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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1065/1103

レイン、行動を禁止される②

 それからしばらくして。

 研究員たちもそろそろ出勤してくる時間になったので、レイシェが元々医者だった研究員を呼んでいた。

 レインのことは心配だが、天界でとても美味しいご飯を食べたので、レイシェは機嫌よく医者をレインの元へ案内する。


『こちらですわ。……逃げ出したりしていないといいのですけれど』


 なお、マリーツィアはレイシェが帰ってきた時、入れ替わりで天界に帰っている。

 というわけで、レイシェが呼び出しに向かっている間、レインは一人だったわけだが。


「おーい……入るぞ?」

『……眠っているのでしょうか?』


 そんなことを言いながら二人が部屋に入ると、レインはぼんやりと壁を見つめて大人しくしていた。

 汗を掻いているので、レイシェはレインを医者に任せてタオルを取りに行く。


「おい、生きてるか? 大丈夫か?」

「……おは、よ。……生きてる……」

「おぅ……それは良かった。症状は言えるか?」

「頭痛と……吐き気。吐くほどじゃない。……あと……発熱と……ふらつくのと……目眩もある。あ……咳も少し出る。……食欲は、あんまりなくて……」

「風邪……にしては酷いな、感染症か……?」

「……目の前が……ぐるぐる、する。……ああ……魔力を使い過ぎた時の症状に、似てるかも……」

「魔力を? ……ふむ……確かに、魔力に異常がある気がする」

「ぇ」

「……専門外だな。とりあえず、症状を和らげる薬は知り合いの薬師に頼もう。持ってくるから待ってろ。それで……魔力関連の病気に詳しい知り合いはいるか?」

「……」


 その質問に、レインは黙り込んだまま目を逸らした。

 すると、タオルと水を持ってきたレイシェが答える。


『それなら大丈夫ですわ。お医者様に診てもらって、ダメならり……こほん、専門家に診てもらうつもりでしたの』

「そうか。なら、その人に任せるとしよう。薬をもらってくる。安静にな」


 医者はそう言い残し、去っていった。

 その姿が見えなくなるなり、レインは途端に嫌そうな顔をしてレイシェから顔を逸らす。

 知られたくなかったし、リウにはこんな弱った姿を見せたくない。

 だが、こうなればもはや拒否はできないだろう。

 何より、最愛の妹であるレイシェが、レインを逃がしてはくれない。

 こうなると、リウも逃がしてくれないかもしれないな、とレインが更に眉を寄せた。


『もう、お兄様ったら……あまり嫌がらないでくださいまし。早く治して元気になるのが一番でしょう?』

「……わかってる」

『リウに弱った姿を見せたくない、という気持ち……わからないでもないですけれど。わたくしも、積極的にはリウにもお兄様にも、そんな姿は見せたくありませんわ。でも、早く元気になった姿を見せて、安心させてあげたいとも思いますの。わたくし……心配ですわ。もし、重い病気だったらどうしましょう……』

「……重い病気、でも。……ダメなら、転生するだけだよ。……大丈夫、大丈夫……」

『ちっとも大丈夫じゃありませんわ、そんなの。お兄様……認識を改めてくださいまし。お兄様にとっては、例え苦しくても慣れたものだとしても。その死に悲しむ者はいます。知っていても、悲しいのですわ。想像するだけで、胸が苦しくなるほどに。……ですから、お兄様……そんなことを、言わないでくださいまし』


 不満そうにレイシェが言うと、レインは黙ったままそっとその頭を撫でた。

 そして、辛そうな表情を浮かべながらも、優しく微笑むと小さな声で言う。


「そう、だね。……ごめんね」

『わかってくれたなら、いいですわ。……お兄様。そろそろ……わたくしは、移動しますわね。移したくないみたいですし。何かあれば、すぐに呼んでくださいまし。例えどれだけ小さな声でも、必ずすぐに駆け付けますわ!』

「うん……ありがとう」

『お大事に、お兄様。もし眠れそうなら、眠っていてくださいまし』


 レイシェがそう言い、心配そうにしながらも部屋から出ていった。



 それからしばらくして。

 レインがぼんやりと目を開いた。

 いつの間に眠っていたんだろう、なんてことを思いながら、レインは身体を起こそうとする。


「あ、起きた……ダメ、寝てて。動かないほうがいいわ」

「……。……? ………………り、リウ……!?」

「おはよう。驚かせてごめんなさいね。でも動かないで、大人しくして。まだ診てる最中だから」

「……い、いや、……その」

「……魔力が減ってる……暴走の兆しとかでは、無い。……回復もしてない。……うん、断定しても良さそうね」

『リウ、お兄様は……』


 リウの隣に立って、不安そうにしていたレイシェが尋ねた。

 するとリウは、こくりと頷いてその病名を明かす。


「魔力喪失。簡単に言うと、人が持つ魔力が、上限ごと減って、完全に失われてしまうという病気ね。かつてディーネが罹り、ルリアが精霊から悪魔になった原因。奇病であり、一般的には治療法は無いとされているわ」

『……そんな……』

「ふふっ、不安を煽ってしまったわね。ごめんなさい。安心して、二人とも。私なら、治療法を知っているわ。……逃げないで頂戴ね、レイン?」


 リウがそう言って目を細め、楽しそうに笑った。

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