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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1043/1101

ノルティアナの舞踏会⑬

 レインとレイシェを交えての試着会から、しばらくの時が経った。

 今日は仕事も落ち着いており、レアは仕事を休んでリテアと遊んでいる。

 今日はどこで遊んでいるのだろうか、なんてことをリウが考えつつ、書類の処理を進めていく。


「……あ、お父様。その書類はこちらに。えっと……それから……ディーネの書類提出が遅れてる……忘れていないか確認と、違うならどうして滞っているのかも……後は……あ、舞踏会の準備についての報告書……備品が足りてない……? どうして……あ、ここが変更になったから……人手は、もう足りているのね。道具も増やしたから大丈夫……後でメイリーの様子も確認してこないと。あと……あとは……」

「リウ、少し休んだらどうだい? 普段よりは、確かに落ち着いてるけど……レアがいない分、少し負担が増えているだろう?」

「いえ……もう少しの辛抱ですから。この辺りを処理し終えたら、また落ち着けるはずです。それまでは、頑張らないと……よしっ」


 リウが気合を入れ直し、再び書類に向き直った。

 真面目なのはいいことだが、そろそろ休んだ方が……と、レクスが眉を寄せる。

 そして、自分の仕事をしっかりとこなしながらもレクスが止めるべきか悩んでいると、扉がノックされた。

 集中していたリウがびくりと肩を震わせ、扉の方に視線を向けるとその二色の瞳が驚いたように丸くなる。


「……レア? 入っていいわよ、どうかしたの?」


 リウが少し戸惑いながらもそう言って許可を出すと、レアが部屋に入ってきた。

 その後ろにはリテアもおり、リテアはぺこりとお辞儀をしてからリウに駆け寄ってくる。


「姉様! 会うのは少しだけ久しぶりになるでしょうか。お元気でしたか?」

「ふふ、そうね。少しだけ、久しぶり。私は元気よ、リテアは大丈夫?」

「はい! 姉様からの招待状を受け取った時、びっくりして、嬉しくて嬉しくて! 今は元気に衣装作りに励んでいます! さっき、お師匠様――じゃなくて、メイリーさんに意見をいただいてきたんです! 始めたばかりにしては良い出来だと褒めてくれたんですよ!」

「あら……ふふ、良かったわね。それで、ここに来たのは、何か用事があるからかしら?」

「あっ、そうでした……! ごめんなさい、レアちゃん。姉様とお話したくて、つい……」


 ぴょこぴょこと軽く跳ねながら話していたリテアがハッとしてレアに謝り、そっとリウから距離を取った。

 入れ替わるようにしてレアがリウの前に立ち、無言で書類を手渡してくる。


「……えっ……と? レア……? これは……」

「ディーネ様が滞らせていた書類です。完成はしていたそうなのですが、届けに行く時間が中々取れなかったそうで。それと、こっちが足りていない備品の詳細なリストです」

「……え、あ……ありがとう……え? ……えっと、確かに欲しかったけれど、どうしてわかって……それに、レアは今日はお休みなんだから……」

 

 お礼を言いつつもリウが眉を寄せると、レアがふるふると首を横に振った。

 そして、リテアと手を繋ぎながらにっこりと楽しそうに笑う。


「リテアちゃんが提案してくれたんですよ。舞踏会を開くとなると忙しくなりそうだから、リウ様のところに行くついでに必要なものを届けませんか、って」

「……リテアが提案したからって、お休みなのに仕事に関わっているのは事実でしょう……?」

「楽しかったからいいんです。それに、お休みの日に私が何をしようが勝手です。それとも、リウ様はお休みの私の楽しみを奪うんですか?」

「……仕方ないわね。リテア、書類の内容は見てない? リテアなら大丈夫だとは思うのだけれど、あんまり外部の人に内容を知られるのは……」

「大丈夫です! 道が広くて、危ないものも無くて、通ってる人が少ない時だけですけど、レアちゃんに私の目を隠してもらって、レアちゃんの誘導で進む遊びをしていたんです! それ以外の時も、ぎゅっと抱きかかえて運んできました!」


 リテアがそう言って胸を張ると、リウが微笑みながらその頭を撫でた。

 どうやら本当に楽しんで遊びながら運んできたらしい。

 自分たちのことを心配してやったというわけでもなさそうなので、やりたくてやったのならとリウがレアの頭を撫でる。


「さて。執務室に来たのは、私への挨拶と書類を届けるためかしら? ……リテア、お父様への挨拶は、できる?」

「えっ? ……あっ……!? しっ、失礼しました! えっと……!」


 リウと会えて嬉しくなり、レクスの存在に気が付いていなかったリテアが動揺しながら軽く自分の身だしなみを確かめた。

 そして、レクスの前に立ってぴんっと背筋を伸ばしてから、少しだけぎこちない動きでお辞儀をする。


「……ご……ごきげんようっ、おじいさま……! 会うのは……ええと……初めて挨拶をした時以来……? でしょうか……?」

「ああ、そうなるね。しばらく会っていなかったけど、元気だったかい? 勉強も頑張っているかな」

「はい! ……兄様、勉強のことになると……厳しいから……うぅ、姉様ぁ。兄様が酷いんです、舞踏会があるから、存分に楽しめるように今詰め込むって言って……!」

「よしよし。リテア、泣かないの。言い方だけでも優しくするよう言っておいてあげるから。にしても、リテア……いつの間にお父様と挨拶を……? 今日が初めてじゃなかったのね?」

「うぅ……はい。父様と母様が、私のおじいさまだからって天界で紹介してくれたんです。その時は確か、姉様のお仕事が忙しくて、呼ぼうにも呼べなかったと聞いています」

「ああ、なるほど……気を遣って教えなかったのね。……今度初対面の様子がどうだったか聞きに行かないと。ふふ……」


 リウがくすりと微笑み、まだ少し緊張しているリテアを優しく抱き締めた。

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