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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1071/1102

レイン、行動を禁止される⑧

 体調が悪い中、応急処置を受けながらレインがリウからのお叱りを受け、ぷるぷると震えていた。

 その目の前では未だにリウが腕を組んで立っており、怒ったように眉を寄せている。


「……も、もう、許して……充分謝ったし、感謝もしたよ……?」

「それを決めるのはこっち。動いたことによって広がった魔力の器の穴は、塞いだままにしておくけれど……魔力の器というのは、傷が付いたら大変なの。だから動いちゃダメってあんなにも言ったのに……少しくらいは動いても大丈夫なら、わざわざ窓なんて設置しないわ」

「り、リウぅ……でも、水……」

「情けない声出さないで。水はまぁ……汗も掻いて、水分も失っていたのでしょうし。そこを責めるつもりはないけれど……どうして体調が悪いって感じていたのに無理に動いたのかって言ってるの。私はそこを責めてるの。わかった?」

「……水、もらってもいい……? 今……」

「ああ……はい。自分で飲める?」


 リウの言葉にレインがこくりと頷き、コップを受け取って水を飲んだ。

 そうして水分補給をしたあと、レインはそっとリウを見て、しょんぼりと肩を落とす。


「……リウ……ご、ごめん。全然、周りが……見えてなくて……」

「はぁ。……ええ、反省したならいいわ。じゃあ次はディライトね、どうしてレインが倒れ込むまで駆けつけなかったの?」

「う……!? ぼ、ボクまで怒られるの〜……?」

「当たり前でしょう、次が無いように叱っただけで、別にレインはそんなに悪くないもの。命に関わるから、体調が悪い中でも叱ったの。ここまで言えば次があっても思い出してくれるでしょう。で、ディライト。どうしてなの?」


 リウが改めて尋ねると、ディライトが頬を引き攣らせて目を逸らした。

 そんなディライトを見て、リウはにっこりと微笑みながらディライトに詰め寄っていく。

 起きていたのなら、歩き出した時点で駆け付けて止められるはずだった。

 なのにどうして、とリウが優しい微笑みを湛えながら問う。


「……だ、だってぇ〜……ま、マリーツィアが……本当に大丈夫なのかって、騒ぐから……疲れちゃって……」

「本当に?」

「……」

「ほら、ディライト。私の目を見て、もう一度だけ言って頂戴な。どうして駆け付けるのが遅れたの?」

「……」


 ディライトが何も言えずに黙り込んだ。

 やっぱり嘘だった、なんてことを思いつつ、リウがじっとりとディライトを睨む。


「……ま、マリーツィアが騒いでたのは嘘じゃないよ!」

「別にそれで疲れてすぐに駆け付けられなかったわけではない、と。じゃあどうして? わざわざそんな嘘を吐いたということは、何かやましいことがあるのかしら? それとも怒られたくなかっただけ?」

「……うぅ〜……。……ぼーっとしてただけ……」

「本当に?」

「これは本当! だから言いたくなかったんだよ、考え事してたとかじゃないから!」

「……あら、嘘は吐いていなさそうね? ふーん……ただ、ぼーっと……そう、そうなのね。それで歩いたら命すら危険に晒されるレインを歩かせたのね」

「お、怒ってる……言い方ぁ……」


 ディライトがそんなことを呟きながら距離を取ろうとすると、リウがガッとその肩を掴んで捕獲した。

 逃がすつもりはないらしい。


「ま、待って、リウちゃん! 仕方ないことだと思わない!? いやね、もちろんレインくんよりボクが悪いよ! レインくんのために起きてたのにすぐに駆けつけなかったんだしね! でもほら、ボクはほとんど付きっきりでレインくんのお世話してたんだし、疲れてて当然だよね!?」

「疲れてたのなら私かヴェルジアにでも任せて寝れば良かったのに。あなたと同じで、私もヴェルジアも睡眠が必要なわけではないわ。まぁ、ヴェルジアはリテアがいるから、リテアの要望で離れられない可能性はあったでしょうけれど。私は空いているし……そもそも、研究のために起きていたから。レインの治療はなるべく早めに終わらせたかったもの。……あなただって、知らなかったわけではないでしょう? あなたが自分で監視しておくって言うから、あんまり気を払ってなかったのに……」

「ふ、ぐっ……うぅ……」


 ディライトが目を逸らして唸った。

 それにリウは溜息を吐くと、その額に強めのデコピンをしてレインの表情を覗き込む。

 レインは既に眠っていた。

 顔色は少し悪いが、表情は辛そうではないので、一先ずはこれで大丈夫だろう。


「……寝てる間、辛くはないのなら……起こすわけにはいかないわね。ディライト、今から用事はあるかしら」

「……あ、あるよ!」

「無いのね。すっごくわかりやすい……ならお城にいらっしゃいな、ちょっとだけ怒るから」

「怒らないでよ〜……」

「怒るわ。あと念の為診察もさせてね、たぶん大丈夫だとは思うけれど……ぼーっとしてたんでしょう。移っていた可能性もあるわ」

「……は〜いはい、わかったよ〜……行けばいいんでしょ……」


 少し拗ねながらディライトがそう言い、リウの言葉に従ってリウの城に転移した。

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