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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ifストーリー 楽しい学園生活⑰

 パシャパシャと、軽く水を掛け合ってリウとリア、そしてレイシェが戯れている。

 絶え間なく続く水の音と、笑い声。

 そして、それに紛れるように、パシャリとシャッター音が鳴る。


「……ふ、ふふ」


 レインである。

 一人砂浜に立ち、レインはただただ三人の写真を撮っていた。

 水着姿のリウ一人だけが映っている写真を持ってしまうと心臓が爆発するので、絶対に全員が映るように写真を撮っている。


「……こんなもんかな。よし……混ざるか」


 レインがそう言って肩を竦め、荷物を置きに行ってから海へと入っていく。

 三人は水を掛け合うのをやめて、手を繋いでくるくると回っていた。

 どんな遊びなのかはよくわからないが、楽しそうなのでレインが頬を緩める。


「何してるの? 混ざっていい?」

「あら、レイン。何してたの? ずっと砂浜でこっちを見ていたみたいだけれど……写真撮影とか、していないわよね? 後でスマホ確認してもいい?」

「ダメ。変な写真いっぱい入ってるから……」

「変な写真って何!?」

「変な虫の写真とか、心霊写真とか、あと今会社関係の書類の写真入ってるかも」

「虫!? 心霊!? 心霊っておばけ!?」

「うん、おばけ」

「見ない見ない見ないっ、見せないで! でも私の写真は撮っちゃダメ!」

「はいはい、わかったから……で、混ざっていい?」

「ダメ。あのね、後でもう少し奥から誰が一番浜辺に着くのが早いか勝負してみようって話になったの。そっちなら混ざっていいわよ。……うぅ……嫌な話聞いた。なんでそんな写真……消しちゃえばいいのに……」


 ちなみに、写真に関しては心霊と虫は嘘である。

 書類は少しだけ入っているが、見られても特に問題の無いもの。

 他にはリウの写真やレイシェとのツーショットくらいしか撮っていない。

 が、もちろん見られるのは都合が悪いので、適当にリウが苦手なものを挙げて誤魔化したのである。

 すぐに誤魔化されたリウにレインが目を細めつつ、何かトラブルがあった時に対応できるようにレインが三人が遊んでいるすぐ近くで軽く泳いで身体を動かす。


「んーっ! そろそろ、お兄様のことも混ぜてあげましょうか! お兄様、こちらですわ! 勝負しますわよ!」

「……さっきから思ってたけど……それ、実質僕とリウの勝負になるだけじゃない……?」

「むっ……わたくしとリアを舐めないでくださいまし! 知っておりますでしょう!」

「成績が良いのも、運動神経が良いのも知ってるけど。それがどのくらいなのか把握してるからこそ言ってるんだけどね……まぁいいや。勝負に熱が入りすぎて注意を疎かにしないように。誰かとぶつかったら負けにする?」

「うーん……そうですね。ぶつかった方だけ負け、ですよね? 自分を犠牲にしてあなたを退場させても良いのですが……」

「そういう危険行為をするからぶつかった方だけ。ぶつかられた方はお咎めなし。判断が難しければ両方……かなぁ」


 レインがそう言いながらリウに視線を移すと、リウが頷いた。

 そして、もう少し奥の方へと移動しながら楽しそうに微笑む。


「勝負事、好きなの。手、抜かないでね? ……水着姿なのは嫌だけど」

「もう一回、もう一回最初の」

「最初の……? 勝負事……?」

「もう一個後!」

「勝負事……好き――あっ!? このバカレイン、いっつもこういうことするんだから! 砂浜で引き摺り回してあげましょうか!?」

「わっ、そ、そんな怒らなくても……ほら、リウの好きな勝負だよ! 早くやろう!」


 レインが頬を引き攣らせながらそう言うと、リウがぷくりと頬を膨らませた。

 しかし、しっかりと位置に付くとそわそわしながら全員の準備が終わるのを待つ。

 全員が位置に付くと、リアが高らかに声を上げた。


「じゃあ、準備はいいですか! 用意〜……スタート!」


 そんな開始の合図とともに、全員が泳ぎ始めた。

 リアとレイシェが身体を動かし、前へと進んで――あっという間に、リウとレインが遠ざかっていく。


「……え、えっ……? 速……え、速すぎませんか!?」

「か、勝てるとまでは思っていませんでしたけれど……まさかこんなにも……。……リア、次元が違いますわ……二人で、どちらの方が早いか、ちゃんと勝負いたしましょう?」

「そ……そうですね。残念ですが……そうしましょうか。あ、ずるいですよ! 待ってください!」


 和やかに会話をし、二人が勝負を再開した。

 そして、丁度その頃――リウとレインは、結構な距離があったにも関わらず浜辺に到着していた。

 言葉を交わす余裕もなく真剣に勝負を行い、砂浜に上がった二人。

 その表情は、対照的だった。

 一方は、唇を噛んで悔しそうにしており、もう一方は余裕綽々に腕で顔を拭っていた。


「リウ、タオル持ってくるね。顔は拭きたいでしょ」

「……いらない。うぅ……負けたぁ……」


 勝者はレイン、そして僅差ではあったものの、負けてしまったのがリウだった。

 リウは拗ねたように目を逸らすと、ぶつぶつと負け惜しみを呟く。


「身長的に不利だっただけなの。レインは腕も長いから……」

「まぁ、実際それはあるだろうけどね。はいタオル」

「………………ありがとう。うぅ〜……挽回したいけど、また一緒に海に遊びに行くのも嫌……」

「リウもこういう水着にしたら? リウなら別にこういうのでも可愛いと思う」

「折角可愛いんだからって、リアにもお母様にも、使用人にまで反対されちゃうの。……強制されてるわけでは、ないけれど……」


 そう言って、リウが肩を落とした。

 そして、意識を切り替えると、負けは負けだからと嫌そうに勝者であるレインを褒めようとする。

 と、丁度その時、リアとレイシェが到着した。


「〜〜ッ、私の勝ちぃ! です!」

「っ……ぷはっ、はぁっ……わたくしが最下位、ですわね。どうにか、巻き返せると思ったのですけれど……」

「そうはさせませんよ! ふふ……楽しかったです。また勝負しましょうね」

「ええ、もちろんですわ!」

「……お疲れ様、二人とも。……私も、負けちゃった。はぁ……おめでとう、レイン……」

「ありがとう。リベンジ待ってるよ」

「うん……いつか、レインよりも身長が高くなったら……絶対勝てると思うから」

「そ、それはちょっと厳しいんじゃない……? 工夫して勝とう、ね?」


 至って真面目な顔でリウが言うので、レインが困った顔をしながらリウを窘めた。

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