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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ifストーリー 楽しい学園生活⑨

 ああでもない、こうでもないと悩むリアを、リウは困った顔で見つめる。

 宣言通り、リアはリウに自分で着飾る楽しさを知ってもらおうと頑張っているのだが、あまり成功はしていなかった。


「リア、あのね。私に新しい楽しさを教えようとしてくれるその気持ちは、嬉しいのだけれど……向き不向きは、どんなものにもあるものだから……ね? そろそろ……」

「うっ……た、楽しくないですか?」

「今は、楽しいわ。でも、それはリアと一緒だからであって……一人でやって楽しめるとは、到底……他の人を着飾るのはそれなりに楽しめるのだけど、自分自身となると……ね」

「そ、そんな……うぅ……お姉さまと語り合いたいのに……」

「ご、ごめんね、リア」

「いえ……お姉さまが謝ることでは……残念ですが、仕方ありません。長く付き合わせてしまって、申し訳ありませんでした。この辺りで切り上げますね」


 しょんぼりと肩を落としながら、リアがそう言って服を買った。

 荷物を抱えて店から出ると、そこには見慣れた車が泊まっており、家の者が立っている。


「お嬢様、お荷物お預かりします」

「あっ……はい、よろしくお願いします。ええっと……私の服もお姉さまの服も入っていますから、荷物はリビングにお願いしますね。……いつも思っているのですが、なんで行く場所も伝えていないのにいるんですか?」

「確かに預かりました。では、お嬢様方。引き続きお楽しみください」

「ああっ、ちょっと! 無視は酷いですよ!」


 リアが少しだけ怒りながら声を張り上げるが、車はさっさとその場を離れてしまった。

 むぅ、と拗ねた顔をするリアを宥め、リウが首を傾げながらリアに尋ねる。


「まぁまぁ……後で聞けばいいでしょう。それで、リア。他に行きたいところはある?」

「うう~……凄く気になりますけど、ここで唸っていても仕方ないですもんね。どうしましょうか……今から花屋に行ってもいいですけど……それとも、少し早めのお昼ご飯にしますか?」

「……うぅん、そうねぇ……って、あら……? あれって……」


 リウが考えるのを中断してふとリアの向こうへと視線を向けたので、リアが不思議そうにしながら振り向いた。

 するとそこに見慣れた姿を発見し、リアが固まる。


「……えっ、ヴェルジアさん……!? なんでここに……!? ……おっ、おおお、お姉さまぁ!」


 リアが顔を赤くしてリウの後ろに移動した。

 そして、リウの身体で身を隠しながら身だしなみを確認し、恐る恐る顔を覗かせる。


「……ヴェルジアさん……?」

「あー……奇遇だね。こんなところで会うなんて……えっと、何してるの?」

「ひゃ……な、なな、なんでもありませんっ。ごきげんよう!!」

「……ふふ、可愛い。急にあなたが現れたものだから、身だしなみが崩れていないか心配になってしまったみたいでね。気にしないであげて」

「お、お姉さま! どうして言ってしまうんですか!」

「ああ、なるほど。可愛い」

「でしょう」


 リアのことを可愛いと言い、共感を示すように頷いている二人にリアが顔を赤くしながら頬を膨らませた。

 そして、リウとヴェルジアの間に割り込むと、じとりとヴェルジアを睨みながら尋ねる。


「それで……ヴェルジアさんはどうしてここに?」

「拗ねてる……ふふ、散歩してただけだよ。それで、二人の姿が見えたから挨拶しに来たんだ。邪魔だったらごめんね」

「……そういえば、ヴェルジアさんの家はこの辺りでしたね。それで……あっ。……そうだ、ヴェルジアさん! 家に植物がたくさんありますよね! 種を少し譲ってもらえませんか!? 綺麗な花の!」

「種? あるけど、なんで?」

「あ……ええと、ね。リアではなく、私からのお願いなのだけれど……花を育ててみたくて。買おうと思っていたけれど、ヴェルジアからなら……相談もしやすいわね。あ、もちろん、相応のお礼はするわ。無償で譲ってもらおうだなんて思わないから、安心して。それに、断ってくれても構わないわ」


 リウがそう言ってヴェルジアを見る。

 するとヴェルジアは少し考え込むような表情を見せると、頷いた。


「いいよ。花の種ね。来て、すぐ近くだから。……あ、ご令嬢なんだし、恋人であるリアならともかく……リウは不味いかな?」

「……うーん。……まぁ……見られたら、リアの付き添い、という体で。家柄が家柄だもの、念の為同行するのもおかしなことではないわ。まぁ、実際に同行するなら家の者を呼ぶべきだし、違和感が全く無いとまでは言わないけれど」

「……あの人が面倒なこと言い出しそうですよね。直接ヴェルジアさんに会いに行ったりしなければいいんですけど……」

「そうね。まぁ、私が対応するから。花の種をもらったら、すぐに連絡して釘を刺しておくわ。ヴェルジアに迷惑は掛けないようにする」

「よくわからないけど……ありがとう、よろしくね。……それがお礼でいいんだよ?」

「いいえ、これは当然のことだもの。お礼ということにはならないわ」


 ふるふると首を横に振って言うリウにリアとヴェルジアは苦笑いし、のんびりと話をしながらヴェルジアの家へと向かうのだった。

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