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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
みんなで騒ぎましょう
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嵐の前の静けさ

シルフたちとも別れ、一人でパーティーを楽しんでいたリウ。

気付けば時間が経っていたようで、パーティーが終わる時間も迫ってきていた。

ぼんやりとリウが会場を眺めていると、後ろから声がかかる。


「午前ぶりだね、()()()()()


リウが勢いよく振り返った。

そこには、笑みを浮かべるレインが立っている。

ニコニコしたレインがリウに近付き、狂気が潜んだ瞳でリウを見た。


「あぁ……綺麗、凄く綺麗。肩、出してるんだね。珍しいなぁ……」

「……何の用? さっさと私の前から消えて」


うっとりとリウのことを眺めていたレインがその冷ややかな声で正気に戻り、にこりとお手本のような笑顔を浮かべた。

その完璧な作り笑顔は、初対面であれば誰もが騙されてしまうだろう。

しかし、今レインが作り笑顔を向けているのはリウである。

そんなものに騙される筈がない。


「作り笑顔とかどうでもいいから、さっさと用件言って消え失せろ」


レインを睨み付けながら低い声でリウが告げた。

楽しげにレインが笑い、口を開く。


「ふふ。あー、怖い怖い。さっきから子供には甘いから、ちょっとくらい油断してくれないかと思ったんだけど」

「私に手を出す、と?」

「いや別に。ちょっと試してみただけ。……で、手紙ちゃんと届いた?」

「……」

「あ、届いたみたいだね。よかった」


手紙と口にすれば露骨に嫌そうな顔になったリウを見てレインが小さく笑った。

分かりやすい、と。

作り笑顔を浮かべたまま瞳に狂気を宿し、リウに向かってレインが尋ねる。


「それで? 婚約とかの返答は?」

「……知ってて聞いてるんでしょう」

「じゃあ勝手に承諾したってことにするけど、それでもいいの? ちゃんと答え聞かないと分かんないなぁ」


わざとらしくレインが聞けば、リウは小さく舌打ちを零して答えを口にした。


「嫌に決まってるでしょう。これで満足?」

「一つ目の用件はね。じゃあ次、質問だよ。君は配下のこと大切?」

「大切に決まってるでしょう。なにが言いたいの? さっさとして」


リウの返答にレインは満足げな笑みを浮かべ、リウに背中を向けた。

訝しむリウを振り返り、微笑む。


「相手が敵でもなんだかんだ付き合ってくれる辺り、君って相当甘いよね。……まぁ、そういうところも全部含めて好きなんだけど」


笑顔で離れていくレインが少し気味が悪く、そっと大精霊たちに合流するリウであった。



大精霊たちに合流し、先ほどのことを愚痴るリウ。

話し終えた頃にはリウはシルフに頭を撫でられ、アースに抱き締められていた。

アースの頬がふにゃふにゃに緩んでいる気がするのは気のせいである。


『リウ様、大丈夫でしたか?』


心配そうにシルフが尋ねれば、リウは優しく微笑んだ。

そして、気味が悪かったから愚痴を言っただけだと笑う。


『リウ姉、ほんとに何もされなかった? 怖い思いしてない?』


アースが不安そうにリウを見上げれば、リウは微笑ましげな表情をして優しく栗色の髪を撫でた。

そして、なにもされなかったと答える。


『……しかし、妙ですね。独占欲の塊のようなあれがなにもして来ないとは』

「そうね。だから気味が悪かったのだけど……あぁ、その前になら不愉快なことがあったわね」

『あのクズがリウ姉になにをしたのっ!?』

「アース、落ち着いて。前にね、手紙が送られてきたのよ。結婚しようだとか、ハードルを下げて付き合おうとか、婚約を皇帝がさせてくれないだとか、嫌がっても祭りに行くとか……あと、午前にも会ったのよね。午前もなにもしてこなかったから、この夜会でなにかするのかと思って警戒していたのだけど……」


なにもされなかったわね、と言葉を締め括るリウ。

前までは、出会ったら必ずなにかしら手を出されたのだ。

戦って怪我をしたり、誘拐されてしまったりと。

まぁ、リウは怪我をしてもすぐに治るし、誘拐されても〝瞬間転移〟があるので抜け出すのは簡単なのだが。


『……こういうの、なんて言うんだっけ』


今まで黙って話を聞いていたディーネが呟いた。

リウが不思議そうに首を傾げ、それを見てディーネの隣に居たルリアが数秒の思考を挟みもしかしてと呟きディーネに尋ねる。


「嵐の前の静けさ?」

『そう、それ! それが言いたかったの! 流石ルリちゃん!』

「こういうの秘書ちゃんが詳しくて、聞いてる内に覚えちゃった」


そう言ってルリアが肩を竦めた。

嵐の前の静けさ。

確かに、レインは三年後にだとか言っているし、そうかもしれないと納得するリウ。

となれば少なくとも三年間は大した接触は無いとみてもいいだろう。

警戒する必要は充分あるが、過度な警戒も必要無いとリウは判断した。


「ありがとう、ディーネ、ルリア。とりあえず三年間は過度な警戒は必要無さそうで安心したわ」


そう言って微笑み、リウが二人の頭を撫でた。

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