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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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レイン、行動を禁止される④

 そして翌日、レインが目を覚ますと、その身体が鎖でベッドに拘束されていた。

 昨日、眠るまでは何もなかったはずだ。

 レイシェが眠ったことも確認済み。

 リウの応急処置のお陰で随分と楽になったから、それを把握する程度の余裕はあった。

 それなのにどうして寝ている間にこんなことに、とレインが困惑する。


「……れ、レイシェ……?」

『ここにおりますわ、お兄様』

「あ、うん……こ、この状況は……?」

『昨日……お兄様、リウの言いつけを破りましたでしょう? ですから……ディライト様にお願いいたしましたの』


 にっこりと可愛らしく微笑むレイシェに、レインが頬を引き攣らせた。

 レインがリウの言いつけを破ったのは、事実である。

 楽になったからと、たった数歩だけの距離を歩いて、自分で水を飲んだだけだが。


『お兄様。リウは、命に関わると仰いました。動かないべきですわ』

「あ、あれは……だって、ほら、レイシェだってずっと僕の世話なんかしててもつまらないだろうし、大変でしょ? だから……自分で水を飲みに行っただけなんだけど……部屋にコップと水差し置いておいてくれたし……リウに逃げないように言われたし、逃げるつもりはないよ。あんまり。だから……数歩くらい……」

『ダメですわ』

「……。……わかったよ……それで、これをした当人は?」

『お兄様の朝食を作ってくださっておりますわ。ついでに、わたくしのも作ってくださるそうですの!』

「……そっか。お礼……」

『そういうのは治ってからにしてくださいまし。でないと怒りますわ。ディライト様も、大丈夫だと遠慮していらっしゃいましたし』

「……僕相手なら、遠慮しないくせに……」


 レインが溜息混じりにそうぼやいた。

 拘束されていて何もできないので、レインがただただ天井を眺めてどうせ聞かれるだろうからと今の症状について整理しておく。


「……昨日よりは……というか、応急処置を受けてから……体調は、結構いいな。普通に動けそう……」

「ダメだよ〜?」

『ダメですわ』

「……動くつもりはないってば……」

「ふ〜ん? ……熱とかは大丈夫そうだね〜? 微熱があるかどうかくらい……かな〜。食欲はどう〜?」

「……何か……ディライトにこんな感じでお世話されるの、変な気分……食欲はまぁ、そこそこ? あんまりお腹空いてる感じはしないけど、別に食べたくないってことも無いかな……出されれば食べれる。ある程度はね」

「レインくん、体調不良のまま動くの慣れてるでしょ……多少はしょうがない部分もあるかもしれないけど、慣れすぎちゃダメだよ〜。とりあえず少なめに盛るね〜」


 呆れながらディライトがそう言い、去っていった。

 どうやらどれくらい料理を盛るべきか迷って、様子を見に来ていたらしい。

 レインは料理の盛り付けまで終われば拘束は終わるだろうか、なんてことを考えながら、レイシェの方を見る。

 レイシェは、ぷっくりと頬を膨らませてじっとレインのことを見つめていた。

 それにレインは驚いて目を丸くすると、優しい表情で尋ねるを


「どうしたの、レイシェ? そんな不満そうな顔して……」

『どうしたではありませんわ。体調不良のまま動くのに慣れてるって……そんなの不健全ですわ!』

「……レイシェだって経験あるでしょ? やむを得ず、休みたくても休めずに、頭を働かせて、身体を動かして……辛くても、仕事を続けてたこと。何度も転生してるから、そういうことも多いんだよ。あと単純に一応は死に慣れてるからそっちの苦しみを連想すると和らいだりはする。別の苦しみは襲ってくるけど」

『むぅぅ……っ』

「今回は動かない。レイシェにもこんなに心配されて、リウからも動かないようにって強く言われて……あと、ディライトに迷惑掛かってるし。あんまり借りを作りたくないし……」

「レインくん?? 借りなんかあったところで、ボク何もしないよ〜?」


 すぐに戻ってきたディライトがじっとりとレインを睨みながらそう言い、机に料理を置いた。

 そして、不満そうにしているレイシェに声を掛ける。


「レイシェちゃん、向こうの部屋に料理あるから食べておいで〜。レインくんのことはボクが見ておくよ」

『まあっ。ありがとうございますわ、ディライト様! お礼は必ずさせていただきますわね!』

「別にいいのに……」

「……レイシェ、ちゃん? ……ディライト、いつからレイシェのことを名前で呼ぶようになったの? 馴れ馴れしくない?」

「なんでレインくんが嫌そうなの……? 今朝からだけど〜……」

「なんで?」

「……えぇ……」


 とにかく嫌そうなレインにディライトが溜息を吐きつつ、虚空へと視線を走らせた。

 そして、慎重に魔法陣を組みつつレインに指示を出す。


「レインくん、拘束は解くから身体起こしてね〜。それで……リウちゃんが教えてくれたやつは、これでいいはず……うん。これで机ができたから、料理置いちゃうね〜。自分で食べれるでしょ〜? あ、残してもいいから。感染はしないらしいし、残ったらボクが食べるよ〜」

「魔法……結界でできた机? リウが教えたの? ……へぇ……即席の机、便利そう……」

「だよね〜。はいどうぞ」

「……うん、ありがとう。美味しいよ」


 レインがそう言い、淡々と食事をした。

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