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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1033/1102

ノルティアナの舞踏会③

 レインが逃げていったのを見届けて、リウが息を吐き出す。

 そして、ディライトを見ると、そっと口を開いた。


「ねぇ、ディライト……お願いがあるのだけれど」

「ん〜? 何〜?」

「リテアの勉強の日程って、調整できる? 舞踏会に参加してもらいたくて」

「あ〜、できるよ〜。別にまだ日にち空いてるしね〜。勉強があるから参加できないって、可哀想だしね〜。……男装で参加するって言うかな」

「別にいいわよ。まぁ、ちゃんとリテアってわかる格好ではいてほしいけれど……あれはあれであの子の個性だし、男装をしている時点でわかりそうね。レアと踊ってくれるかしら」

「……そういえば、子竜ちゃんは〜?」

「レア? レアは――」


 リウがレアの居場所を伝えようと口を開きかけると、ガチャリと扉が開いた。

 そして、顔を赤くして涙目になっているレアが飛び込んできて、思い切りリウに抱きつく。


「うう……っ、リウ様ぁ……」

「あ……あら、レア……ど、どうしたの? 私、何か嫌なことでも書いた……?」

「ちがっ、違いますっ……でも、でも……リウ様が、あんなこと書くから……っ」

「や、やっぱり嫌なことを……!?」

「……ああ、手紙……リウちゃん、子竜ちゃんが言ってるのはたぶん逆の意味でしょ〜? 感動して泣いちゃったって言ってるんだよ〜」

「リウ様ぁ……そ、そんなに、私を信頼してっ……」

「え……当たり前でしょう? あなたは幼いのに、あんなに頑張ってくれて……」


 ぐすぐすとレアが泣きながらしがみついてくるので、リウが少し困ったような表情をしながらレアを抱き上げた。

 そして、ディライトを見ると申し訳なさそうに言う。


「ごめんなさい、あまり人には見られたくないでしょうし、他に用事がなければ、ディライトは帰ってくれる……?」

「うん、大丈夫だよ〜。……でも……なんというか、大変なことになりそうだね〜……」

「大変なこと……? えっと……よくわからないけれど……リテアのことはお願いね」

「それは任せて〜。ちゃんと間に合うように、きっちり勉強させておくからね〜。あ、そうだ子竜ちゃん。リテアちゃんのやる気を出させるために名前を使わせてもらうけど、いいよね〜?」

「ぅ、はいっ……あの、リテアちゃんが来てくれないと、寂しいので……厳しく、お願いしますっ……」


 レアが涙を拭いながらそう言うと、ディライトが頷いて去っていった。

 それを見送ったリウは手の甲で目を擦っているレアを止め、優しく目元にハンカチを当てる。


「ご、ごめんなさい、リウ様。感極まって、しまって……」

「ふふ、いいのよ。そんなに喜んでくれるなんて思っていなかったから……凄く嬉しいわ。……感謝の気持ち、普段から伝えるようにはしているはずなのに。どうしてそこまで……」

「具体的な例まで挙げて……本当に感謝していることが、伝わってきて……凄く嬉しくて……」

「……そう。ごめんね、レア……その、ありがとうとは、言えるのだけれど……どういうところに感謝しているとか、改めて口にするのは、恥ずかしくて。言える時も少ないわけではないけれど……」

「いいんです。気持ちはちゃんと、伝わっていますから。リウ様が私たちに向ける眼差しは、いつも凄く優しいですから、あまり感謝を伝える機会の無い人にも、伝わっていると思います」


 レアがそう言って微笑み、目元に当てられていたハンカチを握り締めた。

 そして、目を逸らしながら小さな声で言う。


「ハンカチ……汚してしまって、ごめんなさい。洗って返しますね」

「ん……? ああ、大丈夫よ。魔法で洗った方が早いから、気にしないで」

「あっ……そ、そうですよね。うぅ……泣いていたから、まだ調子が……大体のことは、リウ様が一瞬でできてしまうのに」

「ふふ、なら少し休みましょうか。私も……はぁ、ずーっと悩んでいたから、少し疲れているのかもしれないわ」


 リウがそう言って肩を竦めると、レアが目を丸くした。

 そして、嬉しそうに微笑みながら肩から力を抜く。

 それを見たリウも身体から力を抜いて、落ち着くために紅茶でも淹れようかと思案していると、再び扉が開け放たれた。

 そして、次の瞬間にはリウの腹部に衝撃が走り、油断していたリウは地面に倒れ込んでしまう。


「な、何……ディーネ?」

『りーちゃんりーちゃんりーちゃん! りーちゃんってば! あれ何!? あの手紙、なんなの!?』

「え……っと、手紙? 招待状のこと、よね? そ、そんな混乱している顔をして、一体どうしたの? ……もしかして、レアと一緒?」

『たぶんそう! 私、びっくりしちゃったんだから! りーちゃんってばもー! サプライズにもほどがあるよー! あんな嬉しいこと書かれちゃったら突撃するしかなくなっちゃうでしょ! 本物でいいんだよね!?』

「ほ、本物よ。本物だけれど……突撃するしかなくなるっていうのは……そんなことは無いと思うわ。レアとディーネしか来てないもの」

『みんな頑張って自制してるだけだよ! 部屋の外に出たら大変なことになると思う!』


 そう騒ぐディーネにリウは戸惑う表情を見せ、一先ずは落ち着かせようとその頭に手を伸ばした。

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