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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1054/1101

ノルティアナの舞踏会㉔

 会場に戻ってきたリウは、きょろきょろと周囲を見回す。

 そして、ぼんやりと会場を眺めているディライトを発見して、ツカツカと近寄っていった。


「ディライト!」

「あ、リウちゃん〜。……どうしたの〜?」

「どうしたも何も! 戦えなかったっ! 楽しそうだったのにぃ……」

「あ〜、マリーツィアに任せたからね〜……それで怒ってるんだ〜?」

「もちろん気持ちは嬉しいのだけれど、報告しておいてくれないと困るわ! マリーツィアが嘘を吐いているかどうかの判断もしないといけなかったし……はぁ」


 リウがそう言って肩を落とした。

 苦笑いしながらディライトがリウの頭を撫でようとして、パッと振り払われる。

 しれっと撫でようとしてきたディライトを睨んで、リウが唇を尖らせた。


「報告してなかったのはボクの怠慢だね〜。ごめんね〜?」

「存分に反省して!」

「まぁまぁ〜……ボクが悪かったから〜。それより、リウちゃんもう踊らないの〜?」

「異性と踊るわけにはいかないし、選択が限られているのよ。ヴェルジアとリアは良い雰囲気になってるし、お父様とお母様も二人で楽しそう。レアとリテアは……ずっと踊ってて。ディーネとルリアは体格的にちょっと無理があって……後は、他の配下のみんなは私に遠慮してる。私は別にみんなが楽しそうにしている姿を見たいだけだから、それでいいと思うの。私から誘いはしないわ」


 リウがそう言ってふるふると首を横に振ると、ディライトが勿体ないと言いたげな顔をしたを

 目敏くリウがそれに気付くと、じとりとディライトを睨む。

 ディライトも、今日は綺麗な格好をしている。

 この場所に見合うよう、着飾ってきているというのに。


「あなた、一回でも踊ったの? 折角綺麗な格好してるのに」

「踊ってないけど〜……だって、ボクは相手もいないし〜」

「ディライトは小さいからリテアとは踊れると思うわ。レアも行けなくはないけれど、影響が出ると良くないわね……」

「……嫌。練習……は、ちょっとヴェルくんにやらされたけど……」

「興味無いみたいな顔をしてたルリアですらディーネと踊ってるのに、あなたは何もしないの?」

「振る舞われてる美味しいご飯食べてるだけで楽しいから〜」

「……あ、リテアがこっちに……」

「げ」


 ディライトが嫌そうな顔をしながら逃げようとするので、リウがそっとディライトを捕獲した。

 そのまま笑顔でリウがリテアがやってくるのを待つ。


「姉様! ありがとうございます、捕まえていてくれて……兄様とも踊りたかったんです!」

「リウちゃん離して、転移の妨害しないで。ボクは逃げるから」

「踊るの嫌いなの?」

「別にそれは普通だけど……とにかく嫌」

「理由を教えてくれたら、離すかどうか考えてあげてもいいわよ?」

「考えるだけだよねそれ。嫌だ」

「……普段の口調すら崩すほどなの……? うーん……」

「大丈夫ですよ、姉様! 兄様は周囲の視線が気になるだけです!」


 リテアが無邪気に笑いながらそう言うと、ディライトが頬を引き攣らせた。

 どうやら、天界では普通に嫌な理由は話していたらしい。

 リウが一応ディライトに確認するように視線をやると、ディライトは深い溜息を吐く。


「わかったよ〜……視線が嫌なだけ。だから……」

「そう、ならディライトのことをある程度知ってる人にしか認識できないようにするわね。少し調整して……ぶつかったりしないように……うん、大丈夫そうね。リテアにも魔法を掛けるわね?」

「はい! よろしくお願いします、姉様」

「……あ〜、もう〜……」

「……視線が来ないようにしても嫌?」

「そういうわけじゃないけど〜。踊らないつもりだったから……上手くできるかな〜……」

「リテアの足を踏まないようにだけ気を付けたらいいわ、ほとんど誰にも見られないんだし。はい、じゃあいってらっしゃい。……あ、そうだリテア、行く前に……レアは?」


 リウがそう言って首を傾げると、リテアがくるりと後ろを見た。

 そしてきょろきょろと会場を見回したかと思うと、ぴょこぴょこと飛び跳ねながら答える。


「レアちゃんは、ご飯を食べに行きました! 向こうにいます!」

「あら、そう……ふふ。わかったわ、いってらっしゃい」

「リウちゃ〜ん……」

「助けないわよ。失敗したって誰も笑わないし、笑ったら私が怒るから。肩の力を抜いて楽しめばいいの。……リテアが楽しそうに待ってるわよ?」

「も〜……リテアちゃんってば……」


 ディライトが気だるげに溜息を吐きながらリテアに駆け寄っていった。

 そして、楽しそうなリテアに手を引かれ、会場の中心へと向かっていく。

 リウがそれを眺めていると、レインとレイシェが近付いてくるのが見えた。

 レイシェはリウの姿をその視界に捉えると、嬉しそうに笑って手を振ってくる。


『リウ! こんなところにいましたのね! もう、探したんですのよ?』

「探していたの? ごめんなさい、気が付かなくて……何か用事?」

『ええ! リウ、わたくしと踊りませんこと?』

「……あら。ふふ、もちろん喜んで」

『嬉しいですわ! では、お兄様は近くで見ていてくださいましね。あっ、リウが嫌でないのなら……ですけれど』

「まぁ、それくらいならいいわよ。妹が踊っている姿はちゃんと見たいでしょうし」


 リウがそう言うと、レインがぱあっと目を輝かせた。

 自分からリウに話しかけないように言われているので何も言わないが、とても嬉しそうである。


「……じゃあ、行きましょうか」


 リウはそうレイシェに声を掛け、その手を引いて歩いていった。

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