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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1050/1101

ノルティアナの舞踏会⑳

 リウが会場を歩いていると、知っている後ろ姿を見かけ、駆け寄った。

 そして、不意打ちでその後ろ姿――ルリアを抱き締める。


「ルリア! どうして挨拶しに来てくれなかったの!?」

「わあっ!? リウ……!? もう、びっくりするでしょ! ねーさまなんか固まって……」

『りーちゃん、近くで見るとさっきよりもっと綺麗! 髪纏めてるのも新鮮だね!』

「でぃ、ディーネも似合うと思う? ルリアは?」

「え〜……新鮮だとは思うけど……リウって、なんでも似合うし……僕にそんな感想を求められても……」

『もーっ、ルリちゃんだってさっき見惚れてたくせに! 素直じゃないんだから!』

「ねーさま!」


 眉を寄せて怒るルリアに、リウは本当なんだとわかって嬉しそうに頬を緩めた。

 しかし、はしゃぎすぎると何かしらやらかしてもおかしくないので、必死に気を引き締めようと深呼吸を繰り返す。

 そして、二言三言ルリアとディーネと言葉を交わすと、まだ挨拶をしていない人たちを探しに二人から離れた。


「姉様!」


 更にリウが歩くと、後ろから幼い声が掛けられた。

 リウが笑顔を浮かべながら振り向くと、男装をしているリテアと、可愛らしいドレスの裾を握り締めて少し照れている様子のレアがいる。


「姉様、ごきげんよう! どうですか!? 母様に少し手直しはしてもらいましたが、自分で作ったんですよ!」

「自分で? 凄いわ、舞踏会に着ていっても違和感のない服が作れるなんて……ふふっ。将来が楽しみね。とても似合っているわ。レアもね」

「う……り、リウ様……」

「ふふっ、恥ずかしいの? 似合っているわよ」

「……その……会った人みんなに、似合ってるって言われるから、恥ずかしくなってしまって……」


 レアが身体を揺らしながら言うと、リウが目を丸くした。

 そして、リウも少し恥ずかしそうにはにかむと、共感するように頷いて言う。


「そ……そうなのよね。いえ、こういう場なのだし、お世辞で褒められるのは当然なのだけれど……みんな、本心で言うから……照れちゃう……」

「……リウ様もお似合いです」

「えっ、……あ、うん……あ、ありがとう……も、もう、レアったら。照れるって言ったばかりなのに……」

「……レアちゃんも姉様も、恥ずかしそうにしなくていいのに……本当に凄く似合っているから褒められるんですよ?」

「り、リテアちゃんはわかっていません! そう思われているのは、嬉しいんですけど……それはそれとして、凄く恥ずかしいんですよ」


 レアがきゅっと眉を寄せながら言うと、リテアが首を傾げた。

 リテアにとっては、褒められたら嬉しい以外の感想はないらしい。

 リウが少し考え込んで、もしかしたらと思ったことを口にする。


「リテアは、身内以外からも褒められ慣れているからかもしれないわね。単純に性格の問題もありそうだけれど」

「身内以外……?」

「リテアは天使からも褒められるでしょう。でも、天使は身内と呼ぶにはちょっと畏まりすぎているから……」

「うーん……大天使たちとは仲が良いですけど、確かに他の天使は……仲が良いとまでは言えないかもしれません。失礼にならないようにって、一定以上の距離を取られているので……むぅ、父様は別にもう少し距離が近くても大丈夫って言っているのに……」

「ふふ、敬愛されているのはいいことよ。寂しいけれど」

「そうなんですっ。私は仲良くしたいのに……でも、男装をすると似合ってるって褒めてくれたりはするので……確かに、だから恥ずかしくないのかも……レアちゃんと姉様は、恥ずかしいんですね……?」


 リテアが首を傾げながら確認すると、二人が頷いた。

 レアは身内以外に褒められる機会はあまり無いし、リウは少し前まで独りで過ごしていた。

 だから照れてしまうのだろうとリテアが納得し、笑顔を浮かべた。


「じゃあ、慣れることができるように私がたくさん褒めます! レアちゃん可愛いです! 姉様も綺麗でっ……!」

「!? り、リテア……っ、わ、私、他の人にも挨拶しないといけないから、ねっ」

「あっ……わかりました、じゃあまた今度にしますね!」

「こ、今度……!?」

「レアちゃん、覚悟しておいてくださいね! いーっぱい褒めますから!」

「り、リテアちゃん、ちょっと待ってください! ここではやめて……り、リウ様、行かないでください! リテアちゃんを止めてから……!」


 照れて真っ赤になってしまいそうなので、リウは心が痛むのを感じながらもその場を離れた。

 少し距離を取ったところで、リウが心配そうに二人がいた方を見てから頭を横に振る。


「ええと……後は、天界の二人ね。どこに……」

「子竜ちゃんを置いていくなんて、リウちゃんってば薄情〜。くふっ、照れてたもんね〜?」

「ひゃっ……でぃ、ディライト……!? ……ひ、一人? ヴェルジアはいないの? リアも?」

「一緒に行動なんかしないよ〜……ボク一人。遠くからだけど、リテアちゃんたちのこと見守ってたんだよ〜。ヴェルくんと妹ちゃんの邪魔したくもないしね〜」

「そ、そう……」

「似合ってるね〜、そのドレス」

「り、リテアとの話聞いていたのよね!?」


 リウが少し顔を赤くしながら叫ぶと、ディライトが楽しそうに笑った。

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