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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ノルティアナの舞踏会④

 ディーネが飛び込んできてから、数分後。

 現在、執務室の中心には人の山ができていた。

 リウはその中心で押し潰されており、時折少しだけ苦しそうな声が聞こえてくる。


「……大丈夫でしょうか、リウ様」

『うーん……りーちゃんのことだから、苦しそうな声も別に苦しいんじゃなくて、危うく怪我をさせそうになったとか、その辺りだろうし……大丈夫なんじゃない?』

「でも……あの山の中心、一番下にいるんですよ?」

『……みんなりーちゃんのこと大好きだし!』

「そ、そういう問題なんでしょうか……」


 レアがそう言って眉を寄せながら人の山を見た。

 リウの配下や、更には魔王たちまでもが山のように一箇所に集まり、リウにくっついているのである。

 一応、リウなら圧死ということは無さそうだが、それでもとても心配になる光景である。

 止めに入ろうかとレアが考えるが、気持ちはとてもわかるので一歩近付いてはまた離れ、を繰り返している。

 レアがまたそんな行動をしようとした時、リウが魔法で声を届けてきた。


『れっ、レア……ディーネぇ……! た、助けて……このままじゃ、怪我させちゃう……』

「ぜ、全然大丈夫じゃなさそうですよ、ディーネ様!?」

『そ、そうだね、ごめん……えーっと、みんなー! りーちゃんが困ってるから一旦離れてー!』


 ディーネが山の周囲をくるくると回り、声を張り上げてみんなにそう伝える。

 しかし、山はびくともせず、リウにひっつくばかりだった。

 レアとディーネが顔を見合わせ、困った顔をする。

 うーん、と二人で唸ったあと、レアは名案を思い付いた顔をして、山に二歩ほど近付いて声を掛けた。


「みなさん、聞いてください! リウ様がこの状況をとっても嫌がっています!」


 ぴく、といくらかの人の肩が動いた。

 しかし、ざわつくばかりで退く様子のない人の山に、ふぅっと息を吐き出してレアが言葉を続ける。


「なので――専属補佐官権限で! 今すぐ退かなかった人は! 招待状、もといメッセージカードを没収します!!」


 ぴゅん、と人の山が瞬く間に崩れ去った。

 その中心からようやくリウの姿が露わになり、レアはほっと息を吐く。

 そして、ディーネは――


『わぁあああああルリちゃーーーーん!!』

「うわぁっ!? り、リウ助けて! 盾になって! ねーさまが怖いよ!」

「行きなさいっディーネ! 私を圧迫してきた恨みぃ!」

「わーっ!? リウの裏切り者ぉ!?」


 しれっとリウの近くにいて完全に姿が見えなくなっていたルリアに突撃していた。

 一瞬の出来事にレアは呆気に取られ、目を丸くしている。


「う、うぅ……くるしい……ねーさま、離して……」

『ダーメ! りーちゃんのこと困らせたんだから、ルリちゃんには罰を受けてもらうよ! ぎゅぅ〜っ』

「ね、ねーさまがやりたいだけでしょ! リウ、ねぇリウってば! 僕を見捨てないでよ!」

「嫌。一番近くで抱きついてたのはルリアだもの。苦しかったんだから。これは当然の報いなの!」


 リウがそう言ってふいっとそっぽを向いた。

 しかし、ふとディーネを見るとゆっくりとディーネに近付いていく。


『なぁに、りーちゃん? どうしっ……痛っ!? な、なに!?』

「……ディーネは、何か適当なことをレアに言っていたから……少しだけ、お返し。そんなに強くはやってないから大丈夫よ」


 ディーネに軽めのデコピンをお見舞いし、リウがレアの傍に戻った。

 適当なことを言うディーネに対し、レアは困って何もできていなかっただけでどうにかしようと必死に考えてくれていたので、軽く頭を撫でてリウはレアを褒める。


「頑張ってくれてありがとう、レア。たくさんどうすればいいのか考えてくれたんでしょう?」

『あー! れーちゃんずるーい! 私も! ねぇりーちゃん、私もー!』

「ディーネは適当なこと言ってたからダメ。後でね」

『後で! 絶対だからね! 約束だよ! 忘れちゃダメだからね!?』

「…………何を?」

『りーちゃぁん!?』


 忘れたふりでディーネをからかい、リウがくすりと微笑みながらねたばらしをした。

 そして、一旦レアから離れようとすると、ちょいっと軽く裾を引かれてリウが振り向く。

 それをしたのはレアらしく、少し躊躇いながらも裾を握り締めているレアがリウの視界に映った。


「あら、レア? どうしたの?」

「……えっと……リウ様、さっきのディーネ様だけじゃなくて……ルリア様のこともからかっていませんか?」

「んっ!? ……ふ、ふふ……ふふふっ。バレちゃったわね。ええ、そうよ。よくわかったわね?」

「リウ様、苦しいのは感じるのかな……って。……感じますか?」

「いいえ、感じないわ。私に痛覚は無く、呼吸も必要ないから息苦しさも感じない。圧迫されたとて、ちょっと動きづらいのが嫌なだけね。まぁ、何にせよ嫌だから、当然の報いね。うん。別にあの二人は仲良しだし……大丈夫よ。たぶん」

「……えっと……ディーネ様が元気になる代わりに、ルリア様が萎れていっているような……本当に大丈夫ですか?」

「ディーネっ!? や、やりすぎはダメ! ディーネ、ディーネ! 正気を失わないでー! ああっルリア死なないでお願いだから行かないでだめだめだめ! 気絶しないでぇ!」


 悲鳴を上げながらディーネを正気に戻そうと揺さぶり、ルリアには治癒をしてと慌てながら必死に行動しているリウを眺め、レアはあっちでは手伝えないからとしれっと配下たちに混ざって執務室に来ている他の魔王たちの対応を開始した。

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