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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1056/1101

ノルティアナの舞踏会㉖

 ディライトとレインもなんとか仲直りをして、更に時間が経ち。

 そろそろ、舞踏会の終わる時間が近付いてきていた。


「うう。うううぅ……」

『りーちゃん、元気出して! また今度の機会にまたやればいいよ、ねっ?』

「そ、そうだよ。ねーさまの言う通り……落ち込んでたら、みんな心配しちゃうしさ……」

「終わりたくないぃ……」

「子どもみたいに駄々捏ねてる。リウ、終わる時もみんなの前で何か言うんでしょ? そんなんじゃダメだよ。せめて気を抜くのは終わってからで……」

「ルリアぁ……」

「うわぁ!?」


 もうすぐ終わってしまうと落ち込んでいるリウをルリアが宥めていると、リウが抱きついてきた。

 それにルリアは悲鳴を上げ、なんとかリウを支えながらもディーネに助けを求める。


『り、りーちゃん、ルリちゃんが潰れちゃうよ! ダメダメ!』

「だって……終わったら、みんな帰っちゃう……寂しい……」

『大体の人はいつでも会いに来れるよ! だから大丈夫! ほらりーちゃん、早く立って!』

「……これ、もう両親のところに連れて行った方が早くない?」


 ルリアが潰されかけながら言うと、ディーネがぴくりと反応した。

 そして、きょろきょろと周囲を見回すとルリアに向かって言う。


『私、二人を呼んでくるね! ちょっと待ってて!』

「あっ、待ってねーさま! 先にリウを――い、行っちゃった。り、リウ? 重いんだけど……」

「重いなんて酷いぃ……ルリアぁ……」

「ほ、ほんとに困るんだってば。僕潰れちゃうよ……というか、お酒飲んだりとかしてないよね? そしたら、最後の挨拶まで持つかどうか……」

「飲んでない! 飲み物だって飲んでないのに……」

「そ、そっか。そうなんだ……」


 強く否定するリウにルリアが頬を引き攣らせながらも微笑んだ。

 そして、なんとか腕を伸ばしてリウの頭を撫で、少しでも落ち着かせようとする。

 そうこうしている内に、レクスとリーベを連れたディーネが戻ってきた。

 レクスとリーベは苦笑いしながらリウを見ると、レクスがそっとルリアからリウを引き剥がし、リーベが受け取る。


「お母様……? お父様……?」

「……ふふ。頻繁には会えない人たちと、もっとずっと一緒にいたいのね? でも、我儘を言ってはダメよ。わかるでしょう?」

「わ、わかっていますっ。……いるの、ですけれど。……行かないで、ルリアぁ……」

「え、僕なの……そっちには結構行ってるんだけどなぁ」

「だって、ディーネに会うばっかりで私のところには全然来てくれないのだもの! 私のところにも来て! ノルティアナに来たのなら、国王である私に挨拶をするべきよ!」


 むぅっと頬を膨らませながらリウが言うと、ルリアが苦笑いした。

 そして、わかったからとリウを宥めてちゃんと挨拶をするよう約束する。


「約束、約束ね。ちゃんと守るから」

「本当? 絶対よ?」

「う、うん。そんなに念を押さなくても大丈夫だから……まぁ、しばらく忙しくなると思うから、すぐには会いに行けないかもしれないけど」

「えっ? 忙しいの? 何かあったの……?」

「何かっていうか……なんというか、学園の改築計画……みたいなやつで、予定がみっちりで……はあぁ、しばらくサボれなそう……」

「学園の改築……」

「そう、悪魔以外の他種族に向けた施設とか増設したり、全体的に手を入れたりするんだよ」

「関わっちゃダメ? 興味があるわ」


 リウが国王の顔になって言うと、ルリアが目を丸くした。

 そして、少し考えると、申し訳なさそうに言う。


「その辺は、秘書ちゃんに相談しないとなんとも言えないかも。ただ……ノルティアナは色んな種族が住む国だし、リウの意見は参考になると思う! 推薦はしておくね!」

「あら、ありがとう。ふふふ……あ、お父様、お母様。すっかり気が緩んでいましたが……もう大丈夫です。そろそろ時間なので、向こうで挨拶をして来ますね!」


 ニコニコと明るい笑顔を浮かべてリウがそう言い、会場の中心の方に向かった。

 そして、軽く周囲を眺め、咳払いだけで注目を集めると、笑顔を浮かべる。


「――そろそろ、終わりの時間が近付いてきたわね。凄く……凄く楽しくて、終わるのは名残惜しいけれど……残念ながら、時間は止まらないから……ええ、残念ながら……止めたらみんな動けなくなっちゃうし……ん、んんっ! ええと……みんなは、楽しんでくれたかしら? 楽しんでくれていたら、嬉しいわ。……さて! こんな楽しい時間をしんみりして終わらせたくはないから、最後に私から、ちょっとしたプレゼントを渡させてもらうわね!」


 リウがそう言い、手を掲げた。

 そして、パチンと指を鳴らすと、突然虚空から花びらが舞い降り始める。


「どれでもいいから、花びらを一枚持って帰ってね。――きっと、家に着く頃には、素敵なプレゼントがその手に握られていることでしょう」


 リウはそう言い、静かに姿を消した。

 招待客たちは、戸惑いながらも言われた通りに花びらを一枚握り締め、案内に従って会場から出ていく。

 そうして、各々が家へと戻ると、その手に握られていた花びらは、いつの間にか花びらでは無くなっていた。

 あるいは、アクセサリー。

 あるいは、道具。

 その人に合わせたプレゼントが、その手には握られていて。

 幸せな一日は、静かに幕を閉じた。

これにて『ノルティアナの舞踏会』は終了です、ありがとうございました!


長くなったけど、楽しかったー!

次のお話は思い付いているので、学園生活は間に挟まず次に行きます。

リウの魔法研究のお話です。

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