緊急会議! リウの恋煩い?②
本気ではないものの、騒がしく喧嘩を始め、煽り合いをしているディライトとレインにレアが頬を膨らませる。
喧嘩そのものは、まぁいい。
二人とも全く本気ではないし、止めるほどの規模ではない。
しかし、二人は一つ、忘れていることがあるらしい。
「……こほんっ。こんな時間に呼び出した私も私ですが、お静かに。喧嘩は構いませんが、深夜なんですからその辺りには気を使ってください。リウ様が起きちゃったら仕事を始めちゃいますよ!」
「子竜ちゃんも緊急会議って叫んでたけどね〜」
「ねー」
「むっ……そ、それは…………焦ってたから……というか、そんな風に今すぐ仲良くそんなことが言えるのなら、騒がしく喧嘩をするのはやめてください!」
「はいはい、わかったわかった。それでー……なんだっけ?」
「誤魔化そうとしないでください。レインさんがリウ様の恋の話に食い付かないはずありません。何を知っているのか、洗いざらい吐いてください。リウ様が何をしているのか知っているんですか? それとも、その執念でリウ様の恋の相手を突き止めたんですか?」
「……えーっ、と……本当に、何かを知ってるわけじゃないんだけど」
レインがそう言って苦笑いし、改めてレアに向き直った。
へらへらとしていて、のらりくらりとレアの質問を躱しそうな雰囲気が消えたので、レアが嬉々としてレインの話に耳を傾ける。
「まぁ、レアも薄々わかってるとは思うけど……凄く紛らわしい表情をしてるだけで、恋をしてるわけじゃないね。絶対違う。リウはたまにそういうことあるから困るよね。わかるよ……」
「勝手に共感されましても。レインさんは、リウ様が何をしているのかも知っているのですか?」
「知らないよ? 恋じゃないならどうでもいいからね。楽しそうなリウを眺められるならそれでいい。……深く調べすぎて怒られたりするのは嫌だし、楽しく何も気にせずにやってたのに警戒でちゃんと楽しめなくなっちゃったりしたら申し訳ないし……」
「……むむ。らしい理由ですね……本当に知らない……?」
「知らないよ。それより、さっさと全員に周知させた方がいいんじゃない? 紛らわしい表情をしてるけど、別にリウは恋をしてるわけじゃないって。ついでにリウは一切そういうのに興味が無いこともしっかり周知して立場を弁えない馬鹿どもにそんな可能性はほんの僅かにもないと知らしめてや――」
「レインさんも同類ですよね? ……というより、代表格……」
「ぐひゅッ!? ……ぼ、僕は……じ、じか、自覚して想ってるから……大丈夫……全然、何も、思わないよ……!」
冷めた表情のレアに現実を突きつけられ、レインが崩れ落ちた。
震えた声で大丈夫と言い張っているが、声も格好も顔色も全く大丈夫ではない。
レインがなんだか面白いことになっているので、にやにやしながらディライトがその肩を突いた。
「レインくん、レインくん。もしかして〜、自分が一番不相応だって気付いてなかったの〜? ボクとヴェルくんは神で、まぁ色々と格の差はあるにせよ、同種の存在。でも〜……レインくんは? 半神って中途半端な存在で、立場もリウちゃんの奴隷。どこが相応しいのかな〜、この立場で相応しいって思えてたなんてレインくんは凄いねぇ〜」
「恋敵を蹴落とすためだからって、そこまで言う……!? 一応友達じゃないの!? ディライト!? 僕は友達だと思ってたのに、違うの!?」
「……羞恥とか無いんだね〜」
「あっ、良かった友達なんだね。ふぅ……気兼ねなく愚痴を言える相手がいなくなったら困るよ。びっくりした……」
「レインくん、友達のことただ愚痴を聞いてもらうだけの存在だと思ってる〜?」
「相談をする相手でもあるかな。まぁ、逆に言えばそれだけではあるけど」
「遊ぶって概念は無いんだね〜……」
少しばかりの仕返しを込めてのレインの友達は愚痴と相談のための存在という言葉にディライトが苦笑いした。
酷いことを言ったにも関わらず、大して言い返しもせずその程度で済ます辺り、丸くなったと言うべきか、それとも甘すぎると言うべきかとディライトが苦笑いを浮かべたままじっとレインを見る。
首を傾げて見つめてくるレインにディライトは息を吐き、レインから視線を逸らしてレアを見た。
「それで〜、子竜ちゃん。満足した〜?」
「……う、んん……ヴェルジア様は、本当に何も知らなそうですし……レインさんからは、らしい答えを聞けました。……でも、ディライト様からは何も聞いていません」
「……リウちゃんは誰にも恋とかしてないってわかったのに、まだ続けるの〜?」
「はい。何をしているのかは気になりますが、リウ様の邪魔はしたくないので……」
「ボクもちゃんとは知らないよ〜? リテアちゃんのお世話、ボクも関わってるから結構忙しいし〜……あ、詳細はまだ決まってないけど、リテアちゃんそろそろ勉強お休みになるからリウちゃんに相談しておいてね〜」
「リテアちゃんのお休み……! 遊べるんですね! えへへ、リテアちゃん……何をして遊びましょうか……って、ああっ!? いない!?」
「……逃げるのは悪手じゃないの、ディライト……」
レアはディライトに逃げられたことに小さく悲鳴を上げ、レインはディライトの悪手に呆れた顔をし、二人は同時に溜息を吐いた。




