたの。まだありますかしら?」

「ああ、あっちにあるよ。ゆっくり見ておいで」


 店主が手で場所を指し示すと、レイシェが頷いて早足でそちらへ向かった。

 三人もそれに続き、置き物を眺める。


「わぁ、可愛い……ご当地のゆるキャラか何かでしょうか。これは……蟹?」

「蟹がたくさん採れるからだろうね。ここの海鮮美味しいよ。今回は食べる時間無さそうだけど……」

「残念ね……私も何か、自分用に買いたいわね。何にしようかしら……」

「僕はいいかな……渡す人もいないし、そういうの飾る趣味も無いし……駄菓子見てるから、焦らず選んでていいよ。あと良さそうな土産屋探しておく」

「ありがとうございますわ、お兄様! ……んん……あ、これ……」

「チャーム? 小さくて可愛い……」

「リウが気に入ったのなら、お揃いにするのもいいですわね!」

「あ、私も! 私も入れてください!」


 楽しそうに、姦しく言葉を交わす三人にレインが目を細め、店内を歩く。

 幼い頃、ここに連れてきてもらった時は全部欲しくて堪らなかったのだが、今はそんな感情は湧き出てこない。

 今は駄菓子なんかよりリウが――なんて、妙な方向に思考がズレつつ、レインが何か買おうかと悩む。


「あの子が……レイン様の好きな子ですか?」

「えっ……よ、よくわかったなぁ……」

「姉の方でしょう、楽しそうにあの子のことを話していたから……今までは忘れていたけど、見た瞬間、すぐに思い出したんですよ。今でも好きなんですねぇ……」

「……あー。その話はあんまり……リウも、あんまりいい気分じゃないだろうし。それより店主、この辺の商品って前来た時には無かったやつ? 覚えがないんだけど」

「それは……ああ、そうですね。前は置いていなかったものですよ。買っていかれますか?」

「……じゃあ、折角だから買っていこうかな。もう少し選ぶから、待ってて……」

「――レイン、駄菓子詳しいの!? これなぁに!?」


 落ち着いた声でレインが少しだけ買い物も楽しもうと決めると、リウが目を輝かせて突撃してくるので、レインはぱちくりと目を瞬かせた。

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