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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1068/1102

レイン、行動を禁止される⑤

 夕方頃。

 食事と水分補給以外には何もさせてもらえず、レインが退屈していると、扉が開いた。

 そこからはディライトにレイシェ、そしてリウが入ってくる。


「リウ!? 来てたんだね! 仕事は? 大丈夫なの? 書類でも持ってきてくれれば手伝うよ? 暇過ぎて死にそうだからね!」

「騒がしい……なるべく動かないでって言っているでしょう。身体も起こさないでほしいのに」

「食事のためにどうせ起こすんだから、何度も起こすよりずっと起こしてた方がいいと思う」

「……それで大丈夫なら、それでもいいのだけれど。元気そうね?」

「痩せ我慢もちょっとしてるけど、うん、結構元気かな。必要なら動ける」

「全然必要じゃないから動かないで。退屈なのはわかっているけれど、絶対ダメよ。……さて、レイン。昨日も軽くは説明したけれど、私の魔力をあなたに馴染ませるのに時間が掛かるの。本来はあなたの魔力を使って器の一部として馴染ませるのが手っ取り早いのだけれど……魔力の器って、別に魔力でできてるわけじゃないし。レインの魔力は元から聖属性だから……どうなるのかわからない。リスクは取りたくないのよ」


 はぁ、とリウが面倒そうに溜息を吐き、綺麗な水晶を取り出した。

 小さな水晶の中ではキラキラとした光が輝いており、レインは首を傾げる。


「んん……? ちょっと……見える、かな。それって……魔力が入ってる?」

「なんで魔力を使えないように封印したのに魔力が見えているのか知らないけれど、そうよ。私の魔力と、昨日保管しておいたあなたの魔力」

「見えるものは見えるんだからしょうがないでしょ。……って、僕の魔力? え? いつの間に?」

「会話の最中に。とりあえず、様子を見ながらここに私の魔力とレインの魔力を少しずつ入れていって、それを器の修復に使おうと思うの。いい? 時間が掛かるのだけれど」

「まぁ、そんなに体調は気にならないし、それはいいんだけど……」

「……はぁっ。本当は、ずーっと寝たきりでいるのが一番いいのに。あなたは私の奴隷だし、行動そのものも禁じてもいい?」

「……リウは、ほら……もう人間じゃないから、すっかり失念してるんだと思うけど。少しも歩かないっていうのは不可能だからね?」


 不満そうに行動ごと禁止したいと言うリウに、じっとりとした視線を向けながらレインがそう言った。

 するとリウはそれを退屈すぎてという話だと受け取ったらしく、更に不満そうにレインを睨む。

 それを見たレイシェがそっとリウの手を取って、困ったように微笑んだ。


『……あの……リウ?』

「なぁに、レイシェ」

『お兄様のお話は……本当に、我儘とか、申し訳ないとかではなく。その……』

「レインくん一応人間だよね? 本当に一歩も歩いちゃダメならベッドで漏らすことに――」

「おいディライト言い方。リウとレイシェの前で……ほら、リウ固まってるし。レイシェもごめんね、ディライトがなにも飾らない言い方して……もっとこう、遠回しな言い方があるでしょ。その言い方されるの嫌なんだけど」


 レインがそう捲し立てながら睨むと、ディライトはすっと目を逸らした。

 からかうためにわざととても直接的な言い方をしたらしく、レインは深い溜息を吐く。


「……ご、ご、ごめんなさい。その、うっかり……失念していて……そ、そうよね。そう……よね、うん。レインは、お水もご飯も食べないといけないんだから。当たり前、だったね…………」

「口調まで素になっちゃった……いつも頑張って王妃殿下の真似してるのに……」

「えっ!? な、なんで知っ……真似してない! これは自然な変化なの! う〜、うぅ〜っ……」

「涙目にならなくても。そこを失念するのはしょうがないから、仕方ないよ。ね?」

「……うん……」


 涙目で、しょんぼりしながらリウが頷いた。

 そして、気を取り直すようにパチンと軽く自分の頬を叩くと、リウが水晶を掲げる。


「……まだ、足りない。けど……体内に馴染ませるのだって時間が掛かるし、少しずつ進めていくわね。今日のところは、まだ少し魔力同士が馴染みきっていないから……あなたの体内にある私の魔力を、入れ替えておきましょう。この応急処置が馴染み切ったら良くないわ。額に触れるわね」

「あ、うん。……馴染み切っちゃダメなのは、なんで?」

「無理矢理魔力の器の穴を埋めただけだもの。このまま馴染んだら、色々と支障をきたしてしまうわ。魔力が循環しづらくなるとか、そもそもの魔力量が減るとか、外に放出するのもやりづらくなったりだとか。所詮は異物で無理矢理穴を塞いでいるだけなの。傷口に木でも捩じ込んで塞いでいるようなものね」

『た、例えが凄く痛そうですわ……』

「ボクやったことあるよ〜。敵に」

『ひぅ!?』


 わざとレイシェを怖がらせて遊んでいるディライトをレインが睨んだ。

 嘘には聞こえないので、実際にあったことなのだろうがわざわざ言わなくてもとリウもじとりとディライトを見る。


「……ん。応急処置はこれで大丈夫よ。これも器の修復に使いましょうか。……ディライト? あまり、レイシェを怖がらせないで頂戴ね」

「泣かせたら殴る」

「……レイン、動くのはダメよ……?」


 真顔で殴ると宣言するレインに、リウが困ったようにそれだけ言った。

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