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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1051/1102

ノルティアナの舞踏会㉑

 褒められ、顔を赤くしながらリウがディライトを睨み、しかしどうにか怒りを散らそうと息を吐き出す。

 そして最後にじとりとディライトを睨んでからリウは表情を平静に戻し、少しだけ不安そうに尋ねた。


「それで、ディライト……その。……まだ、何も起きていないわよね……?」

「ん〜? ああ〜、リテアちゃんのあれがあったから心配なんだね〜? 今のところは大丈夫そうかなぁ〜、変な気配も無いよ〜」

「……そう。なら、いいのだけれど……」

「ああ、それと〜……リウちゃん、一個聞きたいんだけど」

「ん……? なぁに、ディライト」


 リウが首を傾げると、ディライトは軽く周囲に視線を巡らせた。

 人々が談笑をしており、今も非常に賑やかな会場となっている――が。


「舞踏会なんだよね〜……?」

「別に舞踏会にも挨拶の時間くらいあるわ」

「それは……そうかもしれないけど〜……だって、誰が音楽やるの〜? お城で雇うなりしてるのかもしれないけど、見当たらないよ〜? あといつから踊るの? 万が一にも誘われないように避難しておきたい」

「……ディライトったら……避難って。せっかく舞踏会に参加してるのに……まぁいいわ。もう少し後……具体的に言うのなら、私の魔力があと二回あそこに到達した頃ね。見えるでしょう?」

「……見えるけど。なにあれ」

「私の魔力」


 そういうことではないとわかっているはずなのに、答えになっていない答えを寄越すリウにディライトがジト目を向けた。

 くすりとリウが微笑み、改めてちゃんとした説明をする。


「魔力を会場の端で巡らせているの。ぐるっと一周ね。あれが五周したら、本格的な舞踏会の始まりよ」

「……リウちゃんが大変じゃない〜……?」

「別に。だってあれ、私が操作してるわけじゃないもの。自動で回ってるの。ふふ……そこまで出番が多いわけではないけれど……ああ、楽しかった……っ」

「ああ……魔法開発してたんだね〜……いつの間に……」


 頬に手を当ててうっとりとした表情を見せるリウに、ディライトが少し目を逸らしながら溜息を吐いた。

 とにかく、始まるタイミングは把握できるらしいので、ディライトが肩を竦めて軽くリウの背中を押す。


「ボクへの挨拶は済んだでしょ〜? ヴェルくんがリウちゃんと会えない〜って嘆いてたから、行ってあげて〜」

「ああ、そうね。時間が来る前にヴェルジアにも挨拶しないと。また会いましょうね、ディライト。私もそんなに踊るつもりはないから」

「……え、主催者なのに?」

「私はみんなが楽しく過ごしているのを見てたら楽しいから。踊ってたらあんまり見られないでしょう? まぁ、誘われたら踊るけれど」

「……ふ〜ん……まぁいいや〜、じゃあまたね〜」


 ディライトがそう言って手を振り、人混みに紛れていった。

 それを見送り、リウはきょろきょろと周囲を見回す。

 近くにヴェルジアの姿は無い。

 なら気配を探ろうとリウが意識を集中させて、しかしふとぱっと振り向く。


「……あ、こっち見た」

「ヴェルジア……転移してきたの? 急に気配が現れた気がするのだけれど」

「だって、あんまりにも会えないから……ちょくちょく見かけるのに、すぐ見失っちゃって……」

「あら、ごめんなさい……リアとは挨拶をしたし、なんだか優先順位が低く……」

「酷いなぁ。……そのドレス、綺麗だね。よく似合ってる」

「――。……ヴェルジア」


 ヴェルジアがリウの格好を眺めて感想を口にすると、リウが目を丸くした。

 なんだかとても驚いている様子のリウに、ヴェルジアは首を傾げてから不安そうにリアを見る。

 黙ったままニコニコしてリウを見つめていたリアはそんなヴェルジアの視線に気付くと、軽くヴェルジアを見遣ったものの、すぐにリウから驚いた理由が明かされるだろうからと無視をする。


「り、リア、無視しないで……リウはなんでそんな驚いてるの……? 僕何かした……?」

「そ、そういうわけでは……いえ、ある意味そうなのだけれど……その、ドレスを褒める感じで……言ってくれたから……」

「……あ、ああ……! 照れるのはわかりきってたことだし、もうずっと褒められっぱなしだろうからと思って……もちろん似合ってるんだけど、ちょっとでも和らげようと……」

「ディライトはわざと言ってきたのに……!」


 リウがキラキラと目を輝かせながら言うと、ヴェルジアが頬を引き攣らせた。

 そして、本当に嬉しそうにしているリウに微笑む。


「まぁ……喜んでくれて良かったよ。恥ずかしくても喜んでるんだから、普通に褒めようかどうか迷ったけど……」

「私のこともちゃんと褒めてくれたでしょう? 凄く嬉しいわ。て、照れすぎて、そんな工夫をさせてしまうのは申し訳ないけれど……」

「これくらい別に気にしなくていいよ。それより……リアと踊るんだってね。最初に踊るの?」

「ええ、そのつもりよ。身内ばかりとはいえ、男の人とは安易に踊れないし」

「そんな釘刺さなくても今日はリアとのデートのつもりで来てるから……勘違いされたら面倒だろうしね。人の目に触れるところでリウが異性と踊るのは無理だよね」


 ヴェルジアが苦笑いしながらそう言うと、リウが頷いた。

 そして、デートという言葉に少しだけ照れているらしいリアの頭を撫でる。


「ヴェルジア。リアのこと、ちゃんと楽しませてあげてね。二人のダンス、楽しみにしているから」

「お、お姉さまっ……」

「ふふっ、楽しみにしてて」

「ヴェルジア!」


 ヴェルジアとリウが笑い合い、照れるリアを軽くからかった。

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