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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1031/1105

ノルティアナの舞踏会①

「招待状〜?」


 天界にて、ヴェルジアから手紙を差し出されたディライトが胡乱げにそれを見た。

 突然渡されたものである、疑うのも無理はない。


「……行かないの?」

「こんなに怪しいのに〜? ボクはパス――」

「リウからの招待状だけどね、これ」

「行く。なんでそれを早く言ってくれないの? ヴェルく〜ん? わざとだよね〜……」

「わざとだけど。いいでしょ、別に……ちょっと反応を見てみたかっただけで、リウからの招待状だってことを隠すつもりなんて最初から無いよ」

「……ならいいけど〜。はぁ……招待って、リウちゃんは何をするつもりなのかな〜」

「知らない。中に書いてあるって。とりあえず僕はリアとリテアにも渡してこないといけないから、もう行くね。すぐ開けちゃっていいってリウが……あ、リウの前では開けちゃダメだって言ってたかな。からかおうとしてリウの目の前で開けようとしたらたぶん没収されるから、気を付けて」


 ヴェルジアの忠告にディライトが目を丸くし、頷いた。

 招待状が没収されるのは、流石に困る。

 リウ相手では取り戻すのも、少々難しいだろう。


「……ありがと〜、からかいに行くつもりだったよ〜」

「だろうね、直接渡しに来ないのも珍しいし、何かあるんだろうから」

「うんうん〜。いや〜、ほんとよかった……」


 少し冷や汗を流しながらディライトがしみじみと呟き、去っていくヴェルジアの背中を見送ってから手紙に視線を落とした。

 封筒に包まれているので、中身はまだわからない。

 触ってみた感じでは、中身は薄く、手紙というよりもメッセージカードに近い感触がする。

 リウが個人的な手紙を書く時は、大体それなりの枚数にはなるので。


「……本当に簡単な招待状って感じかな〜? でも、それならなんでリウちゃんの前では……まぁいいや、さっさと確認しよう」


 封筒に触れながらディライトが推測を口にし、しかしそれにも納得ができず首を傾げ、さっさと開けることに決める。

 リウからの手紙はそう多くないので、ディライトは頬を緩めながら封筒を開ける。

 中身を出すと、そこにはやはり一枚だけの小さな紙が入っていた。

 流麗な文字で、つらつらとディライトへの感謝が綴られている。


「……!? げほっ、げほっ……! な、何これ!?」


 動揺のあまり咳き込みながら、ディライトが普段のリウなら口にしないような感謝の言葉がみっちりと詰め込まれているメッセージカードを読んでいく。

 大量の感謝の言葉を超えた先には、舞踏会に招待する旨と、そして最後に親愛を込めて、リウよりという言葉で締め括られている。


「……悪戯?」

「違うよ、リウの気持ちを無下にしないで」

「うわっびっくりした……レインくん? なんでここに〜?」

「それ、その……あー、招待状。僕が原因だから、説明しないといけないなって……あ、ここへはリウに転移してもらったよ」

「ふぅ〜ん……パニック一歩手前だから説明してくれるのは嬉しいけど。……で? これ、何?」

「正真正銘、リウが書いた、リウの気持ちを綴ったものだよ」


 レインが笑顔でそう答えると、ディライトがじとりとレインを睨んだ。

 その視線を受けて、レインは苦笑いするとそっと目を逸らしながら言う。


「……それ……っていうか、全部だけど……書いた時、酔ってたから……凄く正直なんだよね」

「酔った? お酒飲んだの? なんで?」

「うっ、それは僕のせいじゃないから、そんな怖い顔しないで……リウが克服したいって言うから、僕はお酒をジュースで薄めたりするのを手伝っただけで……」

「はあ。……本当にそれだけ?」

「……お酒克服したら、舞踏会とかやってもほろ酔いしながら楽しめるねって言ったら、その気になっちゃって……招待状を書き始めて……なんか、こう……色んな感情が溢れてきたらしくて。そんな感じになった……よ?」

「……リテアちゃんとか妹ちゃんの分もあるみたいだけど〜……あの様子じゃヴェルくんもかな〜。まさか、全部酔ってる間に書いたの?」

「うん。魔法で同時にペンを動かして、一気に。全部内容違うんだから、器用だよね……可愛い……」

「あ〜……それなら時間がかかることも無いし、酔いが覚めて冷静になるのこともないのか〜……」


 なるほど、とディライトがメッセージカードに視線を落とした。

 しかしすぐにぱちくりと目を瞬かせ、レインを見て首を傾げる。


「でも、だからってリウちゃんがこんな恥ずかしいものを渡してくるとは思えないんだけど。目の前では開けないように言った辺り、内容は理解してるんだろうし〜……レインく〜ん? 何かまだ言ってないことある〜?」

「……さて! 僕はまだまだ説明してこないといけないから、もう――」

「レインくん?」

「……勿体ないから渡そうって説得した。舞踏会もやりたいでしょって……別に変なことはしてないでしょ!?」

「ん〜……そうだね〜。……酔わせた時に変なことしてない〜?」

「…………ちょっとだけ……髪先を撫でただけだよ……?」

「ん〜、有罪かな〜」

「ああっ待って! ディライト! 僕にはまだ仕事が――」


 レインの言い訳を聞かず、ディライトが無言でその襟首を掴んで引きずっていった。

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