リウの愉快な魔法研究⑦
レインで実験をさせてほしいと堂々と言ったリウは、すっと手袋を嵌めた。
そして、その頬に手を添えると真面目な顔をして魔力の流れを見る。
「待って待って待って待って行動が早い、早いよまだ許可してないからっ」
「……魔力そのものが聖属性を含んでいる? でも放出されるのは……体外に放出された時点で、普通の魔力になる?」
「そもそも何の実験!? なんなの!? 離して!?」
「……それとも、コイツが工夫をしていた? 実際に見たいけど、それは流石に無理ね……」
「り、リティルぅ!? 助けて! 助けて!!」
レインが顔を真っ赤にしながら叫ぶと、リティルが気だるげに移動してリウからレインを引き剥がした。
そのまま床に座らされたレインは深く息を吐き出すと、熱い顔をパタパタと手で仰ぎながらじとりとリウを見る。
「……リウ?」
「うっ……て、照れさせたら、やらせてくれると思って……」
「このっ……はぁ、結局何の実験なの?」
「お前に魔属性を流したらどうなるのか知りたかったの! 今回の魔法に使うのは濾過だけれど、浄化も作っておけば使い分けができるかもしれないし。そう考えたら、レインの体質が気になって……取り込むようにして浄化するの? それとも魔属性を消し飛ばしている……?」
「え、知らないけど」
「そうでしょう知りたいでしょう。大丈夫、痛くないから。ちょっとだけだから。すぐ終わらせるから!!」
「それでもダメ! そもそも触るの嫌だから手袋したんだよね!?」
「ええ!」
「酷いしそんなに嫌ならいいでしょ! はい、魔法開発に戻る!」
レインがそう言ってリウから距離を取ると、リウがぷくりと頬を膨らませた。
そして、拗ねながら魔法陣を弄り始める。
「……むむぅ……あっできた」
「えっ?」
「リティル! 仮だけれど、完成したわ! ほら見て、暴走しない! 効率化もできてるし……! あとこっちは暴走した時のための浄化用の魔法! えへへ!」
「お、おお……? ……本当か?」
「何。私を疑うの? ほらちゃんと見て、できているでしょう! ふふん。時間が空けば、今まで気付けなかったことにも気付くようになるものよ。ほら!」
「……確かに……できてるな」
「……僕が来た意味……」
レインが悲しそうに呟くと、リウがバッとレインの方を見た。
そして、ニコニコと微笑みながら言う。
「来た意味が欲しいのね? それならもちろん用意できるわ! あなたは私の実験に付き合うの!」
「それはいい。遠慮する。いらない。僕はレイシェとのんびり過ごすから」
「……」
ぷく、とリウの頬が膨らんだ。
一度気になってしまったらもうダメらしく、ギラギラとした瞳でジッと見つめてくるので、レインがリウから目を離さないまま逃走した。
あそこまで逃げられているのに追いかけるわけにも行かず、リウはしょんぼりと肩を落としながらリティルを見る。
ビクリとその肩が震えた。
「……私がレインについて調べたいのは、レインが特殊だから。別にリティルのことは調べないし、実験もしない。怖がらないで」
「あ、ああ……ディライトのこと、送っておくな……?」
「……むぅ……よろしく。ありがとう。鍵閉めちゃうから、転移で帰ってね」
リウはそう言ってからリティルよりも先に地下室を離れ、鍵を掛けてから執務室に向かった。
どうもリティルは自分のことを怖がっているみたいだったので、先に行った方がいいと判断したのである。
そうしてリウは若干拗ねた顔をしながらも、楽しく魔法開発ができたと満足そうに頷くのだった。
これにて『リウの愉快な魔法研究』は終了です、ありがとうございました!
学園生活も書きたいけど……あっちはあっちでネタ切れ起こしているので、次も学園生活ではありません。
レインの体調不良のお話です。




