緊急会議! リウの恋煩い?③
翌日。
どうも何か隠していることがあるらしいディライトを問い詰めるため、レアは色んな人に聞き込みをしていた。
ディライトの行動を知る者はあまりいないだろうが、リウの行動なら誰かしらは見ているはずだ。
レアはリウが恋する乙女みたいな顔をしている件で会議を開き、ディライトを問い詰めようとしていたところを誤魔化して逃げていったのでディライトはリウが何をしているのか知っているのだろう。
つまり、リウが何をしているのかが判明すれば、ディライトが何を誤魔化していたのかもわかる。
――と、レアが再確認するようにそんなことを考えて、はたと動きを止めた。
「……あれっ? 理由と目的が入れ替わってる……?」
「逆によく今まで気付かなかったわね。ふふっ、半日くらいずっと頑張っていたのに」
「!?」
後ろからからかうような声を掛けられ、レアがバッと振り向いた。
そこにはにまにまとした笑顔を浮かべたリウが立っており、レアは頬を染めて俯く。
リウはそんなレアと目線を合わせるようにしゃがむと、優しくレアの頭を撫でた。
「ディライトから聞いたわ。私のことを心配して、深夜に会議まで開いたそうね」
「あうっ……えっと……」
「心配してくれるのは嬉しいわ。会議室も……まぁ、勝手に使ったのはいいでしょう。深夜のことだし、そもそも私の補佐官なのだし。まぁ、迷惑は掛けていないわね。他の配下たちには、ね」
「……」
「でも。まだ子どもなんだから、深夜まで起きていちゃダメでしょう? それに、あの三人のことも呼び出して……あの三人には、迷惑を掛けた。ちゃんとわかっているわよね? 謝った?」
「……あ、あの時は、とても焦っていて。その……まだ……」
「自分で謝れる? 天界に連れていきましょうか?」
優しい手付きで撫でながら尋ねてくるリウに、レアが照れながら一歩後ろに下がった。
そして、もじもじとしながらリウの手から逃れると、咳払いをして言う。
「あ、頭を撫でないでください。……私は、子どもじゃないので……それと、謝罪については……できれば、天界にはあまり……それ以外でも、天界の方々に謝れるでしょうか?」
「うーん……まぁ、ヴェルジアは、見ている時に呼べば来てくれるからいいとして。ディライトは……基本は来てくれるでしょうけれど、からかいたいと思われていたら来ないかもしれないわね。わざと。……それならどっちもどっちとして、焦らずに会った時に謝っておけばいいわ。どうせディライトは気にしていないわよ」
「そうですか……?」
「そうよ。それが嫌ならディライトは自分から来てくれるから、それを待っていればいい。それだけの話だわ。この話も聞いているのでしょうから、レアは待っていればいいの。……ね?」
リウがそう言って再びレアに近付き、ぽんとその頭を撫でた。
レアはそれに撫でないでと言ったのにと恨めしそうな目でリウを見て、その満足そうな表情に溜息を吐く。
「……レインさんには……仕事が終わったら、謝りに行きます」
「ええ。早めに切り上げて大丈夫よ、今日はそこまで忙しくないはずだから。レインも確か、そこまで忙しくないはずだから……普通に行っても会えるんじゃないかしら。ああ、レインのところまでは私が送っていくから、行き来に掛かる時間は気にしなくて大丈夫」
「えっ? でも、リウ様にご迷惑を……」
「気にしなくていいから。私を心配して会議を開いたんでしょう? 本当に、その気持ちは凄く嬉しいわ。……でも、私の何をそんなに心配していたの? ぼーっとしていたのがそんなに気になった? ……でも、どうしてあの三人を……?」
リウは会議を開いた理由について、レアがリウを心配してのこと、というところまでしか知らないらしく、不思議そうな顔をしながら首を傾げ、尋ねてきた。
レアはそれにビクッと肩を震わせると、目を逸らしながら後退り、距離を取る。
すぐにそのことに気付いたリウが唇を尖らせ、レアを抱き締めた。
「どうして逃げようとするの。そんなに言いづらいこと?」
「……はい」
「教えて頂戴な。……気になって……眠れなくなってしまうかも」
「リウ様、いつも私に睡眠は必要ないからー、とか言って仕事をやめないじゃないですか。眠れなくても支障なんて無いってことですよね」
「ううっ……で、でも、眠れないことと眠る必要が無いことは全くの別物よ! いつでも眠ることができるというのは、心理的に大切なの! 眠れないというのは、精神に悪影響を及ぼすの!」
「そうかもしれませんけど……」
「納得したなら、ほら! とりあえずっ……ヴェルジアに謝りましょう! 一番怒っていなくて、一番来てくれる可能性があるから!」
「わ、わかっていますから、あんまり押さないでください……凄く焦っていたから、恥ずかしいんです。心の準備が必要なんですっ」
「そんなに焦っていたの? ……なるべく早く、謝りなさいね。ほら、聞き込みをする必要ももう無いでしょう? 一緒に執務室に行きましょう」
リウがそう言って手を差し出すと、レアはこくりと頷いてその手を掴み、ともに執務室へと向かうのだった。




