緊急会議! リウの恋煩い?⑤
話が脱線してしまったので、気を取り直してリウが魔法研究について説明する。
「その、ね。前に、異世界に行ってリティルと知り合ったでしょう」
「はい。その世界の創世神様なんですよね?」
「ええ。だから、リティルにも手伝ってもらって、魔法の研究をしていたのよ。私にとっても、未知の異世界の魔法なら研究のしがいがあるわ。だから、知識なら私と同等か少し下くらいはあるレインに手伝ってもらって、ずーっと魔法の研究をしていたの! はあぁ……久々の未知。ふふっ、うふふふふふっ……あはっ」
「……またこの、恋する乙女みたいな顔。つまり、リウ様は魔法研究に焦がれて……むぅっ。紛らわしいですよ」
「うっ……は、恥ずかしいのだけれどっ。恋する乙女という表現はやめてほしいわ」
「そうとしか言いようがない顔なんです。鏡、見ますか?」
「み……見ない。嫌よ、そんな顔見たくない」
リウがそう言ってふるふると首を横に振り、息を吐いた。
そして、レアの手を取ると咳払いをしてから申し訳なさそうに微笑む。
「ごめんなさいね。夢中になるあまり、会議を開いてしまうくらいレアを心配させてしまうなんて……」
「……趣味の時間は、大切ですから。気にしないでください。ただ……夢中になってしまうかも、と思ったら、なるべく事前に言ってくださると嬉しいです。あんな顔急にし出したらびっくりします。……リウ様のことをあまり知らない方が見たら、誤解を街に振りまいてしまう可能性も……」
「うう……!? ……え、ええ。ええ……わかっているわ。大丈夫……気を付けるから。私の過去を知っているような配下たちには、基本的には一切表情を取り繕わないようにしているけれど……それ以外の前では、気を抜かないよう意識する必要はあるわね。演技とまでは行かずとも、咄嗟に表情を取り繕えるくらいには。……それ以外ならいいわよね……?」
「……ディーネ様辺りは、説明しないと誤解してしまうかもしれませんね。演技をすると怪しまれてそれはそれで面倒なことになるでしょうし」
「あっ……そうね、あの子は……なんというか……うん。……しっかりしているところはしっかりしているはずではあるけれど、微妙に安心できないわね……」
リウがそう言って苦笑いし、溜息を吐いた。
疲労を吐き出すようなそれに、レアは心配そうにリウを見上げる。
「ああ、ごめんなさい……また心配を……」
「このくらいで謝らなくていいんですよ。もしお疲れなら、一度休憩にしますか?」
「疲れている、というか……いえ、そうね。何にせよ一度休憩は入れた方がいいかしら。レア、カップを頂戴な。お茶を淹れるから」
「……私も淹れられますよ?」
「ふふ、自分でやりたいの。ダメ?」
「いえ……それならいいんです。では、カップを用意しますね」
レアがそう言い、てきぱきと用意を始めた。
それを横目に眺めつつ、リウは慣れた手付きで紅茶の用意をする。
それから空間からクッキーも取り出して味見をし、満足そうに頷いてお皿に並べた。
「……リウ様、ずるいです。味見という名目でクッキーを先に食べてしまうなんて……! リウ様が作ったものなんだから、味はわかっているでしょう?」
「随分昔に作ったものだし、今のものとは味が違っているかもと思って。確かに、レシピはほとんど変えていないのだけれど。ああ、もちろん空間内では時間は止まっているから、古くはなっていないわ。安心してね」
「……そこの心配はしてないです。……むぅ、正当な理由……」
「ふふっ。もっとも、昔に作ったものでろうと美味しい自信はあるのだけれど! ほら、レア。少し紅茶を蒸らす時間が必要だから、その間に一枚どうぞ」
リウがそう言ってクッキーを一枚差し出すと、目を輝かせたレアがそっとそれを受け取った。
そして、さくりと一口頬張って幸せそうに頬を緩める。
それを見て、リウはとても優しい微笑みを浮かべ、レアの頭を撫でた。
はにかみながらレアがそれを拒否しないでいると、ガタンと扉の方で物音がする。
「絵画……ッ」
「な、なに? レイン……? まだ帰っていなかったのね……?」
「メイリーに捕まってた。で、帰ろうと思ってたんだけど……なんか、僕がレアに嘘吐いたのがバレてる気がしたから」
「……な、なんですか、その勘。怖いです」
「リウが言ったのなら僕が隠す理由無いし、謝られちゃったし……謝り返しておこうと思って」
「そう……でも、どうしてレアが謝った時に白状しなかったの?」
「なんでレアが会議を開いたのか、ちゃんとわかってなさそうだったから。一応は秘密裏の研究だし、レアがそれについて伝えないとリウは言わないかなって」
「ふぅん……気持ち悪いわね」
直球で言うリウにレインが苦笑いを返した。
そして、リウに近付いていくと少し不満そうにジト目になり、腕を組んで言う。
「リウがこそこそ隠れてやってるから隠したんだよ? 気持ち悪いって言われるのは、まぁ、しょうがないけど……先にお礼くらい言ってくれてもいいんじゃない?」
「…………ありがとう」
「嫌そうな顔。別にいいけどね、可愛いから」
「いえね、ちゃんと感謝はしているのよ。しているのだけれど……それを伝えるのは癪なの。なんか見透かしてるみたいな態度で受け入れられるから……」
「何を思ってるのか、わかりやすすぎて手に取るようにわかるからね」
嫌そうにリウが顔を顰め、レインから目を逸らした。
 




