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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ifストーリー 楽しい学園生活⑯

 それからしばらく車で移動し、四人はちょっとした高台から海を眺めていた。


「……綺麗ね」

「はい。お姉さまが。撮影会しますからね」

「本当に可愛い……」

「もう、皆様。リウもお綺麗ですけれど、海もちゃんと見ましょう? ほら、太陽の光を反射していて、とっても綺麗ですわ!」

「私の味方はレイシェだけなのかしら……撮影会、するなとは言わないけれど……あんまり何枚も撮らないでね。あと、レインは撮らないで。リアの判断で写真を送ってもらうのはいいけれど」


 自分の手で撮影をすることは禁止されてしまい、レインが肩を落とした。

 しかしすぐに気を取り直すと、リアに耳打ちをしてリウに聞かれないように提案を行う。

 そんなレインを呆れたように眺めて、リウが海へと視線を戻した。


「あっ、お姉さま! 帽子、忘れていますよ!」

「あ……そうだったわね。ちゃんと被らないと……」


 リアから麦わら帽子を受け取ってリウが被ると、パシャリと音がした。

 目を丸くしたリウがそちらを向くと、リアが写真撮影を行なっていた。


「……リア。勝手に撮らないで……」

「ごめんなさい、お姉さま。でもほら、すっごく綺麗だったんですよ。風もいい感じに吹いてワンピースの裾がはためいていますし、お上品に帽子を押さえていて……!」

「うぅ……撮るならせめて、集合写真も撮りましょう……?」

「あ、じゃあ運転手に頼もう。あと、集合写真は僕も撮っていいよね……? ……あ、いや、代表で撮って全員に送ろうか? そしたら、全部同じ写真で……同じ思い出を共有できる感じがする」

「あら……良案ね、ならそうしましょう。まぁ、あなたの提案というところが気に食わなくもないけれど」

「ふふ、やった。じゃあ運転手、これで撮ってね。ぶれたりしなければそれでいいから」


 リウが少し厳しい目をしてレインを見てから、リアの隣に立った。

 そして、カメラのレンズに向かって微笑みかける。

 パシャ、と音がして撮影が行われ、四人が運転手に駆け寄った。

 全員で写真を確認すると、海を背景に全員がちゃんと綺麗に笑っている。

 目を閉じているということもなく、完璧な写真だった。


「おお……良い写真。帰ったら飾ろう……」

「後でちゃんと送ってね。じゃあそろそろ、海に……」

「お姉さま? そこでポーズ、ちゃんと取ってくださいね?」


 撮影会を嫌がってしれっと三人を海へと誘導しようとしたリウだが、リアに見破られてしまい唇を尖らた。

 嫌だが、最愛の妹がそこまでやりたいというなら仕方がないと、リウが腹を括って撮影会に応じる。

 十分ほど撮影を行い、満足した三人は、少し疲れてしまった様子のリウを支えながら海へと向かった。



 水着になり、四人が改めて砂浜で合流した。

 着替えはそれぞれ個室だったため、同性だろうと全員そこで初めて水着を目にしたわけだが――


「リウが可愛すぎる。なにそれ。可愛い」

「リウ、あまりひらひらがたくさん付いているものは着たがらないのに……」

「ですよね! お姉さま、可愛いですよね!!」

「うるさい……な、なんでそんなみんなして……うぅ、足元が落ち着かないぃ……」


 足まで隠せるタイプの水着はあまりなく、リウが頬を染めて足を擦り合わせた。

 腕もリウとしては完璧に隠せているわけではないのだが、さっきまでもノースリーブを着ていたのであまり気になってはいない。

 白のひらひらとしたワンピースのような形の水着である。


「大丈夫です! 自信持ってください! お似合いです!」

「写真撮っていい?」

「絶対ダメ! あなただけはダメ! あなたが私の写真を持ってるって思うだけでも寒気がするのに!」

「なんかちょっと酷くない? リウ?」

「ううぅ……どうせ特注なんだから、裾を長くしてくれてもいいのに! なんで隠せないの!」

「危ないからじゃない? スカートに拘るならだけど、やっぱり可動域が減るし……」

「……レインのくせに、正論を言わないで!」


 リウが理不尽なことを言い、ぎゅっとリアに抱きついた。

 そうして少し落ち着くと、咳払いをして尋ねる。


「それで、先ずは遊ぶの? 泳いでいい?」

「うん、いいよ。お昼頃になったら昼食とデザートを食べるから、そこで試食会ね。リウ、あんまり一人にならないでね? 広いから、もし何かあったら……」

「わかってるわよ。海で万が一のトラブルなんてものがあったら困るものね。……困るなんてものではないけれど」

「わかってるならいいんだけど、ほら……リウは……」

「私は?」

「はしゃぎすぎると、全部忘れて飛び出していきそうだから……心配になって」

「そう」


 リウがそう言ってチラリとレインの格好を見た。

 ラッシュガードを着ていて、上半身の露出はリウよりも少ない。

 自分が照れてしまうから、その気遣い故だろうか、とリウが首を傾げる。


「な、何?」

「男の人はみんな、水着は下半身しか着ないものだと思ってたから……」

「ああ……リウ絶対照れるし、日焼けもしたくないし……普通に肌あんな出したくないから。……一回めちゃくちゃ距離取られたことあるし」

「あったわね、そんなの。いつだったかしら……お父様とお母様が、一緒に海に行きましょうって言って……おじさまとおばさまも一緒で。レインも、レイシェもいたはずね。それで……うん。も、もうこの話は終わりにしましょうか」

「僕とか父上とかが上半身裸なことにびっくりして泣いて、ずっと砂浜で縮こまってたよね」

「……私、暑いから泳ぐ……」


 リウが目を逸らしてそう言い、ぱたぱたと海の方へと走っていった。

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