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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1055/1102

ノルティアナの舞踏会㉕

 ふわり、淡い金色が舞う。

 ふわり、眩い金色が舞う。


「ふふっ。レイシェ、踊るのが上手ね」

『お兄様と練習しましたのよ。元から踊れはしましたけれど……リウの前で、失敗はしたくありませんもの!』

「あら、嬉しい。……レインに失敗を見せるのはいいの?」

『できれば、避けたかったのですけれど……ダメでしたの。失敗した上、見栄を張ろうとしていることすらバレてしまって……むうぅ……練習はたくさん付き合ってくださいましたけれど。お陰で、随分と上達はしましたけれど』


 少し落ち込みながら言うレイシェに、リウがくすくすと微笑んだ。

 そして、そっとレイシェをリードしてやりながら頷く。


「凄く踊りやすいわ。本当に、たくさん練習したのね」

『お兄様の方が凄いんですのよ。見ておりましたか?』

「見ていたけれど……なんというか、認めたくないわね。私よりも上手そうだった。いえ、長らく私は踊ったりしていないのだから、当然ではあるのだけれど。……レインが先生になってレイシェに教えていたからか、踊り方が似ているわね。とにかく相手が踊りやすいようにって、そういう工夫がされてる。……元は、面倒を呼び込まないためかしらね」

『お兄様も、そう仰っておりましたわ。そうした方が面倒が無いと』

「そう。……レイン、楽しめてた?」


 個人的な感情は置いておいて、折角の舞踏会なのだからとリウが尋ねると、レイシェが目を丸くした。

 リウはその辺り、興味は無いと思っていたらしい。

 わざわざ聞かれはしないだろう、と。


『……そう、ですわね。なんだか……いつにも増して、わたくしのことを笑顔で眺めている気がしますわ。今も』

「まぁ……ずっと、あなたとは会えていなかったわけだし。レインがレイシェと初めて会ったのは、公爵令息だった時だし……懐かしくて仕方がないんでしょう」

『……楽しめているのでしょうか?』

「うん、そうね。楽しんではいるんでしょう……舞踏会における楽しみ方をしているのかどうかは、置いておいて。……にしても本当にずっと見ているわね。ディライトのことは気にならないのかしら……」

『ディライト様? あ、そういえば、さっきリテアちゃんと一緒に……』


 レイシェがそう言いながらちらりと周囲を確認した。

 レイシェは一時期天界にいたので、もちろんディライトのことはある程度は知っている。

 というわけで、ディライトのことはしっかりと認識できるわけだが。


『……ディライト様こそ、楽しめているんでしょうか?』

「……。……うーん……リテアをからかって楽しんでいそうね?」


 面倒そうにリテアに付き合っている様子のディライトを見て、レイシェが心配そうにリウに確認した。

 するとリウもディライトの様子を確かめ、少なくとも退屈はしていないと安心させる。


『……あ、お兄様が……』

「ディライトとリテアのことを見ているわね。……後でディライトをからかいそう」

『そうですわね。喧嘩とか、しないといいのですけれど……』

「どうせからかい合うだけでしょうから、大丈夫よ。……そろそろ、踊りに集中しましょう?」


 くすりと微笑みながらリウが言うと、レイシェは頷いた。

 そして、たくさん踊って満足しながら、レイシェがリウの手を引いてレインの元に戻る。

 そこにはディライトとリテアもおり、何やら会話をしていた。


「……あ、おかえりレイシェ。どうだった?」

『とっても楽しかったですわ! わたくし、今日は大満足でいい夢が見られそうで……!』

「……疲れちゃって、夢も見ないんじゃない?」

『もう、お兄様ったら!』


 頬を膨らませるレイシェにレインが微笑み、ディライトに視線を戻した。

 若干不機嫌そうな顔をしている。


「……」

「ディライト、そろそろ機嫌直してよ……僕が悪かったから……」

「……レイン、何かしたの? なんとなくわかるけど……教えて頂戴な」

「あ、えっと……普通に意外と上手だねって褒めたら、拗ねちゃった」

「拗ねてないよ〜……」

「ディライト……何が嫌だったの? 意外とって部分?」


 褒めただけ、とは言っても余計な言葉が付いていたので、リウがそれが原因かと首を傾げた。

 しかし、ディライトはふるふると首を横に振ると、それを否定する。

 そして、じとりとレインを睨みながら言った。


「リテアちゃんの方が上手って言うんだもん〜……からかおうともしてない顔で……ボク、下手だった……? ……あと、拗ねてないから。ちょっと落ち込んでるだけ」

「に、兄様、元気を出してください……私は、そんなことは無いと思うんですけど……」

「……ああ。下手というより、若干自分本位な動き方をしていたからでしょう。その辺り気を遣っているレインには、下手に映ったんでしょうね」

「姉様、姉様。私、楽しかったですよ?」

「本当に少しだけなのよ。あとついでにちょっとからかい混じりでやってた節もあるし。気になるほどではないでしょうね。うん、レインが悪いわ。謝って」

「さっきから謝ってるってば……ごめん、ディライト。だからもう怒らないで」


 レインが面倒そうにそう言い、溜息を吐いた。

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