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魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
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ifストーリー 楽しい学園生活⑦

 リウは不満げに、リアはなんとも言えない顔で、そしてレインとレイシェは嬉しそうに、姉妹、兄妹で手を繋いで歩く。

 リウからすると、レイシェと手を繋いでいるだけ確かにマシではあるのだが、それでもレインと一緒に帰りたくはないのでとても不満を感じていた。


「お姉さま、お姉さま」

「ん……なぁに、リア。どうしたの?」

「ふふ……一緒に逃げますか? レイシェを置いていくのは心苦しいですけど……きっと理解してくれます。あっ、私が時間稼ぎをしてもいいですよ」

「ええと……気持ちは、ありがたいけれど……横目で見られているから、たぶんバレているわ。逃がしてくれないかも。……地獄耳」


 ひそひそと話をしているのにあっさりとバレていたようなので、リウがぼそりと呟いた。

 それを受けて、レインはニコニコと笑顔を浮かべるとリウをガン見し始める。

 リアがリウを庇うように前に立った。


「り、リア、庇わなくていいから……その、レイン。ごめんなさい……嫌だった……? いえ、陰口紛いに言ったんだし、嫌よね。ごめんなさい……」

「……しおらしいリウが凄く可愛いからもうどうでもいいや……別に最初からそんなに怒ってないし。ふふっ、ほら、庇うのはいいけど立ち止まってないで行こう」

「むぅ……お姉さまに酷いことをしたら許しませんから……って、あれ……?」


 ぽつ、と腕に落ちた水滴を見て、リアが空を見た。

 雨雲で空が覆われており、リアが慌てながら周囲を見る。


「どうしましょう、お姉さま! 晴れの予報だったのに雨が……」

「折りたたみ傘は?」

「あっ、その……ええと。……雨が降っていたら、車を呼べばいいかなと、思って……」

「もう、リアったら……もう少し寄って。私の傘に入りなさい。二人は?」


 リウがリアの手を握り、自分の方に引き寄せながら尋ねるとレイシェが申し訳無さそうに目を逸らした。

 レインも傘を取り出すような素振りもないことからなんとなく察しつつ、リウがレイシェへと視線を向ける。


「ご、ごめんなさい、リウ。わたくしも持っていなくて……お兄様も……」

「入る……には、狭いわね。はみ出ちゃう……仕方ないから、急いで雨宿りできる場所を探しましょう。帰るのは遅れそうね……」

「とりあえず車手配したから、家まで送っていくよ」

「……えっ? で、でも、二人が先に帰るなら、私とリアは一緒の傘に入っても濡れない……」

「置いて帰れるわけないでしょ。二人も四人も変わらないし、どうせリウの家の前も通る」

「……? でも、その道は最短距離じゃないはずよね……? 私、確認したことあるもの。騙されないわ」

「別に変わるの一分か二分くらいだけどね……」


 騙されないと言って胸を張るリウにレインがそんなことを呟きつつ、一度目を逸らした。

 そして、雨宿りできる場所を見つけてそちらへ全員を誘導しつつ、少し困ったように眉尻を下げる。


「普段通らない道なら、運転手さんにも迷惑をかけてしまうでしょう。別に遠いわけではないし、二人で歩いて帰るわよ。ね? リア」

「はい、私は構いません」

「あー……普段から通ってるから……いやまぁ、そんな頻繁に車なんか使わないんだけど」

「……それ、って……?」

「雨の日は車で行くからね。僕はいいって言ってるんだけど……まぁ、とにかく。リウたちも車で行くでしょ?」

「そうね。お父様が身体濡らしちゃダメって言うから……雨の日もちゃんと歩いて登校してみたいのに……」

「一緒に学校には行けないから……リウの家の前を通って行ってる。いつも、雨の日は」

「……なんで? あ、雨宿りできる場所……ありがとう。それで、なんで?」

「どういたしまして。察して」


 レインが真顔で言い、遠い目をし始めた。

 察してと言われても、と困り顔で微笑むリウを横目に、レインは言いたくなさそうに目を逸らす。

 それを見たレイシェは少し迷いながらも、レインを見ながら言った。


「お兄様は、幼い頃……リウに恋をしてからずーっとそうしていますの。ですから……習慣化しているらしく……今ではやらないと一日中落ち着かないのですわ」

「そ、そう……ええと、じゃあ……そんなことをしようと思った切っ掛けは……?」

「……リウが先に到着するのか、それとも待つことになるのか、確認しようと思って……昔のリウは今ほど僕に対しての態度が刺々しくは無かったから、学校で出迎えるとびっくりしながら笑うリウが凄く可愛くて……あと、リウが先に到着することがわかっても、学校に行ったらリウが居るってわかってるから移動中ドキドキして心臓が張り裂けそうで学校が凄く楽しみになって――」

「んんっ、お兄様。それ以上は」

「リウ! 結婚しよう!!」

「いや」

「……お兄様。車が来ていますわ」


 少し言いづらそうにレイシェが言うと、レインが固まってギギギッと正面、道路の方を見た。

 生温い視線が運転席、そして助手席からレインに注がれていて、レインは手で顔を覆う。


「……僕だけ歩いて帰るよ」

「ダメです、坊ちゃま」

「その呼び方はやめて。解雇するよ」

「その権限はお父上にしかありませんよ、レイン様」

「…………癒やされたいから、リウの隣がいい……」

「私は嫌。レイシェに癒やしてもらえばいいでしょう。……こほんっ。お手数掛けいたしますが、よろしくお願いします。ほらレイン、しゃがみ込んでないで早く乗って。子どもじゃないんだから」

「リウぅ……」

「この状態の方が恥ずかしいでしょうに……もう、わかったわよ。レイシェさえ良ければ……レイシェを間に挟んで手を繋いでいてあげるから」

「わたくしは構いませんわ」


 レイシェの承諾も得られたので、リウは家に到着するまでレイシェを間に挟んでレインと手を繋ぎ、無事にリアとともに帰宅するのだった。

 なお、レインはリウが車から下りようとすると強く手を握り締めて駄々を捏ねたりと醜態を重ね、レイシェに叱られたりするのだが、それはまた別のお話。

 駄々捏ねパートやると長くなるので省略。

 この世界観でのレインをどれくらい病ませるべきか、どれくらい悪いことさせるか悩む……。


 また次回から別のお話開始します。

 いろんな人達がわちゃわちゃするお話になる、かな?

 お楽しみに。

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