表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1066/1101

レイン、行動を禁止される③

 逃げないように、と。

 そんなことを言うリウに、レイシェが息を呑んだ。

 そして、不安そうにリウの服の袖を掴み、首を傾げて尋ねる。


『お兄様に、そんなことを言うだなんて……その治療法というのは、そんなに苦しいんですの?』

「えっ? あっ、ご、ごめんなさい、言い方を間違えたわ! 違うから安心して。大丈夫だから……その、ね、治療法が……何もせずに大人しくしておくことだから。レインは、何かしていないと気が済まないんじゃないかと思って……」

『何もせずに? ……でも、病人は大人しくしているものですわよね? それなのに、一般的には、治療法は見つかっていないんですの?』

「もちろん、それだけではないから見つかっていないの。ちゃんと説明するわね」


 不思議そうにするレイシェに頷き、リウが息を吐き出した。

 そして、眉を寄せながら説明を開始する。


「そもそも、魔力喪失というのは魔力の器が割れることが原因よ。コップは割れたら元には戻らない。そして魔力の器も、同じように戻りはしない。これを何とか修復するのが、今私がするべきこと。それで……器が割れた原因だけれど……器に負荷が掛かりすぎたの。数多の人生を経験し、ギフトを積み重ねたあなたの魔力。それは、あなたの器には収まり切らなかったみたいね?」

「……でも、これまでは」

「封印による弊害と言えるでしょうね。これまで、魔力が長時間満たされたままということは無かったのでしょう。封印されたからこそ魔力の使用が減り、魔力は器から溢れてしまった。これで説明はおしまい。今後の対策は……いえ、とりあえず治療が先ね。修復するけれど……私、邪神でもあるから……あなたの魔力に浄化されて、あまり効率が良くないの。一朝一夕では無理よ。だから、修復が完了するまで、一切動かないで。動くだけで魔力も動いちゃうから、動くのは必要最低限にして」


 リウが強くそう言うと、レインがそっとリウを見た。

 そして、力の無い小さな声で尋ねる。


「それ、って……どこまで……」

「運動とか、日光も浴びさせてあげたいのだけれど……ちょっと難しいわね。できれば寝たきりがいいわ」

「……むり」

「だから言ったの、逃げないでねって。……ある意味、凄まじく辛いでしょうけれど……なるべく早く終わらせられるよう、頑張るから。我慢して頂戴な。できれば寝たきりがいいけれど、身体を起こすくらいなら大丈夫だから。読書も大丈夫だから、本を持ってきてあげるわね。こうなるまで見抜けなかった私も悪いから。だから動かないで」

『動かないのも、それはそれで良くは……いえ! わたくしにお任せくださいまし、リウ! わたくしが、完璧にお兄様をお世話してみせますわ!』

「ええ。でも、無理はしなくていいから。確認したら、ディライトも協力してくれるって。あれは、からかい目的な気もするけれど……まぁ、いいわ。私も治療のために通うことにはなるから、お世話はする」


 リウがしれっと告げた言葉に、レインが顔色を悪くした。

 リウにお世話をされる。

 嫌と言えば嘘にはなるのだが、かといって歓迎もできない。

 こんなにも弱っている状態の自分を何度もリウに見られて、お世話をされてしまうらしい……と、レインは絶望した顔をする。


「とりあえず、応急処置はするわね。これだけでもだいぶ良くなるはずだから……魔力を抜いて……一先ず、私の魔力で器に空いた穴を塞いでおくわね。一日くらいはこれで持つでしょう」

「……」

「拗ねないの。仕方ないでしょう、治療のためなんだから……こほんっ。その、ごめんなさいね。急だったから、ちょっとあんまり時間が取れなくて……応急処置はしたから、今日はこの辺りで戻るわね。今日は視察もあるから……そうだ、ルリアにも会っておかないと。しばらく時間を取れなさそうだものね……とにかく、安静にしておくように! レイシェ、監視は任せたわ! 治療法があるとは言っても、大変な病気だから! 命に関わるようなものだから、甘やかさないで! あっ、いえ、ある意味甘やかし尽くすのが正解なのだけれどっ……」

『お任せくださいまし! お兄様の要求は適度に無視しつつ、完璧にお世話してみせますわ! わたくし、お兄様のことは大好きですけれど、盲目的になりすぎるつもりもありませんから!』


 レインのことは大好きだし、その罪にも大きな怒りは示さないほど、レイシェは兄のことを愛している。

 だが、叱らないほど甘くはないし、一切怒らないほど盲目的ではない。

 レイシェは、必要ならレインの要求を無視できる。

 そんな確信を得て、リウが安心して小さく頷いた。


「任せたわ。何かあればすぐに連絡してね、緊急ならすぐに駆け付ける。話があるなら、なるべく早めに時間を作るから」

『はい!』


 レイシェの返事にリウがぱっと笑顔を浮かべ、手を振りながら転移で城に帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ