ifストーリー 楽しい学園生活⑬
そして、一時間弱ほどの時間が経ち。
リウは顔を顰めながらレインとともに帰り道を歩いていた。
こうなる予想をしていなかったわけではないが、リアと帰ればまだマシだと考えていたのだ。
しかし、リアはリウに、今日は友達と帰るからという旨の連絡を寄越し、二人で帰る羽目になってしまったのである。
「リウって詰めが甘いよね。可愛い」
「うるさいわね。だって、リアが私のお誘いを断るなんて……うぅ……すぐには帰ってこないみたいだし。お友達とちょっと買い物に行くって……うぅー……」
「そういう日もあるでしょ。それか……反抗期とか?」
「もう終わったわ。短かったの。それに、私に対してはそんなに変わらなかったし。ちょっとイライラしやすくて、ちょっとしたことで怒っちゃうくらいで……お父様とお母様に対しては、ちょっと言い回しがトゲトゲしていたけれど」
「リウはほら……妹に甘すぎて本当にダメなことした時以外ニコニコして全肯定でいるからでしょ? ちゃんとしっかり話を聞いて……まぁ、リアもリアで、育ちがいいから酷い暴言とか言わないんだろうし、リウが怒るタイミングなんてそうそう無いだろうからね。……そういえば、リウは反抗期で一回家出したんだっけ」
「う……!?」
リウがビクッと震えて目を逸らした。
そして、きょろきょろと視線を彷徨わせると、引き攣った笑顔を浮かべてよくわからないとでも言いたげに首を傾げる。
わかりやすく動揺しているリウに、レインが苦笑いした。
「確か……自由になりたいとか言い出して……」
「あ……あれは……! あれはっ……ほら、家もこっちじゃなくて……本邸にいたから……令嬢としての勉強や習い事も本格化していて、窮屈で……」
「ふぅん、それ以外の理由もありそうだけどね。難しい本に飽きて年相応の恋愛小説とか読んでた時期だし。娯楽としてそういう本を読んで触発されたんじゃないの?」
「うっ……だ、黙って! そういうのじゃないの! わ……私はただっ……ううぅ〜……」
リウが顔を赤くして黙り込んだ。
そして、怒った顔をして弱々しくレインの肩を殴る。
それにレインは緩んだ笑顔を浮かべつつ、肩を殴ってくるその手を軽く掴んで止める。
「わかった、わかったから。それより、今はもう大丈夫なんだよね? また家出事件なんて起きたら大変だよ」
「……むっ……お父様とお母様から何か頼まれてる?」
「うーん……どちらかと言うと、僕の父上と母上のお節介かな。最近話したらしくて……最近、リウのやんちゃが少ないから心配してたって。だから僕にそれとなく聞いてほしいって言ってきたんだよ」
「全然それとなくじゃない……し、や、やんちゃって何……!?」
「リウは昔からストレスとかが爆発して何かしらの事件を起こすでしょ? あれだよ。それこそ家出もだよね」
「そ、そんなこと……」
「お菓子を大量に作ってご自由にどうぞって殴り書きのメモを置いてどこかに出かけたり、部屋に引きこもって一日中出てこなくて……何をしてるのかと思ったら、寝ずに本を読んでたこともあったね。ご飯も食べずに。些細なものでも、リウの家族からすれば大事件でしょ。心配掛けてるんだから」
「…………ストレス発散は、大切だから……」
ぷるぷると震えながらリウが言うと、レインがその頭を撫でた。
事件を起こしていることは認めたらしい。
「…………家出の件は、その。レインも探してくれたって……夜遅くのことだったのに」
「ああ……なんかそわそわして寝れなくて」
「まだ、私からはお礼……言っていないわよね。ありがとう……」
「え、何……可愛いね。凄いいい子……家出したとは思えないくらい……」
「そっ……それとこれとは関係ないでしょう!? そんなこと言うんだったら、私、先に行くから! じゃあまた!!」
「ああっ、待って! 折角なら尾けるんじゃなくて一緒に帰りたい! 待ってー!!」
叫ぶレインを無視し、リウは足早に家へと向かうのだった。
次話はまた別のお話をやります。
ノルティアナの舞踏会のお話です。
新キャラ出すとかは大変なので……身内だけでお祝いとか、かなぁ……




