表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1060/1101

リウの愉快な魔法研究④

 ノルティアナの地下室、その中心にリウがぽつりと立ち、困ったように眉尻を下げていた。

 そして、リウはボソリと呟く。


「……お、追い出されちゃった」

「そりゃあね〜……あんな有り様じゃ追い出されるよ〜」

「ひゃっ……でぃ、ディライト。……そ、そう……?」

「書類抱えて数時間固まって動かないし、気付いたら窓の外眺めてぼーっとしてるし、地下室の方見るし……逆に追い出されない要素が無いと思うけど。全く集中できてないのが丸わかり」

「うぅ……でも、リティルがいないと研究は続けられないわ。この会はあくまでも、リティルの世界のために開催されるもの……私の趣味が大部分を占めているのは、自覚しているところではあるけれど……! 本題はそうじゃないもの! あと私の趣味だって役には立ってるし!!」

「はいはい、一人で罪悪感持って勝手に言い訳しなくていいから〜。もうちょっとしたら手が空くらしいから、それまで適当に時間潰そうね〜」


 リウが一人で罪悪感に苦しんだりしているのをディライトは雑に流し、ぽんぽんとその肩を叩きながら時間を潰そうと提案する。

 ぷるぷると震えながらリウはそれにこくりと頷き、メモを取り出した。


「……ううぅ。ディライトぉ」

「なに〜? ボク、リウちゃんの話にはついていけないよ〜? 多少はわかるけど、リウちゃんやレインくんほどじゃ……」

「試作段階の魔法、使ってみたら暴走しちゃった……収めるの手伝ってぇ……」

「何何何何なにが起きてるの!? 影響は!? 魔法陣どこ!?」

「影響は……この部屋の外には漏れないはずだけど、瘴気が漏れてる……というかなんか増えてる……なんで……? 原理は……の、前に、えっと、魔法陣の具現化……! ここを……弄れ、ば……できた! ううっ……異世界の魔法が混ざってるから、制御しづらいぃ……っ」

「本当にボクに収められるかなそれ!?」


 リウが制御しづらいと言う魔法の暴走を本当に自分でどうにかできるのか、とディライトが心配しながら魔法陣に駆け寄った。

 ダメそうなら最悪無理矢理壊そう、と心に決めつつ、ディライトは自分が持つ知識を総動員して暴走の制御に取り掛かる。

 壊そうとすればリウに怪我をさせるかもしれないが、仕方がない。


「ほんっと複雑でなにがなんだか……えーっと、ここがこうで……ここと繋がってて……こうなってるから……あれ? ここだと思ったのに……えぇ? 暴走の原因何……? どこかが綻んだりしてるわけでもないのに……」

「たぶんどこかが瘴気を生み出してる! それっぽいところ全部乱して! ……た、楽しくなっちゃだめ、私……楽しくない楽しくない……」

「楽しくて自分で収められるのにしてないとかじゃないよね!?」

「それは違うから安心して! 異世界の魔法が暴走したのは初めてだから手間取ってるだけ! ……っ、く……り、リティルが来たらたぶん大丈夫なのだけれど……」


 噂をすればなんとやら、リウがそうぼやいた直後、リティルがやってきた。

 リティルはすぐに異変に気が付いたのか、二人に駆け寄って魔法陣を注意深く観察する。


「これは……暴走しているのか? 手伝いは……」

「いるぅっ……」

「わかった、少し待て!」


 リティルがそう言い、魔法陣に手を翳した。

 そして、数秒ほどすると、スッと魔法陣が霧散し、リウは地面にへたり込む。

 ディライトもほっとしたような顔で軽く息を吐き出すと、少し疲れている様子のリウに近付く。


「リウちゃん大丈夫〜? 休む?」

「ん……大丈夫。これまで、慣れたものばかりだったから……不慣れな大変なものに触れるのは、久しぶりで……びっくりしてるのが大きいだけよ。心配しなくて大丈夫」

「そう〜……?」

「そんなことより、メモしないと……!」


 リウが唐突にそう言い、紙を取り出した。

 そして、つらつらと紙に何かを書き始めるので、ディライトはそっと後ろに回ってそれを覗き見る。


「えっと――うわ。異世界の魔法の暴走……引っ張られる感覚……」

「見てもいいけど読み上げないで!」

「要・再観察……今度は誰かに制御を任せて……」

「読み上げないでって言ってるのにぃ!?」

「誰がやるのこれ。レインくん?」

「うぅ……それが一番確実でしょう……? 最悪死んでも大丈夫だし……私の都合だから、痛覚とかは一時的に麻痺させるけれど……魔法陣の制御を押し付ければ……」

「ど、どうやって魔法陣操作するの?」

「専用の魔法を私が組むの。それならできるわ。レインは人間だけれど……たぶん、あの聖属性で瘴気とか全部意識しなくても浄化できるでしょうし。一番影響を受ける位置にいても大丈夫。あっ、本人の許可は得るから! あと喜んで死なせようとも思わないから!」

「可哀想なレインくん……でも、リウちゃんのためなら喜んで犠牲になりそうだな〜……」


 死んでも大丈夫だから、などなどと酷い扱いのレインをディライトが憐れみつつ、笑顔で承諾しそうなレインに溜息を吐いた。

 リティルはそんなやり取りから目を逸らすと、部屋に視線を巡らせて言う。


「……この瘴気、どうするんだ? 私達は影響は受けないだろうが……」

「ああ……そうだった。今浄化するわね。――はい、終わり。完全に消えたわよね?」

「……本当に、どうしてそんな……」

「レインくんほどじゃないけど、リウちゃんも大概聖女としての才能はあるからね〜……本当にすっごく才能に恵まれてる」

「それ、あんまり私の前で言わないで。それを褒められても……あんまり、喜べないから」


 リウが苦い表情でそう告げ、気を取り直すように軽く自分の頬を叩いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ