緊急会議! リウの恋煩い?⑥
ずっと見透かしたような態度をしているレインにリウがぷくりと頬を膨らませる。
どうやらリウはレインに見透かされるのがとても嫌なようだ。
わかりやすく不機嫌なリウにレアは一先ず少しでもどうにかしようと話題を変えるべく口を開く。
「えっと……そんなことより、レインさん。あの、入ってくる時に絵画とか言ってましたけど……なんだったんですか、あれ」
「ああ……微笑んでるリウがあまりにも綺麗で、可愛くて、神々しくて……絵画みたいだと思って。なんでそんなに綺麗なの? 実は夢の中……?」
「現実に決まっているでしょう、寝ぼけているの? 沈めて目を覚まさせてあげましょうか」
「……どこに?」
「血の海」
「目を覚ますどころか永眠してない? 眠らせちゃダメでしょ。僕は別に死んでも生き返るだけだけど……」
「ええ、だから痛みで目が覚めるでしょう。さぁほら、首を差し出しなさいな」
「り、リウ様! いくら不機嫌だからって……! ぶ、物騒すぎます、落ち着いてください!」
物騒な発言を連発するリウにレアが声を張り上げた。
するとリウは不機嫌な顔をしたままレアをぬいぐるみのように抱き締め、レインを睨む。
威嚇するようなその姿にレインが苦笑いを零し、扉へと向かった。
「そんな風に睨まなくても、取ったりしないよ。別にレアには興味無いし……」
「言い方が酷くありませんか?」
「だって、こういう言い方しないとリウが不満持ちそうでしょ」
「今の私は機嫌が悪いから、そんな言い方をされたらそれはそれで不満を持つわ」
「面倒になってることは自覚してるようで何より。じゃあ、もう行くけど……その前に、レア。改めて、会議の時は嘘吐いてごめんね。あと、態度も悪くてごめん。凄く眠かったから」
「ああ、いえ……私も、あんな時間にごめんなさい。今後は、気を付けますね」
レアがそう言い、去っていくレインを見送った。
そしてくるりと振り返ると、拗ねた顔をしているリウを覗き込む。
「……リウ様。機嫌を直してください。……私じゃ、力不足かもしれませんけど……気分転換に、魔法の研究でもしますか?」
「……ううん。リティルが忙しくてこれないから、しばらくやれないの。この世界の魔法は既に研究し尽くしてしまったし」
「そう、ですか……じゃあ、えっと……もう少しお茶をして、気分が良くなるような……お話を……うーん。何を話せば……」
「リテアとのお話を……うぅ。……レアにまで当たりたくないもの……」
「……もしかして、元から機嫌が悪かったんですか? レインさんが来る前から……」
「……す、少しだけ」
リウが目を逸らしながらそう言うと、レアが目を丸くした。
ずっと機嫌が悪い状態でレアと接していたらしい。
全然気付かなかった、と言わんばかりにレアが数秒ほど目を丸くしたまま黙り込み、そして悔しそうにぎゅぎゅっと眉を寄せる。
「……気付けませんでした」
「え? ……あ、ああ、別にいいの。時々もやもやした気持ちが襲ってくるくらいで……いつもと違いはほとんどなかったでしょうから。気付いてくれなくても、悲しんだりしないわ。……むしろ、レインに当たってしまって……はぁ、不甲斐ないわ。この程度の感情、制御くらい簡単にできるはずなのに……」
「それでも、悔しいですっ。うー……! ……ご、ご要望は……リテアちゃんとのお話……リテアちゃんとの最近のお出かけで楽しかったこととかですよね?」
レアの確認にリウが頷くと、レアは少し考え込んでから話を始めた。
最初はリウの機嫌を気にしてぎこちなかったレアだが、次第に当時のことを思い出して笑顔で楽しそうに話し出す。
それを見たリウも釣られるように笑顔を浮かべ始め、やがてリウの機嫌は完全に直るのだった。
そして、レアの話が終わり、仕事に戻るため二人で片付けをしながら、リウが口を開く。
「ありがとう。気分が晴れたわ」
「どういたしまして。でも……どうしてそんなに不機嫌に?」
「あっ、それは……。……魔法の研究、凄く楽しかったのに……リティルが忙しくなってしまったせいで、中途半端なところでお預けになってしまったから、凄くショックで。……ごめんなさい、こんなことで……」
「いえ。……まぁ、そうですね。ディライト様にはまだ謝ってませんけど……一件落着、ということになるでしょうか。リウ様があんな顔をしていた理由をちゃんと知れて、よかったです」
「もう、レア! あんな顔って……いえ、本当にしていたのでしょうけれど……!」
恥ずかしそうに目を逸らすリウにレアがくすりと微笑み、楽しそうにしながら軽く頭を下げて詫びるのだった。
これにて『緊急会議! リウの恋煩い?』は終了です、ありがとうございました!
わちゃわちゃするお話と書いたのに全然わちゃわちゃさせられませんでしたが、書くのは楽しかったです。
次は思い付いてないのでまた学園の続きからになります。
どんなことさせようかな〜!




