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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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レイン、行動を禁止される①

 朝、目を覚ましたレインはゆっくりと身体を起こした。

 そして、額に腕を当てて嫌そうに呟く。


「……なんか……熱っぽいなぁ……」

『……んん……お兄様……?』

「レイシェ……来ないように言ったのに。はぁ……もう少し寝てていいよ。まだ早いから」

『……はい……おやすみ、なさい……ませぇ……』


 辛うじてそう言い、眠りに落ちていくレイシェの頭を撫でてから、レインが立ち上がった。

 若干ふらついているのを自覚しつつ、レインは非常食の干し肉を取り出し、椅子に腰掛けてから齧り付く。

 とりあえずなんでもいいので栄養を取り、また休眠を取るべきだろう。

 薬も欲しいが、まだ朝早いので流石に手に入りそうにない。


「……あぐ……硬……食欲無いなー……」

「レイン?」


 突然後ろから声を掛けられ、レインの肩がビクリと震えた。

 そのままレインが固まっていると、声を掛けてきた人物――マリーツィアがレインの正面へと回ってくる。


「ああ、やっぱり……顔色が悪いわよ。風邪を引いたのかしら?」

「……マリーツィア……わかんない。風邪かなぁ……んぐ……」

「ディライトと天使たちがね、新しく練習してた料理も、もう出して大丈夫って言ってくれて……作ってあげようと思ったのだけど……」

「流石に無理……」

「そ、そうでしょうね。……ええと……私、ディライトに報告してくる!」

「えぇ……いいよぉ。寝れば治るから……」

「いいえダメよ! じゃなきゃ、リテアちゃんがあんな丁重な対応をされるわけないものね」

「……あ、行っちゃった……いつの間に、あんな健気に……げほっ、ごほっ……何か喉に違和感……」


 レインが喉に手を当てて眉を寄せ、溜息を吐きながら怠い身体を動かして水を取りに行く。

 しかし、途中で目眩がして、レインがその場でしゃがみ込んだ。


「……み、水……」

「はいはいレインくん、持ってくるから座るか横になってようね〜。マリーツィア、移動させといて。あ、雑にしたらライちゃん没収するから」

「そ、それだけはっ……慎重に運べばいいのね? 抱えるわよ! ……あ、熱っ……」

「レインくん、この辺の食材使うね〜。あ、守護精霊ちゃんにも説明しておかないと……マリーツィア、運び終わったら様子見てきて〜。寝てたらそのままね〜」


 ディライトがそう言い、レインのために料理を作り始めた。

 マリーツィアはレインを抱え上げ、ソファーに座らせる。


「……来なくてよかったのに」

「はいはい、後でリウちゃんに診てもらうからね〜」

「リウは嫌……医者には、見せに行くから。……軽い風邪とか以外は、お金出すって……言われてるし」

「……それ、普通の病気なの〜? 急な高熱とか出して……というか動けるの?」

「ここまで、歩いてきたから……」

「いや熱上がってるよね。何で急に体調崩したのか知らないけど……」

「…………じゃあ。しょうがないから、知り合いに頼む……元々、医者やってたのが、いるから……」

「なーんかぼーっとしてるし、めちゃくちゃ熱あるし、ふらついてるし……あとなんか……まぁいいや。薬が無いとか、そもそも何の病気かわからないとかあったりしてダメだったら問答無用でリウちゃんに頼むからね〜。……あ、そろそろ様子見ないと……」


 ディライトがそう言って料理の様子を見に行った。

 レインはぼんやりとそれを見送ると、ソファーで小さく丸まって出来上がるのを待つ。


「ディライト! レイシェちゃんは寝て――」

『起きましたわ。もう……何かトラブルがあったのはわかりましたけれど……お兄様? ……お兄様!?』

「あ〜、レインくん熱出しちゃってね〜。もしかしてマリーツィアうるさかった? きつく言っておくね〜」

『あ、いえ……そういうわけではありませんの。ただ、マリーツィアさんが出ていく直前にいなくなってしまって。呼び止めたのですけれど、聞こえなかったみたいで……慌てて追いかけてきたのですわ。それより、お兄様は? 熱って……』

「そこで横になってるから、見ててあげて〜。守護精霊ちゃんならマリーツィアより安心だよ〜」


 レイシェが急いでディライトが手で指し示した方に駆け寄り、その顔を覗き込んだ。

 そして、そっとその額に触れ、息を呑む。


「…………レイシェ……? 移ったらいけないから……」

『ひどい熱……リウって、病気には……』

「魔法、魔力が絡むものなら大体わかる〜って。逆に普通の医者は大体そっちには詳しくないから、ちょうどいいね〜」

「…………連絡、したの……?」

「いや〜? 向こうから連絡寄越してきたよ〜。気配がもうふらっふらしてて、らしくないから確認の連絡が来てね〜」

「……しられたく、なかったのに」

「あ〜……もうレインくんは喋らなくていいから。目閉じて休んでてね〜。食事、もうできるから」


 ディライトがそう言い、火を止めて軽く様子を見てからお皿に食事を盛った。

 そして、レインのところに持っていくと、お皿をレイシェに預けて尋ねる。


「とりあえず作ったけど、食べられそう? ほぼ離乳食なんだけど」

「……なんか、食べづらいから……その言い方、やめて……何……?」

「パン粥。食べれる? 気持ち悪い? 食べれそうならスープとかも作るけど」

「……食べ物見るだけで……ちょっと、きついから。……匂いが強いと……でも、これは……もらう、ね。ありがとう……」

「ん〜。守護精霊ちゃん、天界おいで〜? 朝ご飯これからだし、レインくんが言ってた通り、この症状じゃちょっと移すと大変そうだからね〜。レインくん移すと凄く嫌がりそうだし。ってことでマリーツィア、看病よろしく」

「……え、ええ!」

「じゃあ守護精霊ちゃん、行こうね〜」

『えっ、わたくし、まだ行くなんて一言も――』


 半ば連行される形で、レイシェがディライトに連れられて去っていった。

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