ifストーリー 楽しい学園生活⑱
それから、お昼の時間まで四人は砂浜で過ごした。
レインとレイシェはビーチチェアの上でリラックスしながら太陽光を浴び、リウはその近くで精巧な砂の城を作っている。
リアはお城の装飾集め担当である。
また、レインはくつろぎながらもじっとリウがお城を作る様を眺めている。
ぺたんと座り込み、楽しそうにお城を作る姿が見ていてとても微笑ましいので。
「むぅ……ねぇリア、ここ、なんだか飾り気がないと思わない? 寂しい感じがする……」
「そこですか? うーん、飾り……隙間が小さいから、貝殻とかは厳しいですよね。シーグラスとか探してみましょうか? 位置的には、兵士さんとかいそうな……」
「……あっ! じゃあ、兵士さんを作りましょう!」
「兵士作るの? その隙間に?」
「ええ! いたらいい感じになりそうなの!」
「それは……そうだけど。難しくない? せめて細い木の枝とか……」
「できた! 見て、綺麗にできたでしょう!」
「えっできたの!? どこ!? どれ!?」
とても小さな隙間に兵士を作るとリウが言い出したので、それは難しいだろうと思いながらレインが見守っていると、リウがとても満足そうにできたと言うので勢いよく立ち上がった。
そして、城の正面へと回ると、本当にそこにあった兵士に目を丸くする。
「何がどうなったらこうなるの……」
「へ、下手?」
「逆だよ逆、これが下手なわけないでしょ……えぇ……可愛いのにちゃんと鎧あるし……レイシェも見ない? 凄い、撮っていい?」
「完成したらね! あと、私は写しちゃダメだから!」
「これで完成してないの? え? 嘘でしょ?」
「これで完成なんて、それこそ嘘でしょうっ。まだ模様だって付けてないのに!」
「模様付けるんだ……手伝ってもいい?」
「うん!」
お昼に間に合いそうにないので、レインが手伝いを申し出て、模様付けを行った。
線が上手く引けなかっただけでしょんぼりしてしまうリウを宥めたり、レインが線を引くのに失敗すると嬉しそうにコツを何度も説明するリウに付き合ったりと、紆余曲折あったもののお城は完成し、記念撮影が行われる。
途中でレイシェも加わっていたので、全員で一度手を洗いに行き、海の家へ向かう。
「ねぇ、レイン。ここって、プライベートビーチよね? どうして海の家があるの? 昔に来た時は、別荘で食事をした記憶があるのだけれど……」
「うん。一応、近くに別荘はあるんだけどね。ただ、母上は雰囲気を重んじるから、一応海の家もあるんだよ」
「ふぅん……ここって、おじさまが買ったの? それとも、おじさまの代へ受け継がれたの?」
「えっと、父上が母上のために買ったんだったかな。何度目かのデートで……ここで告白をしたとか」
「まぁ! そう、おじさまが……ふふふっ」
レインの父と母の思い出の地であることを知り、リウが楽しそうに笑った。
しかしそんな場所ではしゃいでしまっていいのか、なんてことを思ってしまい、リウが軽く目を伏せる。
トン、と後ろから手が触れて握り締められ、リウが微笑むとそこにはリアがいた。
「お姉さま、気にしすぎですよ。美味しい食事とデザートが待っています!」
「……そうね! ええ、全く以てその通りだわ。ここを私たちに貸してくれたのも、おじさまとおばさまのご厚意でしょうし。申し訳なく思うより、それに応えてちゃんと楽しむ方がいいわよね! ふふっ……みんな、早く行きましょう! 海の家って、行くの初めてなの!」
「試食会とは別でかき氷とか食べる?」
「かき氷! ……入りそうなら!」
食べたかったので、リウが元気よくそう答えた。
試食会で食べるものの量がわからないので何とも言えないが、食べたい気持ちはあるらしい。
レインが目を細めて微笑み、海の家へと全員を案内する。
「はい、ここだよ。もう準備できてるらしいから、早く入ろう」
「ええ……! あ、涼しい! これ扇風機? 初めて見たわ!」
「初めて見たの……? ……まぁ、それ、雰囲気作りの飾りみたいなものなんだけど……」
「そうなの? どうして?」
「元々空調完備だから。たくさん置かないと夏場は暑いしねー……室内とはいえ、下手したら熱中症になる。でも、飾りだとしてもリウはこういうの好きでしょ。普段は使わないから別のところに利用されてるんだけど、今日はこっちに置いてもらったんだ」
「ここ最近暑いものね。ふふ、ありかとう。でも迷惑が掛かっているのなら、そこまでしなくてもいいのよ」
リウが楽しそうにしながらも苦笑いして言うと、レインが首を横に振った。
そして、リウたちを席へと誘導しながら説明する。
「別のところって言っても、ここの休憩室だから。普段使わなくても定期的な管理は必要だし……ああ、今日に限り休憩も今日はこっちでするよう言っておいたから、心配しないで」
「……お金、使ってない……?」
「僕とレイシェもそうだけど、リウとリアだって名家のお嬢様なんだから、全くお金を掛けずにっていうのは無理があるんじゃない?」
「……むぅ」
リウが軽く唇を尖らせ、リアと手を繋ぎながら席に座った。




