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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ifストーリー 楽しい学園生活⑧

 リアが鼻歌を歌いながら身支度をしている。

 何着かの衣装をクローゼットから出しては鏡の前で自分に当て、悩ましげに唸ってはまた別の服を取り出す。


「うー……ん、どれにしましょうか……どれも可愛い服ですけど……どれが一番いいのか……ううう……」


 リアが鏡の前でずっと悩んでいると、コンコンとノックの音が響いた。

 ビクッとリアが肩を震わせてから返事をすると、扉の向こうからはリウの声が聞こえてくる。


「リア、まだ悩んでいるの? そろそろ昨日決めた時間になっちゃうわよ」

「えっ、もうそんな時間ですか……!? 待ってください、すぐに決めますから! 置いていかないでくださいね、お姉さま……!」

「……リアとのお出かけなんだから、置いていくわけないじゃない。リアとのお出かけ時間が減るのが嫌なだけだから、あまり焦らなくていいのよ。それに、選び抜いた服を着ておめかししたリアは、とっても可愛いでしょうし。例え時間が減っても、それはそれでとても満足できるから、本当に焦らなくていいの。くつろいで待っているから」


 リウがそう言い、ゆっくりと部屋から離れていった。

 あまり待たせるわけにはいかないからと、リアが急いで着ていく服を決める。

 そう、今日は姉妹二人でおでかけをする日なのである。

 二人は予定の無い休日が重なった場合二人でおでかけをすることにしているので、リアはリウとのおでかけに着ていく服を選んでいるのだ。

 大好きな姉に可愛いと言ってもらいたいし、隣に並んでも目劣りしないようにしたいのでとても時間がかかっている。

 嫉妬ではなく、大好きな姉と同じレベルでいたいので。


「……よし、これにしましょう。お姉さま、今行きます……!!」


 リアが一人でそう言い、服を着替えて急いで他の支度も済まし、リウの元へと向かった。

 リウがくつろいでいるであろうリビングに向かうと、そこではソファーに腰掛けたリウがスマホをいじっており、リアが首を傾げる。


「お姉〜さまっ。何をしていらっしゃるんですか? 珍しいですね、お姉さま、暇を潰す時はいつも本を読んでいるのに」

「あら、リア。ふふ、準備が終わったのね――あら、可愛い」

「えへへ。じっくり考えた甲斐がありました。でも、お待たせしてしまい申し訳ありません……」

「ん……気にしないでって言ったのに。……今思えば私、あの時余計なことを言ったわね。リアとの時間が減るのが嫌、なんて……ごめんなさい、焦らせてしまったかしら」

「言われなくても罪悪感に苛まれていたでしょうから、何も変わりません。それで、お姉さま。何をしていらっしゃったんですか?」


 リアがそう言って改めて尋ねると、リウがスマホの画面に目を落とした。

 そしてパッとリアに画面を見せる。

 そこにはたくさんの花の画像と、そして何やら花の育て方らしきことが書かれており、リアが目を丸くする。


「……お花を育てようと? いいとは思いますけど、どうして……?」

「友達がよく話していて……その子が育てたお花の写真を見せてもらったのだけれど、とても綺麗に咲いていてね。私もやってみたいと思ったの。だから、先に初心者でも育てられる種類を調べておいて、お花屋さんに寄って探してみようと思って。種から育ててみたいけれど、やっぱり最初からは難しいかしら。最初から咲いているお花を買って、枯らさないように頑張ってみるところから……?」

「ど、どうでしょう。私もお花には詳しくないので……でも、種の方が持ち運びやすいですよね」

「そうよね……うーん。……まぁ、後で考えましょう。考え事よりリアとのおでかけの方が大切だものね。ほら、リア。行きましょう」


 リウがそう言ってリアに手を差し出すと、リアが頷いてその手を取った。

 そして、家の者たちに挨拶をしながら家を出る。


「それにしても、お姉さま……今日も可愛い格好をしていますね! 素敵です!!」

「もう、リアったら……そんなに大声で褒めないで。恥ずかしいわ。それに、格好で言えばリアの方が凄いわ。私はいつもメイドに選んでもらっているから似合っているだけで……リアは、いつも自分で考えているでしょう。お化粧も自分で頑張っていて……いつも凄く可愛いもの。可愛くて綺麗で……」

「あ、あはは……褒めすぎです。お化粧は、より良くしてもらうために手伝ってもらったりしていますから。上手くいくのも当然ですよ。それより、お姉さまはおしゃれに無関心過ぎます! 放っておくと服も買いませんし、三着くらいを着回す始末で……!」

「二着よ。だって、考えるのって面倒なんだもの。そんな毎日毎日出かけるわけでも知り合いに会うわけでもないし……」

「家では楽な格好をするのが一番いいとは思いますけど……」


 リアがそう言い、困った顔で微笑んだ。

 服はたくさん買い与えられているんだから、少しでも楽しめばいいのにとリアは思うのだが、リウにとってはそれは面倒なことらしい。

 放っておけばすぐ二種類だけ組み合わせを考えて着回し始めるリウに、リアはどうにかできないものかと考える。


「……服、見に行きますか?」

「あら? 服が欲しいの? いいわよ。買ってあげる」

「い、いえ、自分で買います。お小遣い、まだまだありますから。私の買い物もそうなんですけど、それよりお姉さまですよ! お姉さまに少しでもおしゃれに興味を持ってもらいます! 服を見ること自体は好きですよね?」

「それはまぁ……組み合わせを考えるのが面倒なだけだから」

「では、時間を使ってお姉さまにおしゃれに興味を持ってもらいます!!」

「え、ええぇ……」


 リアがそう宣言し、困った声を出すリウを引っ張って歩き始めた。

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