ifストーリー 楽しい学園生活⑥
学校が終わり、リウがゆっくりと校門へ向かう。
今日はリアと下校時間が被るから、待っていれば一緒に帰れるだろうかとリウが中等部の校舎を見る。
「荷物持とうか?」
「ひゃあっ!? ……あっ……れ、レイン。な、何、急に……」
「いやほら……今日は少し持ち帰るものが多いから、重くないかなって。あと考え込んでたせいかちょっとふらふらしてたし」
「……重くない、……わけでは、ない、けれど……気にしないで。そしてさっさと一人で帰りなさい」
「僕がその言葉を受け入れると思ってる?」
レインが笑顔で尋ねると、リウが頬を膨らませながら目を逸らした。
どれだけ言っても、人気の無いところで殴ってから逃走してみても、笑顔で追いかけてくるのでリウは半ば諦めているのである。
「にしても、今日は強めに離れさせようとするんだね。いつもは僕が近付いてきた時点で諦めモードに入ってるのに……ああ、もしかして妹と帰るの? だから僕が邪魔?」
「ええ。わかったなら離れて頂戴な」
「じゃあどうせレイシェもいるだろうし、僕も一緒に帰ろうかな。四人ならいいでしょ」
「……むぅ。仕方ないから……レイシェがそうしたいって言ってくれたなら、受け入れてあげる……」
リウが嫌そうにそう言って、校門の近くでリアを待ち始めた。
中等部の校舎が見える位置でそわそわとリアを待つその姿に、レインが緩んだ笑顔を浮かべる。
ただ、ずっと顔を注視しているとバレてしまうので、レインがリウの服装を眺め始めた。
真面目に制服を着こなしているその姿に、レインはやっぱり緩んだ笑顔を浮かべる。
「な、何っ……? あんまり見つめられると怖いのだけれど」
「あ、ごめん。真面目なリウが凄く可愛くて……」
「……あなたは一体、何を言っているの……? 真面目と言われるような行動なんて、今はしていないでしょう」
「僕が言ってるのは行動じゃないけど。まぁ行動も可愛いけどね、シスコンで」
「……帰る場所が同じなのに、一緒に行かない理由なんて無いでしょう?」
「じゃあ僕も一緒に行かない理由は無いね。好きだし、心配だし、道もほとんど一緒」
「……もっと近い家があるくせに、わざと私の家の近くに住んでいるんでしょう。全く……」
リウがそう言って溜息を吐き、ちらりとリアが来ていないか確認する。
すると、リウの表情がぱあっと明るくなり、校門の内側へと駆けていった。
レインもリア、そしてリアと一緒に歩いてくるレイシェの姿を捉え、柔らかく微笑む。
「リア! リア、今日は一緒に帰れるわよね! ヴェルジアとの約束も無いのでしょう!?」
「わっ!? お、お姉さま……もう、走ったら危ないですよ。今日は一緒に帰れますから、少し落ち着いてください」
「やったっ。ふふ、リア、リア……可愛いリア。一緒に帰りましょうねっ!」
「もう、リウったら! わたくしもおりますのよ! はしゃぐのもリアに抱きつくのも構いませんけれど、わたくしの存在を無視して行こうとするのはやめてくださいまし!」
「あ、ご、ごめんなさい……そんなつもりじゃなかったの。リアを見たら、つい嬉しくなってしまって……」
「もう……まぁ、いいですわ。お二人の深い姉妹愛のことはよく知っておりますもの。それで、お兄様は……」
レイシェがそう言いながら周囲を見回すと、レインが近付いてきた。
するとリアは警戒心を見せ、リウを庇うように前に出る。
妹に庇われて恥ずかしそうなリウが可愛かったので、レインが満面の笑みを浮かべた。
「なんなんですか! 邪魔をされて喜ぶなんて……!」
「今は一緒に帰ることが目的だから。レイシェ、リウやリアと一緒に帰りたいんじゃない?」
「えっ? まぁ、はい、そうですけれど……あ!? いえ、いえいえいえ! そんなことよりも――」
「よしっ、四人で帰ろう! ね!」
「お兄様!」
「レイシェがそうしたいって言ったら受け入れてくれるんだもんね? リウは嘘は吐かないよね? いやぁ嬉しいなぁ! 凄く嬉しい! 嬉しい嬉しい嬉しい!」
「こ、このっ……」
「強引ですわ……! リウ、リア、こうなったらお兄様を置いて逃げますわよ!」
レイシェがそう言ってリウとリアの手を掴んで走り始めた。
リウとリアもちゃんと走り始めると、レイシェは危ないのでそっと手を離し、後ろを見る。
するとそこにはレインがいなかったので、レイシェが首を傾げた。
「あら……? もう逃げ切ったんですの?」
「良かったね!」
「……きゃっ!? お、おお、お兄様!? どうやって目の前に……」
そして、また前に視線を戻すと笑顔のレインが立っていたので、レイシェが軽く飛び上がって悲鳴を上げる。
動揺しながらもレイシェがどうやって前に来たのか尋ねれば、レインはとても楽しそうに答えた。
「死角に隠れて、振り向いた隙に回り込んだ。まぁ、リウは目で追ってたけど……軽くフェイント入れたら騙されたね。びっくりしてて可愛い」
「……可愛いってそう何度も言わないで……」
「照れるから? 可愛い……にしても酷いよレイシェ、急に走り出すなんて……急に手を掴んで走るのは危ないから、例え短時間でもやめようね?」
「は……はい、ですわ……お兄様……もうしません……」
「ならよし。さ、行こうか」
レインがそう言ってレイシェと手を繋ぎ、堂々と一緒に歩き始めた。




