表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王様の隠し事  作者: 木に生る猫
番外編
1017/1102

ifストーリー 楽しい学園生活⑥

 学校が終わり、リウがゆっくりと校門へ向かう。

 今日はリアと下校時間が被るから、待っていれば一緒に帰れるだろうかとリウが中等部の校舎を見る。


「荷物持とうか?」

「ひゃあっ!? ……あっ……れ、レイン。な、何、急に……」

「いやほら……今日は少し持ち帰るものが多いから、重くないかなって。あと考え込んでたせいかちょっとふらふらしてたし」

「……重くない、……わけでは、ない、けれど……気にしないで。そしてさっさと一人で帰りなさい」

「僕がその言葉を受け入れると思ってる?」


 レインが笑顔で尋ねると、リウが頬を膨らませながら目を逸らした。

 どれだけ言っても、人気の無いところで殴ってから逃走してみても、笑顔で追いかけてくるのでリウは半ば諦めているのである。


「にしても、今日は強めに離れさせようとするんだね。いつもは僕が近付いてきた時点で諦めモードに入ってるのに……ああ、もしかして妹と帰るの? だから僕が邪魔?」

「ええ。わかったなら離れて頂戴な」

「じゃあどうせレイシェもいるだろうし、僕も一緒に帰ろうかな。四人ならいいでしょ」

「……むぅ。仕方ないから……レイシェがそうしたいって言ってくれたなら、受け入れてあげる……」


 リウが嫌そうにそう言って、校門の近くでリアを待ち始めた。

 中等部の校舎が見える位置でそわそわとリアを待つその姿に、レインが緩んだ笑顔を浮かべる。

 ただ、ずっと顔を注視しているとバレてしまうので、レインがリウの服装を眺め始めた。

 真面目に制服を着こなしているその姿に、レインはやっぱり緩んだ笑顔を浮かべる。


「な、何っ……? あんまり見つめられると怖いのだけれど」

「あ、ごめん。真面目なリウが凄く可愛くて……」

「……あなたは一体、何を言っているの……? 真面目と言われるような行動なんて、今はしていないでしょう」

「僕が言ってるのは行動じゃないけど。まぁ行動も可愛いけどね、シスコンで」

「……帰る場所が同じなのに、一緒に行かない理由なんて無いでしょう?」

「じゃあ僕も一緒に行かない理由は無いね。好きだし、心配だし、道もほとんど一緒」

「……もっと近い家があるくせに、わざと私の家の近くに住んでいるんでしょう。全く……」


 リウがそう言って溜息を吐き、ちらりとリアが来ていないか確認する。

 すると、リウの表情がぱあっと明るくなり、校門の内側へと駆けていった。

 レインもリア、そしてリアと一緒に歩いてくるレイシェの姿を捉え、柔らかく微笑む。


「リア! リア、今日は一緒に帰れるわよね! ヴェルジアとの約束も無いのでしょう!?」

「わっ!? お、お姉さま……もう、走ったら危ないですよ。今日は一緒に帰れますから、少し落ち着いてください」

「やったっ。ふふ、リア、リア……可愛いリア。一緒に帰りましょうねっ!」

「もう、リウったら! わたくしもおりますのよ! はしゃぐのもリアに抱きつくのも構いませんけれど、わたくしの存在を無視して行こうとするのはやめてくださいまし!」

「あ、ご、ごめんなさい……そんなつもりじゃなかったの。リアを見たら、つい嬉しくなってしまって……」

「もう……まぁ、いいですわ。お二人の深い姉妹愛のことはよく知っておりますもの。それで、お兄様は……」


 レイシェがそう言いながら周囲を見回すと、レインが近付いてきた。

 するとリアは警戒心を見せ、リウを庇うように前に出る。

 妹に庇われて恥ずかしそうなリウが可愛かったので、レインが満面の笑みを浮かべた。


「なんなんですか! 邪魔をされて喜ぶなんて……!」

「今は一緒に帰ることが目的だから。レイシェ、リウやリアと一緒に帰りたいんじゃない?」

「えっ? まぁ、はい、そうですけれど……あ!? いえ、いえいえいえ! そんなことよりも――」

「よしっ、四人で帰ろう! ね!」

「お兄様!」

「レイシェがそうしたいって言ったら受け入れてくれるんだもんね? リウは嘘は吐かないよね? いやぁ嬉しいなぁ! 凄く嬉しい! 嬉しい嬉しい嬉しい!」

「こ、このっ……」

「強引ですわ……! リウ、リア、こうなったらお兄様を置いて逃げますわよ!」


 レイシェがそう言ってリウとリアの手を掴んで走り始めた。

 リウとリアもちゃんと走り始めると、レイシェは危ないのでそっと手を離し、後ろを見る。

 するとそこにはレインがいなかったので、レイシェが首を傾げた。


「あら……? もう逃げ切ったんですの?」

「良かったね!」

「……きゃっ!? お、おお、お兄様!? どうやって目の前に……」


 そして、また前に視線を戻すと笑顔のレインが立っていたので、レイシェが軽く飛び上がって悲鳴を上げる。

 動揺しながらもレイシェがどうやって前に来たのか尋ねれば、レインはとても楽しそうに答えた。


「死角に隠れて、振り向いた隙に回り込んだ。まぁ、リウは目で追ってたけど……軽くフェイント入れたら騙されたね。びっくりしてて可愛い」

「……可愛いってそう何度も言わないで……」

「照れるから? 可愛い……にしても酷いよレイシェ、急に走り出すなんて……急に手を掴んで走るのは危ないから、例え短時間でもやめようね?」

「は……はい、ですわ……お兄様……もうしません……」

「ならよし。さ、行こうか」


 レインがそう言ってレイシェと手を繋ぎ、堂々と一緒に歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ