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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ノルティアナの舞踏会⑩

 レイシェと話をしながら、勧められるがままにリウが紅茶を飲んでいると、ようやく落ち着いてきたらしい。

 ふぅ、と息を吐き出したリウが少し苦笑いして、リウを落ち着かせるために尽力してくれた二人を見る。


「……ごめんなさい。あの時のことを思い出したら、それでいっぱいになってしまって……」

「気にしないで。僕の方こそ、ごめんね。知ってたのに……」

『そうですわ、謝るべきはリウではありません。ですから、そんな顔をしないでくださいまし。申し訳ないのなら、話を続けてくださるのが一番ですわ! どうしても申し訳なくてしょうがないのなら、お兄様を責めても大丈夫ですわ!』

「レイシェ?? ちょっと?」

「えっと、うっかり忘れていただけのレインを責めるのは……お門違い、とまでは言わないけれど……少し理不尽じゃないかしら」

『お兄様は八つ当たり上等のはずですわ! ねっ!』

「……否定はしないけど、勝手にそんなこと決めないでよ……理解してるからこそで、他の人相手じゃやらないんだろうけど。全くもう……」


 レインがそう言ってレイシェの頭を撫でた。

 勝手に言ったので少し申し訳なさそうにしていたレイシェがふんにゃりと嬉しそうに微笑み、頭をレインの手に擦り寄せる。

 仲の良い兄妹をリウが微笑ましそうに眺めつつ、時間を確認する。


「……もう少しで時間ね。思っていたより取り乱していた時間が長かったみたい……ごめんなさい、レイシェ。私と話したがっていたのに……」

『リウったら、気にしすぎですわ。どうせメイリーのところへは一緒に行けるのですもの。リウは、こんなことを言われても喜んだりはしないかもしれませんけれど……取り乱して怯えているリウはとっても新鮮で……その、不覚にも……可愛いと思ってしまいましたの』

「リウの取り乱し方って可愛いよね。たまにバーサーカーとかマッドサイエンティストになるけど」

「このっ……。……うぅ。じ、事実だけれど、あんまり言わないで! ほらレイン、早く立つ! メイリーを待たせたらとんでもないことなるかもしれないわ! 早く行かないと!」


 リウがそう言ってレインを急かすと、レインがのんびりと立ち上がった。

 ゆったりとしたマイペースな動きにリウが不満そうな顔をする。


「……そもそも、リウは転移で行けるよね? レイシェと話したいなら、ギリギリまで部屋で話しててもいいんじゃない?」

「それじゃあ普段お城で働いてくれる人たちに挨拶できないわ。基本的に私は執務室に居るし、書類運びはレアとお父様がやってくれるから……機会を逃したくないの。……レイシェが嫌なら……もしくは、凄く私と話したいのなら。それは凄く嬉しいし、ええ、もちろんギリギリまで話しても大丈夫よ」

「……実は忘れてただけなんじゃ……」

「うるさい。ばか。黙って」


 的確に図星を突いてくるレインをリウが罵倒して黙らせた。

 なんとなく言い方が可愛かったので思わず黙り込んでしまっただけなのだが、リウはレインが怯んで黙ったのだと思っていそうな顔をしている。


「行きましょう、レイシェ。レインも付いてきてね」

「……物騒なことは言うのに、なんで暴言とかになると途端に語彙が少なくなるんだろう……? ……孤独だったから、言い合いをあんまり経験してない? 思えばリウがそういうのしてるの見たことないな……情報としても知らないし……」

「レイン? 何をぶつぶつ言っているの? 置いていってもいい?」

「ああ、ごめん。僕が悪かったから置いていかないで……」


 レインがそう言って急いでリウに駆け寄った。

 そして、手を繋いでいる二人の後ろを歩く。

 リウが通りかかった人たちに軽く挨拶をしながら歩いていくと、すぐにメイリーの仕事部屋が見えてきた。

 しかし、ふとリウが足を止め、きょろきょろと周囲を見回す。


『リウ? どうかいたしましたの?』

「部屋にメイリーがいない……もう時間なのに。……何かあったのかしら」


 リウがそう言って表情を曇らせた。

 心配そうにリウがきょろきょろと視線を彷徨わせ、メイリーの気配を探る。

 そわそわ、ゆらゆらと落ち着きがなくなるリウに、レイシェとレインも顔を見合わせて周囲を眺め、何か心当たりはと考える。


「うう、メイリー……あっ!」

『どうしましたの?』

「よ、良かった、外出していただけみたい……今、向こうを歩いているわ。すぐに来るはずよ。……よかった」


 リウがほっと息を吐き出し、小走りで廊下の先へと向かった。

 そして、小さく手を振るとニコニコとメイリーに声を掛ける。


「メイリー! どこへ行っていたの? 心配したわ。何か問題でもあった? もしあったなら、ちゃんと教えてね。国王である私が――」

「お、落ち着いてくださいぃ、リウ様ぁ……心配したのはわかりましたからぁ。ごめんなさいぃ……」

「ええ、心配したわ! メイリーがこの部屋から離れるなんて……一体どうしたの?」

「布を受け取りに行っていたんですぅ。前々から依頼していたものでぇ、今日の午前に受け取る予定だったのですがぁ……トラブルで遅れてしまったみたいでぇ。今、受け取ってきたんですよぉ」

「あら、そうだったのね……メイリーに何かがあったわけではなかったみたいで、安心したわ。さぁ、早速中に入りましょう」


 リウがメイリーにそう声を掛け、レインとレイシェにも手招きをして部屋に入っていった。

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