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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ノルティアナの舞踏会⑯

 リウがじっと二人の様子を観察しながら、二人が話し始めるのを待つ。

 そんなリウの視線を受けながらレアとリテアは顔を見合わせると、通じ合ったようにこくりと頷き合った。

 二人が手を繋ぎ、レアが口を開く。


「……景色のいいところで、お昼寝をしたんです。人通りも多くて、安全だと思ったので……それで、夕方頃まで寝て……私が先に起きて、そろそろ帰らないといけない時間だったから、リテアちゃんを起こして……道を、歩いていたんですけど。なんだか、違和感があって……」

「違和感?」


 リウが軽く首を傾げると、レアが頷いた。

 そして、不安そうに少し俯くと、リテアが言葉を引き継ぐ。


「誰も、私たちのことを見ないんです。ちらりともしないし、私たちと向かい側から歩いてくる人で歩く場所が被っても、避ける素振りすらしない人ばかりで。それに、私はともかく、レアちゃんは姉様の補佐官として姿も知れ渡っています。それなのに……異常なくらい、誰も私たちを見なかったんです」

「……」

「……あの、リウ様……?」

「ああ、大丈夫よ。少し考えていただけだから。続けて」


 リウが目を伏せて黙り込んでいると、レアが心配そうに声を掛けてきた。

 それにリウは微笑みを返し、首を横に振りながらレアの頭を撫で、続きを促す。


「レアちゃんが、いくらなんでもおかしいって先に言い出して……私も、違和感があるって口に出したら……大人の、たぶん男の人……姿を隠すみたいに、ローブを着てました。フードも被ってて、顔も見えなかったです。とにかく、大人の人が近付いてきて……警戒してたら、私に手のひらを向けてきて……眠ってしまいました。魔法だったんだと思います……うぅ、練習してるのに、全然気付けなかった……」

「ああ、やっぱり魔法で……。……ああ、ディライトがレアに応えなかったのは……」


 ボソリと呟いてから目を伏せ、リウが気を取り直すように首を横に振って二人を見た。

 リテアが眠ってしまったということは、リテアはその先の出来事を知らないのだろう。

 リテアは心配そうにレアを見ながら口を閉ざし、そわそわと身体を揺らす。


「……その後……私は、身の危険を感じて……起きないリテアちゃんを抱えて、転移をしたんです。ただ、気が動転していて……その、凄く遠くに……お城に転移できていたら、よかったんですけど。それで、ディライト様たちを呼んでみたんですけど、誰も返事をしてくれなくて……リウ様に、お城に転移してもらいました」

「……そう……そうなのね。……先ずは、よく頑張ったわね。二人とも、怖かったでしょう。本当によく頑張ったわ」

「……そんな……リウ様、私は逃げただけで……」

「そんなことありません! レアちゃんは凄く頑張りました! 褒められるべきです! 私は、眠らされちゃって……凄く怖かったはずなのに、レアちゃんを勇気付けることもできませんでした……」

「リテアちゃん……それは、リテアちゃんが悪いわけじゃ……」

「リテアだって頑張って警戒してくれたんでしょう。少し上手くいかなかっただけよ、あまり落ち込まないで。……まぁ、リテアの安全のためだから、ディライトやヴェルジアは、厳しく言うかもしれないけれど。特訓すらさせるかもしれないわね……」


 リウがそう言って苦笑いした。

 震え上がるリテアの頭を撫でつつ、リウはレアとリテアの顔色を確認する。

 帰ってきたばかりの頃や、起きたばかりの頃は随分と顔色が悪かったが、今はかなり良くなっている。


「……二人とも。私は少し、ディライトに会ってくるから……うーん、そうねぇ……お母様……は、今は城の外にいるみたい……じゃあ、今リアを呼ぶから、ここで待っていてね」

「えっ? 母様を……?」


 リテアが目を丸くしながら首を傾げると、リアが何も無いところから飛び出してきた。

 そして、思い切りリテアを抱き締めると、その身体に傷が無いかどうか確認する。


「リテア! リテア、大丈夫ですか? 怪我は……」

「だ、大丈夫です。レアちゃんが一緒に逃がしてくれて……」

「レアも、怪我はありませんか? お姉さまに言いづらいならお姉さまが行ったら治してあげますから、隠し事はダメですよ?」

「ほ、本当にありません。大丈夫です……」

「リアったら……むぅ。……まぁいいわ、とにかく私は行ってくるから、二人のこと見ておいてね」

「はい、お姉さま。ちゃんと見守っておきます」


 リアの返事にリウが満足そうに頷き、転移で去っていった。

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