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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編

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ifストーリー 楽しい学園生活⑲

 四人が席に着くと、すぐに料理が運ばれてきた。

 試食会はデザートのみのはずだが、そのお皿にはリウたちには馴染みのないもの――焼きそばが盛られている。


「これは……?」

「僕がリクエストしたんだ。立場上、リウは下手なもの食べられないでしょ? もしそれで体調崩したら大変なんてものじゃないし。お祭りの屋台とか、それこそ海の家で出るようなものとか、基本的には無理だよね。だから、食材こそ高級だし、作ったのもまぁ……僕たちに料理を出せるような人だけど……海の家で出るようなものをお願いしたんだ。どうかな。……レイシェも初めてだよね?」

「ええ、そうですわね。……そんなことを手配していただなんて、初めて知りましたわ……」

「サプライズにしようと思って。一番喜ぶのはリウだろうけど、それを嫌がる人もいないし」


 レインがそう言って全員を見回すと、リウは思った通りキラキラと目を輝かせていた。

 リアは案外興味深い表情をするわけでもなく普通に料理を眺めていて、レイシェは不思議そうに焼きそばを眺めている。


「リアは何か……反応が普通だね。見たことあるの?」

「ヴェルジアさんがお昼に食べていて、一口もらったことがあります。少し味が濃いめでしたけど、美味しかったですよ。入ってるものがちょっと違いますね」

「リア、ずるい……! 私もそういう民衆的なものとかたくさん食べてみたい!! 他には?? 他には何か食べてた??」

「私たちに馴染みのないもの……うーん……フランクフルトとか……? 気になって見ていたら、ヴェルジアさんが買ってくれたんです。美味しかったです」

「ずるい〜〜〜! そういうの、私は食べられないのに! 例え他の要因があったとしても、体調不良になったりしたら迷惑掛かっちゃうからぁ……なんでリアは食べれてるのぉ……」


 本当に悲しそうにリウが言うと、リアが苦笑いした。

 そして、料理が冷めてはいけないので焼きそばを口に運び、飲み込んでから言う。


「あ、美味しい……こほん、ヴェルジア以外私がそんなものを食べたと誰も知らないからですね。誰も知らなければ、体調不良になったとしても、食中毒とかの疑いはどこにも掛かりません」

「でも……誰かが見ているんじゃないの?」

「ヴェルジアの家でカーテンを閉め切って食べています」

「……ずるいぃ……」

「お姉さまだってカフェには行くじゃないですか」

「いつも大体何故かレインが一緒にいるから、いざという時はレインに責任を取らせればいいの。変なものを盛られたってことにするから」

「冗談でも僕の人生を終わらせようとしないで? 許可もらってるよね?」

「じ、事後承諾の時もあるけど」


 リウが目を逸らしながら言うと、レインが苦笑いした。

 父と母が許可しているのなら、一応は大丈夫だろうとレインが食事に手を付ける。


「ほら、リウも食べないと冷めちゃうよ」

「あ、そうだった……! ……ん!」


 未知の味にリウが目を丸くし、口元を押さえた。

 そして、楽しそうに頬を緩めると、レインに視線を向けて微笑む。

 リウはレインのことは嫌いだが、折角自分のためにここまで手配してくれたのだ。

 きっと、今日この日のために奔走してくれたのだろう。

 ならば、ちゃんとしたお礼をするべきだ。


「ありがとう、レイン。あなたのそういうところは好きよ」

「んぐっ、……ん、ぐ……っ、…………ひ、人誑し……もう聞いてないし……」


 噴き出しかけてレインが気合で口の中のものを飲み込みつつ、照れながらリウを睨んだ。

 お礼を言うだけ言って満足したリウは、既にレインのことを見てすらいない。

 折角ここまでしてくれたんだから、じっくり味わわないと――なんてことを考えている顔をしている。


「……はぁ。レイシェ、苦手な味じゃない? 大丈夫?」

「美味しいですわ。でも、不思議なんですの。お兄様は、誰かがリウに相応しくないものを食べさせたりしたら、とてもお怒りになるでしょう? なのに今日は、お兄様が……その……庶民的な食べ物を」

「食材はリウに相応しいし、料理した人も信頼が置ける。だからいいんだよ」


 レインは微笑むと、ちょこちょこと会話をしながらも食事に集中し始めた。

 しばらくして全員が食べ終わるとお皿を下げられ、緊張した面持ちでスーツ姿の男性が近付いてくる。

 ガチガチに緊張している様子だ。


「お……おお、お初に、お目に掛かります……ほ、本日、海の家で商品としてお出しする、新しいスイーツの……そ、その……」

「こっちで諸々の説明はしてる。急遽予定を変更し、人数を増やしたのはこちらだし、説明は省いてもらっても構わない。形式的な説明が必要なら、僕がやっておくよ」


 頭が真っ白になっていて、上手く言葉が出てこない様子の男にレインがそう声を掛けた。

 当初は、試食会に行くのは父の代理であるレインのはずだった。

 子会社のものなので親会社の社長が試食をするというのもおかしな話ではあるが、会社の者は大体慣れている。

 レインも目の前の男には見覚えがあるので、レイン一人なら緊張しなかったはずだ。

 だが、細心の注意を払い、失礼のないよう接する必要がある人物が、急遽四人に増えてしまった。

 仕方の無いことだ、とレインが男を下がらせる。


「さて。一応、形式的に……あと、振り返りも兼ねて、僕から今回の試食会について軽く説明させてもらうね?」


 レインの言葉に三人が頷き、静かにその言葉に耳を傾けた。

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